見逃された…というか私が見逃したんですけれど…。
私は自分で思うにかなり慎重、と言うか臆病な方だと思うんです。
この患者さんも忙しい中とは言え、気が緩んでいた訳でもなかったのですが…。
72歳男性。高血圧があり、ノルバスク内服中。
4、5ヶ月前から労作時息切れを自覚していた。
12/30大掃除の後、昼の12時くらいから胸痛が出現。
動くと息切れもあり。持続するため、午後4時頃ERを受診。
患者さんは独歩でやって来ました。
胸痛の既往はありません。AMIのrisk factorはHT、smoking(30本×50年)。
心疾患の家族歴はないが兄が入浴中に突然死しているそうです。
胸痛は心臓の辺りを手のひらで押さえ、この辺だった、とのこと。
病院に来てからはだいぶ良くなっている。
どんな痛みでしたか?と聞くと“うーん”とハッキリしません。
圧迫されるような痛みでしたか?と聞くとそんな感じです、と答えます。
冷や汗や吐き気はありませんでした。
Vitalは血圧138/78、P 90、SpO2 96(room air)
心電図はLVHパターンで、V5、V6のSTは低下(strain )。
循環器内科医にも心電図を読んでもらったが、“なんとも言えない”との返事。
確かに、心電図は何とも言えないと思いました。T波も特別高くなかったです。
採血結果を見るとミオグロビン600、CK 151と微妙な数字。
後から考えるとこれをもう少し重要視すべきでした。
しかしトロポニンは陰性で、白血球や他の逸脱酵素は全く上がっていません。
患者さんを呼び、痛みを尋ねると“今はありません”と。
“一番痛い時を10とすると?”と聞くと“ゼロです”とのこと。
“ゼロ…ですか?”
“ゼロです”
重症感も感じられず、これは大丈夫そうだな、という気になってきました。
もちろん循環器内科医にも検査結果を伝えました。
“ミオグロビンは非特異的な上昇だろうな”
私も同意見でした。
しつこくもう一度心電図を取りましたが変化なし。
患者さんには、狭心症の可能性は完全には否定出来ないまでも
典型的な経過ではないと説明し、念のため循環器の予約を取りましょう、
とお伝えしました。一応ニトログリセリンも渡し、痛みがまた起こったら
すぐに救急車で受診して下さい、ともお伝えしました。
しかし、翌日患者さんはERを再診されました。訴えは呼吸苦で、
新たな胸痛はありませんでした。Chest X-pでは心陰影やや拡大。
採血の結果CK 862!
心電図も取られていましたが、これはあまり変化がありませんでした。
しかしAST、LDHも上昇しており、生化学所見もMIで間違いなさそうです。
循環器内科に入院となりました。
CKはこの数字でpeak outし、待機的にCAGが行われました。
結果は#3-100%、#12-90%、#9-99%の3枝病変でした!
EFは42%、inferior,posteriorがnoneでした。
循環器の先生も、“これはわからないよ…”と逆に申し訳なさそうに
言って下さいましたが…。
以上、わかりにくく、すっきりしない部分もありましたが私が診断出来なかった
AMIの患者さんでした。echoだけでもやってもらえば診断ついてたかもしれないのが
患者さんには申し訳ありませんでした。これだけやっても見逃すんだな…と
改めてMIの恐ろしさを実感しました。