を読んでみました。
「40歳定年制」は、2012年「国家戦略会議フロンティア分科会」の中の「繁栄
のフロンティア部会報告書」の中で取り上げられたコンセプトです。
ややこしいのですが、この「国家戦略会議」は、野田内閣時代に、自民党時代の
「経済財政諮問会議」より幅広い範囲を対象に中長期の国家ビジョンを検討する
会議体という位置づけで、古川元久国家戦略担当大臣が仕切り役を務め運営さ
れた会議体です。
この会議体は、安倍内閣発足とともに廃止となり、その役割は、民主党政権時
代には休会状態だった「経済財政諮問会議」と前回記事でご紹介させて頂いた
「産業競争力会議」に実質的に引き継がれているといっていいかと思います。
この「40歳定年制」ですが、そのネーミングゆえに公表された時には、「40歳で
強制的に退職するように政府が決める制度」という捉え方をされた部分もあり、
マスコミでも大きく取り上げられました。
著者の柳川教授は、この分科会で部会長をつとめた方です。
「40歳定年制」を本書から紹介すると
『”「40歳定年制」とは、40歳前後で失業したり転職することになっても、
元気に75歳あるいは80歳まで働えるようにする仕組みだ。そのために
必要なのは、環境変化に合わせて、必要な能力や知識を身につけられる
ようにすること。そして多様な働き方ができるようにすることだ。
そこで”60歳までの無期雇用”という形式上の「定年」の考え方を見直し、
無期雇用は ”20年ほどの中期雇用”を原則としようとする制度だ』
(同書、P24)
詳細は、同書あるいはフロンティア分科会報告書を読んで頂ければと思いますが、
このコンセプトを支えるポイントの一つとして、スキルアップの機会「40歳スキル再
構築制」が想定されています。
今後も重要なコンセプトとして、先日の「産業競争力会議」で提起された解雇規制
自由化論議などとともに近いうちに中期課題として活発に論議されることは間違い
ないと思います。
大きな問題だけに様々な意見があり、すぐに決着がつくような問題ではないですが、
6月安部内閣で発表される「成長戦略」の中にも何らかの”働き方”に関する検討の
方向性は示されるものと思います。
本書の指摘を待つまでもなく、従来想定されていた一社長期就労スタイルは、完全
に終焉しているのが現実ですが、現状サラリーマン自身が自らの人生について
一度立ち止まって意識的に見直しを図る機会は皆無といっていいのが現状です。
我々サラリーマンサイドとしては、
①日々の業務に追われ振り返りの機会が持てないこと
会社サイドとしては
①現状の社内研修は、定年を前提とした”逃げ切り組”に対する「余暇・健康・
経済」といったソフトランディング研修に留まっていること
②ある年齢までは ”滅私奉公”を本音としては期待しており、”寝た子を起こ
す”ような意識づけを行うような研修を行うモチベーションが働かないこと
がその理由として挙げられるかと思います。
いずれにしても、こうした雇用に関する見直しに左右されることなく、個人個人が自ら
「40歳定年制」を設定し、計画的な経験獲得、スキルアップ計画を作成していくこと
が重要だと思います。
この本ですが、制度実現のための本として読むより、自らの意識づけのための本とし
て読むことが有効だと思います。
「40歳定年制」 当方は、そのコンセプトに同感です。
現状の日本の雇用問題を把握するための書籍、あるいは働き方に関する自己啓発
本としても良書であり、おすすめです!

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