文明病を発症させる要素については2つある。

それは「炎症」と「不安」の2つです。

炎症とは細胞レベルで起こる火事のようなもので、

鬱、肥満、糖尿病といった様々な不調の原因と考えられてます。

 

「文明病」において、もっとも典型的なものは「肥満」でしょう。

人類は約600万年の狩猟採取時代に適応する為に進化しています。

カロリーが低い食べ物しかなく、食事にありつけないことも多かった時代。

そのため、我々の脳はできるだけ高カロリーの高い食べ物を探すように進化しています。

ところが現代の先進国は高カロリーの豊富な食料が容易に手に入るようになりました。

 

元々人間は高カロリーな食料を好むように脳が設計されているため、

頭の中では「アッサリしたものを」「低カロリーな物を」と分かっていても、

人の意思の力だけでは肥満に立ち向かうことは出来ないという事です。

 

「炎症」反応とは体がダメージを受けた時に、

有害な刺激を取り除こうと免疫システムが起動し、

ダメージを修復する為に働き出す反応です。

炎症とは体の表面(擦り傷など)だけに起きる現象ではなく、

内面で、もっとわかりにくく、とろ火でジワジワと全身を煮込むような形で進行します。

その代表的なものが「肥満」です。

 

内臓脂肪は身体にとって「異物」でしかなく、

私達の体は内臓脂肪が増えると免疫システムを動かしはじめ、

脂肪細胞が分泌する炎症性物質が臓器に炎症を引き起こします。

しかし、どんなに免疫システムが頑張っても、

内臓脂肪が減らない限り炎症反応は続き、ジワジワと燃え続けます。

このタイプの炎症はハッキリとした自覚症状がなく、謎の体調不良として認識され、

多くの人は体調不良の原因がわからないまま時間を過ごし、

炎症の導火線は爆発へとカウントダウンを続けています。

 

狩猟採取時代と現代とのミスマッチが炎症を発生させているのなら、

狩猟採取時代に近づき、ミスマッチを減らしていく事が改善に向けての最善の方法です。

以前、「空腹こそ最強のクスリ」という本を紹介し、一部を自分自身で実践し、

血液検査で肝数値において劇的に改善し、体重も4㌔減ったことを載せましたが、

これも狩猟採取時代に備わった「オートファジー」「サーチュイン遺伝子」の活性化を利用したものです。

進化医学のアプローチで最高のコンディションに導く方法の一つと言えるでしょう。

 

しかし、人の脳が高カロリーな食料を求める以上、

人の「意思」だけで立ち向かうことは難しいことです。

 

グーグルのニューヨークオフィスで面白い実験が行われました。

スナック置き場を起点に2カ所にドリンクバーを置きました。

1つはスナック置き場から1.8mの場所に、もう一つは5.5mの場所に設置されました。

その後、従業員の動きを観察したところ、

スナック置き場に近いドリンクバーを利用したものは、

遠いところのドリンクバーを利用したものよりも、

お菓子を食べる量が69%高いという結果が出ました。

1日3回ドリンクバー利用した場合、

1年で体脂肪が1.1㌔ほど増える計算になるそうです。

ほんの数メートルの差が無意識の食べ過ぎをもたらし、

長期的な肥満に繋がるかもしれないということです。

 

この他にも社員食堂でデザート用の皿の大きさを小さくしたところ、

デザートを食べる量が減り、

社員食堂の入り口にサラダバーを置いたところ、野菜の摂取量が増るなど、

人間は「環境」に大きな影響を受ける生物だという事が実験によってわかっています。

なぜグーグルがそのような実験を行っているのか?

社員の健康を大切に考えていることはもちろん、

その奥底には「環境の力」を信じているからです。

 

肥満を解消したいのであれば環境を変える必要があります。

例えば外食を止めたいのなら、店舗のある道は歩かず、帰宅ルートを変える、などです。