「待機児童ゼロ」「育児休業を1年から3年に延長」を支援していくことを4月
19日公表しています。
(義務化ではなく、制度導入する企業への助成支援の形になるようですが)
育児休業取得可能期間については、既に法律を超えた育児休業期間を設
けている大企業もあるかと思いますが、対象者全員が必ずしもその長期化
を望んでいるかといえばそうではないような気がします。
例えば、ニッセイ基礎研究所「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査
(平成20年)」を見ると子を持つ母親の望ましい働き方として、“子が1歳ま
では育児休業”の支持率が高く、“子が小学校就学前までは、短時間勤務、
残業のない働き方”が上位2位となっています。
経済的理由から早く復職せざるを得ないという方もいらっしゃいますし、早く
復職したいが託児所の空きがないため、やむを得ず休業継続している方も
いらっしゃると思いますので、「望ましい」というより「現実を踏まえた働き方
を考えると--」といった要素がデータに反映している可能性もあるかとは思
います。
職場の身近な育児休業経験者の意見を聞いても、個人によりその考え方
は大きく異なる部分があるようです。
しかしながら、間違いなく法的な育児休業可能期間が長期化すればすれば
するほど、実際の職場復帰までの期間も延びてきますし(“まずは最大限で
申請しておこう!”)、長くなればなるほど、浦島太郎化し職場復職後の業
務アジャストにも時間がかかるようになるのが現実です。
(休業期間が長くなると、休業期間中に第二子誕生というケースもあり、育
児休業の連続のような状況も増えてくるかと思います)
安倍首相が指摘されている“子育てに専念するのも貴重な経験”“3年間
抱っこし放題での職場復帰”という観点ももちろんありますが、仕事を行う
上での能力・モチベーション維持という観点では、出来る限り仕事の空白
期間を空けずに早期復職した方がスムーズなソフトランディングが可能な
ことは間違いないようです。
やはり、本人選択肢を拡充しつつ、支援の方向性としては、いかに
早く職場へ復職してもらい、戦力として復帰してもらうかに力を入れる
べきだと考えます。
そのためのネックが託児施設問題ですが、今回の成長戦略では、託児所
問題も土俵に乗っていますので、「育児休業期間の延長」という片輪だけ
でなく、「早期復職のための条件整備」もあわせて検討されている点が評
価できるところです。
大企業では、企業内託児所を持つ企業も増えてきていますが、企業内に
託児施設をつくっても遠距離の自宅から会社までの通勤ラッシュ中移動
のハードさもあり、思ったほど希望者がいないという話を聞いたこともあり
ます。
やはり、通勤ルート上の自宅最寄り駅が託児施設の立地としてはベスト
であり、JRをはじめ鉄道各社もその設置に力を入れているようですが、
まだまだその設置は遅々としており、希望者ニーズには対応しきれていま
せん((地下街などの足もみマッサージなどの店舗増加ぶりは驚きですが)
また、絶対数の不足解消に加え、託児所費用負担の低減も喫緊の課題
です。
”早く復職したいのは山々だが託児所負担が高くて無理。結局早めの復職
が可能なのは、高い託児費用を負担できる層だけ”というのでは本質的な
解決にはなりませんので、設置基準見直し等による運営コストの低減を図
る必要があるかと思います(言うは安し行うは難しですが)
根拠のない思いつきで恐縮ですが、(保育関係の資格は所持していないが)
豊富な育児経験を持つシニア層の力を活用するような仕組みづくりなど、何
か出来ないものでしょうか?
このあたりの規制緩和もポイントのような気がします。
また、未婚男女比率の割合が高くなっている現在においては、今後育児休
業者の不在期間を支える職場同僚との社会的負担のバランスなど(グ
ループ間の社会的納得性)の検討も必要になってくるような気がします
(私見です)
以上、育児休業の問題だけを見ても様々な要素が表出してきます。
先日、日本的経営について回帰の必要性のようなことを書きましたが、育
児の問題も社会的機能の喪失をいかに補填していくかという社会デザイン
の問題であり、雇用・福祉など全体の枠組みの中で考えていく必要がある
かと思います。
やはり、場当たりではなく、総合的なビジョンに基づいた制度設計が今ほど
求められる時期はなく、安倍首相のリーダーシップに期待するところです。

にほんブログ村

FC2 Blog Ranking