日本酒のテイスティングノート Vol.4
課題酒
宝剣 超辛純米
醸造元 : 株式会社 宝剣酒造 (広島県)
原材料 : 広島県産八反錦
精米歩合 : 60%
アルコール分 : 16度
日本酒度 : +10
酸度 : 1.6
製造年月日 : 2019年2月
小売価格 : 2,700円(税込み)1800 ml
当日のコンディション
2月13日(水) 気温14度 晴れ
参加者 鍛冶、花岡、和田
手順
1. テイスティングシートをもとに課題酒の味、香りを確認
2. 温度帯による味わいの変化を細かく確認
3. 酒器の素材別での味わいを確認、適性を判断 (写真③参照)
4. 料理との相性を検討
テイスティング
香りは穏やかで、ほんのりグレープフルーツの白い皮の様な爽やかな香り。
含み香の余韻は清涼感がある。
淡麗でキレが良く、骨格となる酸もきちんとあるので、バランスが良い。
かなり辛口だが、程よい旨味もあるため尖った感じは無く、喉越しはなめらか。
やや熟成不足により余韻に苦味を感じる。
(テイスティングシートは別表1を参照。)
温度別テイスティング
味は、冷え過ぎていると甘味を感じず、余韻の苦みが目立つが、少し温度が上がり10度くらいになると甘味が出てきて、辛さとのバランスが取れる。
30度でやさしい甘味と余韻の酸味による辛さのバランスがとれるが、それ以上温度を上げると甘味より余韻の酸味が強くなり、辛く感じバランスが崩れる。
香りは、温度が低いとほのかに、グレープフルーツの白い皮の様な爽やかさがある。
温度が上がり40度くらいから、アルコールの揮発による香りと、もわっとした甘い香り(トーストを半分に割いたとき、パンの中の焦げていない部分の様な)を感じた。
非常にストイックな酒で、冷酒なら10度、温めるなら30度がベスト。
〈 Best 〉
冷酒・・10度 ほのかに爽快な香り、キリッと辛口だが、やわらかな旨味も少しある。
燗酒・・30度 香りは冷酒に比べほとんど感じない、やさしい甘味、余韻に少し酸味を感じることにより全体が引き締められている。
(それぞれの温度でのコメントは別表2を参照。)
酒器の素材別テイスティング
同じ形状のガラス、磁器、陶器の酒器で試飲し、酒単体での適する材質を確認。
磁器・・・味・香りともに、一番バランスが良い。
◎ ガラス・・甘味と酸味をはっきりと感じる。洋食と合わせる時など、酸味を強調させたいときに。
陶器・・・味が単調になり、ぼんやりしている。
(詳細は別表3を参照。)
料理との相性
【相性の良いと思われる料理、食材】
鰆など魚の塩焼き・・・キリっとした辛口のため、しっかりと塩が効いた焼き魚と合わせると、スダチなど柑橘の代わりに魚の塩味を和らげてくれる。
焼き鳥(ささみ・むね・砂肝を塩で)・・・味の濃いタレより、脂が少ない淡泊な部位と合わせると、塩味を和らげ肉の旨味を引き立ててくれそう。
鮃など、白身の刺身・・・塩や柑橘、香味野菜を添えると相性がより良くなる。魚の上品な甘味を引き立ててくれる。
【相性の悪いと思われる料理、食材】
豚の角煮やタレの焼き鳥、煮魚、味噌や砂糖を使った濃いめの味付けの料理・・・濃いめの味付けや、甘みの強い料理は、辛口の酒が余計に辛くなり過ぎてしまう。
総評
このお酒は例えるなら、【今どきの海の男】です。
体幹がしっかりしていて、鍛え上げられた細マッチョな肉体。
暑苦しさは無く、爽やかだがストイックさを感じます。
そのストイックさゆえ、ストライクゾーンはやや狭く、冷酒なら5度~10度、お燗なら30度前後と、魅力を発揮する温度も限られます。
やりたくないことは、やらない。
そんな潔さを感じます。
料理も何でも合うわけではなく、主に魚介(特に白身系)の、素材を活かした塩味の効いたシンプルな味付けが合います。
ハマったときには物凄い相乗効果を発揮し、他者の追随を許さない、そんな超辛口酒です。