【診断】ICD-10やDSM-Ⅳの診断基準によります。
【鑑別】うつ病以外にも類似の症状を呈する場合があります。
①頭蓋内病変(多発性硬化症、脳腫瘍、脳梗塞)
②内分泌疾患(甲状腺疾患、また頻度は低いがクッシング病など)
③悪性腫瘍(膵臓が有名)
④腎不全
⑤膠原病(リウマチやSLE)
⑥認知症
⑦パーソナリティ障害
⑧適応障害
⑨不安障害
⑩せん妄
⑪薬(アルコール、ドラッグも含む。β遮断薬、オピオイド、ステロイド、抗パ剤は特に有名)
⑫ビタミン欠乏症
⑬統合失調症
また、気分障害の中でも、双極性障害や気分循環症ではないかも考える必要があります。
治療法や予後が違ってきます。
※明らかにこのライフイベントがなければその症状は出なかったと考えられる場合は
適応障害という診断になります。適応障害でもうつ病のエピソードを満たせば抗うつ薬
を使用する医師が多いようです。
※自閉、感情鈍磨、意欲の低下など陰性症状だけの統合失調症もありますが
実際にはかなりまれです。あるいは陽性症状が軽すぎて周囲に気付かれない場合も
あります。統合失調症が疑われればメジャー、例えばSDAやMARTAが選択されます。
【検査】検査でうつを確定する事は出来ませんが、血算、生化学検査は内服開始の前に、
特に肝機能や腎機能はベースラインを必ず確認しておくべきです。
セロクエル、ジプレキサの使用を考えているなら血糖値も必ずチェックします。
また、甲状腺疾患の頻度は高く、最低でもTSHくらいは調べておきます。
ワシントンマニュアルの精神科サバイバルガイドではビタミンB12や葉酸も
スクリーニングの一環として勧めています。頭部CTは疑う症状がなければ全例には
不要でしょうが、年齢によっては、また治療に抵抗する場合は検査を考えるべきかもしれません。
心電図ではQT延長や不整脈、明らかな虚血性変化くらいは見ておきべきだと思います。
認知症が疑われる場合は長谷川式等を行っておくと良いと思います。
また、HAM-D等症状を定量化出来る方法を初診時にとっておくと治療の反応を
評価するのに便利です。
【病前性格と治療への反応】
精神科医の中には、いわゆる内因性のうつと反応性のうつを分けて考える先生がいます。
この分類には科学的な妥当性はともかく、治療への反応や予後がいくらか違ってくる印象が
あります。内因性うつの典型的な特徴は、
①病前性格は真面目、頑張り屋、完璧主義(メランコリー親和型)
②それまで真面目に出勤し成績良かった人物がある時を境に遅刻、欠勤、ミスが増える。
(社会適応は元々むしろ良過ぎるような方が多い)
③これといった明らかな誘因が特定出来ない事も多い。例えば離婚はあったにせよ数年前とか。
④日内変動(早朝覚醒、朝がしんどい)、以前は好きだった事をしても気が晴れず、むしろ億劫。
⑤発症は30代以降が多い。
このような場合は抗うつ薬著効する場合が多いです。
一方で、以前よりから問題行動、犯罪、不登校や欠勤があったり、衝動的な行為
(喧嘩、自傷行為)、何年も前から慢性的な虚無感や自殺企図があればⅡ群の疾患、
パーソナリティ障害や発達障害が、または病名までは付かないにしても、もともと
性格の偏りがありそうです。
明らかなストレス(人間関係や病気)が引き金となっていれば適応障害を考えなければ
いけません。これらを背景として出現した抑うつは、一般的に抗うつ薬が効きにくい
と考えられています。
【治療】うつ病と診断された場合は内服治療が開始となります。よく使われるのは
SSRI、SNRIである事は以前にも書きました。十分な量の抗うつ薬が処方されれば
4~6週間で60~70%が寛解します(プラセボでは30%以下)。
認知行動療法は抗うつ薬同等の効果がある。また、同治療併用群は再発率が低い。
精神病症状(幻覚、妄想)、自殺企図、食事せず脱水等は入院の適応。
①デプロメール(ルボックス)なら、
1週目は50mg夕食後
2週目は50mgを朝・夕食後または100mgを1回夕食後
3週目から150mgを2回にわけて処方します(75mgを2回または朝50mg、夕100mg等)
最大200mg。それ以上は保険で切られる可能性高いです。
②パキシルは
1週目10mg夕食後。1週間に10mgずつ増量し、症状に合わせ40mgまで増量。
1日1回投与で良いです。
③トレドミンは
1週目は50mgを夕食後
2週目から1日100mgを2回に分けて内服。
最大150mg。それ以上は保険適応で切られる可能性が高いです。
【予後】文献によれば単一エピソード後の再発率は50%、2回目の後の再発率は70%、3回目以降の
再発率は90%と言われています。
【抗うつ薬が効かなかった時】
まず診断を再考する必要があります。
12月22日の記事を参考にして下さい。当院では不眠治療も兼ねてデジレル(トラゾドン)や
ジプレキサ(オランザピン)等がまず試される事が多いようです。