書類送検する方針という記事を見ました。
新聞報道によると違反容疑は
①定期健康診断の結果を基準監督署に報告していない
②法定の衛生管理者や産業医等を置いていない
③衛生委員会を設置、開催していない
等です。
上記内容は、労働安全衛生法の基本中の基本であり、この管理状態であれ
ば化学物質管理のずさんさも容易に類推されるところではありますが、化学物
質の危険性認識に関しては、なかなか難しい問題があるようです。
当方事務屋であり、化学物質についてはまったく素人なのですが、まずは3月
14日に厚生労働省が発表している報告書を読んでみました。
ざっくり素人解釈すると
①胆管がんと使用されていた化学物質の因果関係
⇒医学的にも長期間、高濃度のばく露による発症のリスクあり
②職場環境と今回の発症の因果関係について
⇒周辺状況から見ると限りなくクロ
③今回の事例を受けての対応
⇒・ジクロロプロパンについては、早急に特化則の対象として法改正
それまでの間も法改正をまたずに使用を控えるように指導
・ジクロロメタンについては、既に法定の有機溶剤中毒予防規則に基づくば
く露防止措置の順守の徹底化
発症の原因と疑われるジクロロプロパンについては、その有害性に関する規
制がジクロロメタンと比較すると厳しくはなされていなかったようです。
この問題については、他の都道府県でも発症例が報告されてます。
作業環境、ばく露管理レベルにもよりますが、ばく露期間によっては、まだ出
現していない他の企業もあるものと想像されます。
化学物質の場合、ばく露量(管理レベルに影響されるところ大)と発症までの
潜伏期間が化学物質により異なることが化学物質管理を複雑にしています。
大丈夫だと思っていた化学物質の影響がかなりの時間を経過してから顕在
化する場合もあり、期間が長い程その因果関係の追跡も困難になると思わ
れます。
(長くなれば長くなるほど他の要因との区別が難しくなります。また、極端な
例ですが、仮にばく露から100年の潜伏期間があるのであれば、そのリスク
は実際に顕在化しないことになります)
たとえば、石綿などは、潜伏期間が30~40年と言われており、被害のピーク
は2030年頃とも言われています。
移転・譲渡時のMSDS(化学物質安全性データシート)交付の義務化など管理
は進んでいるかと思いますが、毎年新たに使用される新規の化学物質も増え、
現在の知見ではリスク判断の出来ない物質も多々あるかと思います。
何となく読み過ごすと、管理の非常に悪い一企業だけの問題としてスルーし
てしまいがちですが、今回の事件は、将来これから出現する化学物質の怖さを知
らしめるような事件だと思います。
科学的な知見に基づき因果関係がはっきりしてから、その対応となりがちですが、
まずは被害者救済、そして”疑わしきは罰せず”ならぬ”疑わしきは罰する?”と
いう対応が重要だと思います。

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