『在宅勤務』」という働き方に関する一考察(障害者特例子会社の事例を聞いての雑感) | ものづくり企業の人事総務をワンストップで専門サポートするインディペンデント・コントラクター(IC独立業務請負人)が日頃思うこと

ものづくり企業の人事総務をワンストップで専門サポートするインディペンデント・コントラクター(IC独立業務請負人)が日頃思うこと

大手自動車会社での30年の人事総務経験を経て,2014年にIC・行政書士として独立しました。グローバル化進展の中、業務のアウトソーシング化など荒波にさらされつつある人事総務部ですが、企業活動を支える総務系業務の重要性・専門性など日頃思うところを語ります

以前、労働局主催の障害者雇用セミナーにて、在宅勤務システムを活用し、障害者
雇用を進めている会社の事例発表を聞いたことがあります。

沖電機の子会社である「OKIワークウェル」という沖電機の特例子会社で、HP作成や
ポスターデザインの業務を行う会社です。

当日は、在宅勤務システムのデモもあったのですが、沖電気が開発した「ワークウ
ェルコミュニケーター」という在宅勤務システムを活用し、高度なIT技術を持つ重度障
害者の方々が在宅勤務で業務を進めていました。

具体的勤務システムですが、まず勤務開始とともに社員(全国各地ご自宅が職場にな
ります)がPCを立上げ、出社タイムカードがわりとなる挨拶メールを全員に送ります。

就業時間中はそのシステムをずっと立上げていますので、いつでもコミュニケーション
が可能な状態になっています。

コーディネーター(上司的な役割)、本社社員、在宅社員間のコミュニケーション随時
可能で、必要に応じて会議室へ移り、限られたメンバーで会議も可能です。

終業の際には、また全員に終了メールを送り、勤務終了です。 常時接続されている
ため、デモを見た印象は、実際にオフィスにいる感じで、また年2回は社員全員が集
まる懇親会も設定されていますので、社員間の一体感も十分醸成されている印象を
受けました。

この事例を見て感じたことは、”在宅勤務はやろうと思えば実は出来る時代なんだな”
ということです。

隣に坐っている人に対してもメールで返事をすることが実際笑い話でなく、現実にな
りつつある今の職場であれば、通勤の必要がない、こうしたシステムを使った在宅勤
務の方が、下手に人間関係で余計な気をつかいながら仕事をするより、よっぽど生産
性もメンタル面での健康度も上がるかもしれません。

クラウドも発達し、どこでも情報アクセスが可能であり、周辺条件整備は整っています。

在宅勤務導入というと、情報セキュリティ上の問題やFACE TO FACEでの対人業務
遂行の必要性などが必ず解決すべき課題として話題になります。

しかしながら、実際のところ、PCを持ち出したり、家にデータを送って仕事をすることに
よるリスクや職場でのパワハラ・メンタルが発生するリスクと在宅勤務リスクを考える
と、毎日満員電車に揺られて本当にどこまでFACE TO FACEで行う必要があるのか疑
問です。

突き詰めて考えると意外に満員列車で毎日出社する必要性は実はないかもしれません。

先日育児休業の期間延長について書きましたが、、育児休業期間中などは、この在宅
勤務が一番なじむ勤務だと思います。

また、雇用義務化の方針が決まっている精神障害者雇用などについても、勤務形態の
一つとして有効性は高いと思います(企業サイドには、勤務中のフルサポートは必要な
のでは?と不安視する声もありますので)

当方は、”飲み会の翌日は、這ってでも朝は時間通りに会社に出て来い!” ”ストのと
きは、不合理な迂回路を使ってでも出社せよ”という時代に育ってきましたので、毎日出
社することは、当たり前であり、それが仕事だという思い込みが染み付いています
(ここにノスタルジー?を感じているのかもしれません)

”顔をあわせて仕事帰りの「ノミニケーション」(今となっては少々恥ずかしい表現ですが)
が業務の潤滑油”という意見もあるかもしれませんが、例えば基本在宅で月1回出社な
どのケースには、その月1回の出社時の飲み会で十分その機能は果たせるかもしれま
せん。
(久しぶりの飲み会ですのでかえって濃密なコミュニケーションが出来るかもしれません)

環境は整いつつあるのに、まだまだ在宅勤務が限定されているのは、

”何のために導入するのか”

会社として明確なポリシーを持てないでいるため、その働き方に対する労働条件等に
設定が出来ていないことにあるのではないでしょうか?

成果主義を原則とした人事制度導入は、既に当たり前になっていますが、成果が在宅
勤務で出るのであれば、実際に出勤して勤務する場合と在宅勤務で、例えば賃金差
をつけることは理屈に合わなくなります。

サラリーマンの給与の何分の一かは、”上司を初めとする職場の人間関係などの我慢
分”といわれることもありますが、成果主義を評価の全面に出している以上そのような
心情的な理屈は入り込む余地はありません。

在宅勤務の方もいれば、遠くから通勤する社員も混在するという状態(特に選択が可能
などとなると収拾がつかなくなります)になるとその職務設定や労働条件設定は、かなり
難しいだろうなと思います。

”会社に出てこないで同じ給料か!”といった意見や”なぜあの仕事(人)だけは在宅OK
なのか” etc

それゆえ、現在在宅勤務は、育児休業中など実際に通勤が不可能(通勤することが合
理性に欠ける)場合に限定的に運用されているんだと思います
(先の「OKIワークウェル」さんが成功しているのは、原則全員在宅勤務を基本にしている
ことが大きな要因だと思います)

最近ノマドといわれるフリーの働き方が注目されていますが、実は企業の腹のくくり次第
では、ノマド的な勤務形態の制度実現は可能だと思います。

鳥インフルエンザパンデミックスリスクなどの際に、事業継続計画(BCP)とからめていつ
も在宅勤務は話題にあがってきますが、これからの働き方の一つとして、常態としての在
宅勤務も大きな焦点になるのではないでしょうか。

こうした動きに対応するために重要なことは、繰り返しになりますが、
”何のために在宅勤務を行うのか”
この部分に関する会社としての明確なポリシーが在宅勤務制度導入の最大のポイントだ
と思います

また、出社しなくても仕事が出来る・成果が上がるということは、見方を変えれば(コミュニ
ケーションさえ問題なければ)日本でなくてもその業務対応は可能ということになります。

その意味では、我々サラリーマンとしては、こうした時代だからこそ、人間関係力というか
人と人との対面でしか成果が出ないような(ベーシックではありますが、最も身につ
けることが難しい)高度なスキルを意識的に獲得・蓄積していく必要がある
かと思い
ます。

「全員在宅、月1回出社」という会社がどんどん出てくると面白ですね。

通勤費削減、会社事務所スペース費用削減、従業員側もストレス無しなど意外にWIN-WIN
の働き方が実現するかもしれません!
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