Dr.向けの内容が続いてしまいました。ごめんなさい。
この方は数年前に担当した患者さんです。
最初は心筋梗塞⇒心不全かと思ったのですが、心嚢液が貯留しており
タンポナーデを起こしていました。
で、心嚢液を抜いたのですが、そこから癌細胞がみつかり…。
最初の胸部CTでは原発がわからず診断にも時間がかかってしまいました。
最終的には副腎転移が先に見つかり、胸を再検査して診断がついた症例です。
私にとっては大変勉強になりました。
当時のものを手を加えず、紹介させて頂きます。
【現病歴】50代男性。平成15年10月XX日より胸痛と息切れが出現。
次第に増悪したため近医を受診。胸部X線でCHFが疑われ、当院を紹介されて受診された。
【既往歴】特記事項なし
【家族歴】特記事項なし
【入院時現症】血圧 118/64、脈拍 130。体温37.8℃、
SpO2 90(O2 6L mask)胸部聴診上異常なし。眼球結膜に黄染を認めず、眼瞼結膜に貧血を
認めない。腹部平坦・軟で圧痛なし。下腿浮腫は認めない。
Labo dataではBS 163mg/dl、 BUN 82.1mg/dl、 Creatinine 2.8 mg/dl、T-bil 2.0mg/dl、
γ-GTP 130IU/L、 AST 3832IU/L、ALT 3237IU/L、 Na 134mmol/lK 5.6mmol/l、 Cl 96mmol/l、
WBC 14790/μl、 Hb 13.2g/dl、 PLT 15.7X104/μl CRP 10.5。mg/dl、トロポニンT(+)。
CEA 71.3ng/dl、 CA19-9 184 TSH 0.78 ANA(-)
胸部X線にて心陰影拡大、肺野はclearでわずかに胸水を認めた。pO2 63.9 pCO2 36.5
(O2 6L mask)。ECG上ST変化はなく、Low QRS voltageを認めた。UCGにて大量の心嚢液の
貯留が確認された。
【入院後経過】入院当日に心嚢穿刺を施行。血性の心嚢液が500ml流出した。除水後の
血圧 128/78、脈拍 98 SpO2 96(O2 6L mask)であった。第2病日、更に769ml排液。
第3病日に上腹部USTを行ったがFatty liverと少量のascitesを認めるのみであった。
排液量が減少するに従い呼吸状態、肝・腎機能は改善した。第5病日のUCGでは
心嚢液は殆ど認めなかった。
同日のBUN 9.9mg/dl、Creatinine 0.7mg/dl、AST 149IU/L、 ALT 303IU/L 、WBC 7770/μl、
Hb 12.4g/dl、CRP 2.9mg/dlであった。
心嚢液の一般培養、嫌気性培養、好酸菌培養は全てnegativeであったが細胞診でclassⅤ、
adenocarcinomaとの結果であった。本人には現状を告知したが、胸部CTでは縦隔、
肺野に明らかな病変を認めなかったため、原発部位を検索するために
第8病日日に上下部内視鏡検査を行った。その結果、胃角部前壁に周囲隆起を伴う径50mmの
巨大なUlcerを認め、biopsyを施行した。しかし結果はclassⅡであった。
第14病日に腹部の造影CTを施行したところ左副腎に径20mmのmass lesionを認めたため、
転移と考えた。第15病日、再び胸部CTを行ったところ、今回は右B3bに径20mmのmass lesionを確認。
Pleural indentation、Vascular coalescencyを認め、原発性肺癌であると考えられた。
Bulkyのリンパ節の腫脹を認めたため、TMN分類ではT3 N2 M1と診断した。
同日、心嚢液の再貯留はみられなかったため、カテーテルを抜去した。
患者本人の希望でがん専門病院宛てに紹介状を作成し、第17病日目に退院となった。
【考察】
心嚢液貯留の主な原因としては心嚢炎、特発性、急性心筋梗塞後、尿毒症、膠原病等が
知られているが、Coreyらによれば悪性腫瘍による心嚢液貯留の割合は全体の23%と
感染症に次いで頻度が高かった。更にその中でも肺癌、乳癌によるものが圧倒的に多く、
食道癌、胃癌がそれに続く。本症例では入院時の胸部CTで肺、縦隔に腫瘍を認めず、
強い炎症反応より心嚢炎を疑っていたため診断が遅れてしまった。本症例は臨床病期Ⅳ期
となるが、Performance statusは1であり治療ではプラチナ製剤(CDDP、CBDCA)と新規抗癌剤
(TXT、PTX等)で良好なエビデンスが多く、QOLと予後の改善が期待される。
Corey,GR,Campbell,PT,van,Trigt,P,et al;Etiology of large pericardial effusions.Am J Med
1993;95:209
Schiller JH et al;Comparison of four chemotherapy regimens for advanced non-small-cell
Lung cancer.N Engl J Med 436:92,2002