野島 稔 メモリアルコンサート 第1回 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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旅と鉄道と温泉が大好き。
そして、クラシック音楽も好きなもんだから、音楽会を理由に、日本国内を旅しています。
音楽と旅を中心に、日記を書いていきます!

大型連休後半 初日は、横浜市立図書館に寄ってから横須賀へ。

図書館最寄りの 京急 日ノ出町駅にお昼に行くと、たくさんの人! そうだった、今日は伊勢佐木町で「みなと祭」~国際仮装行列~でした。

私は混雑を避けて、京浜急行で汐入駅まで。

『野島 稔 メモリアルコンサート』第1回 ピアノ協奏曲



・主催者の紹介文は
≪「野島 稔・よこすかピアノコンクール」にゆかりのあるピアニストたちが2回にわたりお贈りする一期一会のコンサート
横須賀に生まれ、日本を代表する国際的ピアニストとして活躍した故・野島 稔氏(1945 -2022)。
その唯一無二の美しい音色や研ぎ澄まされた技巧、磨きぬかれた深い音楽性により”ピアノ芸術の真髄を伝える貴重な演奏家”と評されました。
横須賀芸術劇場では1994年の開館以来、リサイタルや協奏曲でたびたび出演。2006年からは自身の名を冠した「野島 稔・よこすかピアノコンクール」の審査委員長として、次世代の優秀なピアニストの発掘と育成にもご尽力いただきました
野島氏に想いを馳せて、ゆかりのピアニスト達が協演する特別な2日間となります。≫

5月3日(金・祝)15時~
よこすか芸術劇場

指揮:高関 健
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

今日は協奏曲プログラム。なんと、協奏曲の名曲 4曲を、4人のソリストにより聴けるという素敵な企画。
そして 私にとっても 野島稔さんは、地元(お隣 横須賀市)の演奏家、というよりか、外山雄三先生のコンサートでのソリストとして、良く聴いていたので、親しみがあったピアニストです。
ということで、初夏の陽気の横須賀へ出かけました。

今回は最安値の座席で4階右サイド3列目の中央寄りが空いていた(残りのS席より良かった)ので そちらにしました。


前半最初は
野上真梨子 (第5回コンクール 第1位)
♪モーツァルト:ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595
10型(もしかするとヴァイオリン各8?)の両翼配置。
第1楽章の冒頭のオケの提示部の絹のような美しさにうっとり。それを受けるように(ピアノの方向性と合わせてのスタートなので 逆ですが)目の細かな、薄い化粧を施したようなピアノが素敵でした。私が最も印象的だったのが、再現部のピアノと第1ヴァイオリンで旋律を奏でるところ。ヴァイオリンのビブラートを削いだ響きと ピアノとの音色が衝撃的でした。
第2楽章ではピアノの弱音の美しさに対して、オケがちょっぴり前に出ている印象がありました。フルートとオーボエとピアノの3人の絡み、「室内楽」するところが特に気になったのは、リハーサルの時間のせい?
「春への憧れ」の第3楽章も、旋律重視というスタイル。私的にはもっと明るく草が芽吹く萌えるリズムが欲しかったです。
モーツァルトの美しさを追求したスタイルは、ダイナミックも抑えた感じもあり、ちょっぴり印象が弱くなったかな? 私的には旋律に乗れて 心地好い感じがつかめたのですが─

続いて、
小井土文哉 (第6回コンクール 入選)
♪ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 Op.18
オケは(ここからは)12型
とても丁寧で山の中腹の草原を流れるような清冽さで、かつ骨のある芯のある音づくり。
こちらはスコア持参で聴きましたが、やっぱりラフマニノフの管弦楽曲は(苦手)よくわからない─
ピアノの輝く彩りの奥に、しっかりとしたオーケストラの旋律が湧き出してくる感じが、ラフマニノフ!
小井土さんの落ち着いたテンポで(煽ることなく)一歩一歩歩んでいく音楽作りは、好感が持てました。そしてそれにしっかりと合わせた高関さんの指揮は万全って感じでした。聴き終ると これといったチェックポイントは無かったものの、大きな満足感が得られました。

休憩のあとは
若林 顕 (第3回~第6回コンクール 審査委員)
♪プロコフィエフ:ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 Op.16
今日は家族(子ども連れ)で来場する方が多かったのですが、主催側は そのことが予想できなかったのかしら?それとも小学生の(ピアノを習っている子どもなら)『プロコフィエフは楽しめる』と思ったのでしょうか?
私は大学の時に、読売日響の定期でこの曲を聴いてハマってしまったのですが、その後 なかなか聴く機会が無く(記憶にあるのは四半世紀前に仙台フィルの定期で聴いただけ?)今回は これを聴くのが目的。                                          
久しぶりの若林さん。若々しい色彩豊かなプロコフィエフが楽しめました。
第1楽章は 後半の長いカデンツァを過激にならず コンパクトに。このまま行くのかと思いきや、第2楽章では不気味な足音が近づいてくる様。
強大な力に押し潰されそうな力に抵抗するかのような第3楽章。
一転、終楽章 前半は光明が訪れ、身体を伸ばせるかのような雰囲気にホッとするも、後半になると、オケの威嚇のような鋭いファンファーレにピアノが対抗するような掛け合いは「プーチン対○○?」
聴き終わった印象は、今のロシアの理不尽さに何もできない この世界の苛立ち って感じを持ったのは、私だけ? 昨日のニュースで「ロシア正教会が国内で戦争を正当化する方向で─」と聞いたのも影響しているのかな?(ロシア正教会ならプロコフィエフではなくラフマニノフの方ですね

最後は
伊藤 恵 (第8回~第9回コンクール 審査委員)
♪ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 Op.73 「皇帝」
伊藤さんを聴くのは何年振りだろう。4階席から見るお姿は、変わらない! そして音楽も!
と、思ったら─
第1楽章の展開部後半と再現部の16部音符の細かい動きの箇所で、何回か「アレッ?」と思ったところがありました。ミスタッチではなく、明らかに普段聴き慣れた動きと半音違う! 新しい(自筆?)楽譜に基づいた成果? 高関さんの研究の実践? と 詮索したくなっちゃいました。
こちらも 俗な言葉で言えば、オーソドックス。上記の箇所を除けば、ベートーヴェンの楽譜に極めて忠実に そこから逸脱することの無い、80年代のスタイルを思い出させる『皇帝』が懐かしかったです。

今日は盛りだくさんのピアノ協奏曲が楽しめました。そしてプログラムとともに配布された野島稔さんの『メモリアルブック』と『演奏記録』はそれだけでも 有用な資料。それを考えると、私のB席4000円は 安かった!(今日は1階〈S席〉は満席。上の階になるにつれ 席が空いてくるという状態~つまりB席がガラガラでした!)

終演で外に出ると、18時30分前。
ホールの向かいの『コースカ ベイサイドストアーズ』のスーパーでお買い物をと移動すると、空が赤くなっていました。