LA 3
【作】 三好十郎
【演出】 栗山民也
【出演】 鈴木 杏
「しかし、時には思い出してくださいまし、
このような姿をした このような声をした 緑川美沙という、こんな女がいた事を。」
高級なナイトクラブのステージ、自らのフィナーレを終えたソロダンサア・緑川美沙が、客にその数奇な人生を語りだす。
南の国の小さな城下町に生れた美沙は、日華事変、二・二六事件の直後、兄の勧めで東京に行き、急進的な左翼の社会学者・山田先生のもとに身を寄せる。そこで美沙は、自分と同じく、兄である先生を信奉する弟・徹男と運命的に出会う。二人は密やかに気持ちを通わせるが、やがて日本は戦争に突入し、先生が軍国主義に迎合することでその思想を転向する中、ほどなくして徹男は学徒出陣で命を落とす。
悲嘆にくれたまま敗戦を迎えた美沙は、愛国を掲げた徹男が悔いなく出征する後押しさえした山田先生が、軽々と再び左翼に鞍替えする様子を見、保身のため思想を捨てるその卑しさに激しく憎悪を燃やす。ついに先生の殺害を決意した美沙は、レビュウダンサアと娼婦に身をやつし、その機会をうかがっていく…。
「──善い悪いが私にとって──人ではない、この私にとって、善い悪いがなにかしら?」
90分間。
鈴木杏さんが一人で、、、ストリップダンサー 緑川美沙さんの人生を語り続けます。
その内容の数奇さ、そして、ストリップダンサーとしてのいで立ち、痩せえすらっとした肢体のも目を奪われました。
彼女の語る戦争体験の中での不自由さ、思想統一という自己滅亡。
でもあらがう自我の気持ちの移り変わり。
台詞の強弱というよりは、、彼女の語るその言葉に引きこまれて、、あっという間の時間でした。
憧れなのか、羨望なのか、、絶望なのか、、彼女の殺意は、、、
自分の思考を支配していた人間の余りにも俗物的な一面を覗き見して失望して、殺意も消えて、、、、、、
濃密で、熱くて物悲しい、、、戦争という圧倒的なモノの個々の人生や幸せを歪められてしまう、、そんなお芝居をまた観ました。
最前列にはフェイスカバーが用意されてましたが、、
誰一人付けてなかったので、、
私お敢えてつけませんでした。
誰とも接せず、話さず、、、
静かに帰りました。
良い、、舞台でした。