この記事は、事業承継の進め方や制度を解説するものではありません。
成功事例や正解ルートを示す内容でもありません。
事業承継の話題になると、多くの経営者が口にする「まだ早い」という言葉。
その言葉の背景にあるものを、一度立ち止まって整理するための文章です。
読後、何かを決める必要はありません。
事業承継を否定している経営者はほとんどいません。
必要性は理解している。いずれ向き合わなければならないことも分かっている。
それでも話題になると、自然に出てくるのが「まだ早い」という一言です。
この言葉は反対でも拒否でもありません。
多くの場合、“保留”を意味しています。
年齢や業績を見れば、すでに準備に入っていてもおかしくない時期に差しかかっている。
それでも前に進まない理由は、時間や制度では説明できません。
事業承継とは、会社を渡す話であると同時に、
自分が経営者でなくなる人生を受け入れる話でもあります。
「決断できない」のではなく、区切り方が見えていない。
これが「まだ早い」という言葉の正体なのかもしれません。
承継が進まない会社では、権限と覚悟のズレが生まれます。
その曖昧さは組織に静かに伝わり、現場の判断を鈍らせていきます。
事業承継とは、引き継ぎではなく意味の継承です。
なぜ続けてきたのか、何を守ってほしいのか。
それらが言葉にならなければ、承継は進みません。
「まだ早い」という言葉は、弱さではありません。
経営者として真剣に向き合ってきた証でもあります。
決断の前に必要なのは整理です。
その整理がついたとき、言葉は自然と変わっていくのかもしれません。

