小澤征爾音楽塾:モーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』:よこすか芸術劇場 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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~若い力~

昨夜の夕食は W盛りのじゃじゃ麺。ラー油、ニンニクどっさり、で 満腹。
そして 今朝10時に お友達のラ フォル ジュルネのチケット購入に同行。そして私はそのまま 仙台から横須賀に移動。


15時~
よこすか芸術劇場

小澤征爾音楽塾
👗モーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』
オペラ ドラマティコ形式


音楽塾のフィガロは、4年前の企画。私が行く気満々で準備していての中止だった。
今回は小澤さんがすべて指揮するわけではありません!との文言がついてのプロジェクト。

音楽監督、指揮:小澤 征爾
指揮、チェンバロ:テッド・テイラー
演出:デイヴィッド・ニース
管弦楽:小澤征爾音楽塾オーケストラ
合唱:小澤征爾音楽塾合唱団

伯爵:クレッグ・ヴァーム
伯爵夫人:シャーン・デイヴィース
スザンナ:デヴン・ガスリー
フィガロ:ウェイン・ティグス
ケルビーノ:リディア・トイシャー
マルチェリーナ:牧野 真由美
バルトロ:デニス・ビシュニャ
バジリオ:高柳 圭
バルバリーナ:三宅 理恵
クルツィオ:升島 唯博
アントニオ:町 英和

オーケストラピットのオケは、客席との間に仕切りを置かず、客席からオケがまる見え。管楽器とコントラバスは後ろ側の雛壇の上。そして その後ろの高い位置に舞台を置いていました。これは昔、新日本フィルの定期のオペラ公演で観たかたちに近いもの。
舞台は反響板的に左右に壁を配置、多少の演技で横を向いても声がしっかり届くようにしてある。

オケと一緒に小澤さんが入ってくるあたりは、水戸などと一緒。ほのぼのしていて いい。
丁寧な序曲で開幕。序曲のあとに拍手が。するとオケを立たせて挨拶。そう、オケはプロを目指す若者の集まり。

幕が開くと楽しい2つの二重唱。どちらもテンポが、今の感覚からすると、遅い!しかし、歌はしっかり発声され、ひとつひとつの言葉と音が極めて明瞭になる。ドンドンの二重唱ではオケの表情も豊かに楽しめました。
マルチェリーナとスザンナの二重唱の時には 普通は直前のアリアで退出するバルトロも舞台に残り、演技。バルトロとマルチェリーナの関係を考えると、この方が自然。
最後の蝶々のアリアでは、フィガロがケルビーノの髭を剃るという演出も!
全体的にテンポが遅めで 丁寧な演出が工夫されている舞台の第1幕でした。
拍手が響くと、普通は拍手を無視して指揮者は下がるのですが、小澤さんはオケ全員を立たせて礼をして、オケと一緒に袖に下がっていきました。

ここで20分の休憩。

第2幕も丁寧な音楽に演出。
特にケルビーノのアリア、恋とはどんな、では ケルビーノが夫人を口説く設定。あまりの迫力にスザンナがギターを構えているかを確認するのを忘れてしまったくらい。その後はケルビーノと夫人が危険な関係になりそうな演出が生きていました。特に、伯爵が戻って来た時、スザンナが化粧部屋に行かされて なかなか戻って来なかったくだりが、今回の演出だと納得がいきました。1回目に戻って来たのが早すぎたから もう一度 ゆっくり行ってきなさい!って感じが ありありと。
第2幕の終わりも第1幕と同様、オケを立たせての挨拶で締めました。

そして20分の休憩。

第3幕は小気味良いテンポ設定の音楽になっていました。そして 細かい仕掛けも楽しめました。
曲順は本来の伯爵のアリア→夫人のアリア→裁判の場目→手紙の二重唱。観ていて抵抗のない順での構成。
印象に残った場目は、
夫人のアリア、楽しい思い出、では、後半、転調して明るくなってくるところで 照明が徐々に明るさを増し、これからの期待を感じさせる効果がはっきり出ていました。
手紙の二重唱では、最後のフェルマータで小さなカデンツを入れる積極的表現。
婚礼に入るまでのオケの行進曲、単調になりがちなのですが、真ん中の部分をpにしちゃうなどの表情づけには、ハッとさせられました。ただ舞台の動きに その表情が合致したかというところの細かい部分は、ボーッとしていて見逃しちゃいました。
最後の舞踏会で、伯爵がバルバリーナにピンを渡す場目もしっかり見させる、わかりやすい演出でした。

幕を下ろして、字幕に 小休止 と出しての舞台転換。ところが第3幕が終わって 拍手にオケを挨拶させたあと、指揮をしていたテイラーさん、オケを引き上げさせようとして、コンミスに下がったらダメ!と促されるハプニング。会場に温かい笑いをとったあと、オケのヴァイオリンや他の弦のメンバーが一斉に立って帰るのか?と思ったら、席替え。小澤さんの主宰のオケは 第1と第2の区別どころか、同じパートでも座る位置を固定しません。今回は ここで幕を連続させたので、そのからくりがハッキリわかりました。

第4幕は案の定、マルチェリーナとバジリオのアリアをカット。マルチェリーナのアリアは好きなだけに残念でしたが、音楽塾なので仕方のないこと。
スザンナのアリアでは、最初のオーボエとの絡みで オーボエが大胆な表情づけ。最初 歌のあとすぐに続くオーボエの符点4分音符を、伸ばしすぎ?と思える長さを保ったので ハッとさせられたのですが、その後はさほど大きな波を作らなかったのは拍子抜け。この曲、ソプラノとオーボエの二重奏みたいに演奏してほしいと以前から思っていただけに、それはしっかり聴けました。
最後の庭の場面でのスザンナと夫人は、それぞれの着物を交換するのではなく、本来のドレスの上にお互いの着物を羽織るかたち。それは良いのですが、大詰め、伯爵に スザンナと思って口説いていたのは私よ!って姿を現す場面、羽織っていたスザンナのドレスを脱いで現れました。舞台は それを見てすぐに伯爵が謝るのですが、スザンナのドレス無しで、指環を示す動作もなく、はちょっぴり不自然。ただ、夫人が大勢を前に 使用人の服で出てくる、というのも あまりに不自然なのかも。ただ 身分制度の感覚の無い日本では、スザンナの服が欲しいかも。今回は仔細まで拘るニースさんの演出ですからね。

今回は男声とケルビーノ、マルチェリーナが歌唱で光っていました。夫人は細かいビブラートが目立ちすぎて 私は閉口しました。

そして小澤さんは、まず 序曲~ギターのアリア、そのあと一旦袖に入り、農民の合唱から戻り、蝶々のアリアまで指揮をして 幕。
第2幕は スザンナ出て来い の三重唱から最後まで指揮して 幕。
次は第4幕のフィナーレを指揮しました。
お元気で、指揮の時は椅子に座らないで、いつもの大きな柔らかい指揮姿は健在でした。

今日の座席は前5列をオケでカットした配置での T列。つまり15列目あたりのど真ん中でしたが、 舞台が高い位置にあったため、私の目の位置が舞台の下よりやや高い程度という状態。視界に調度舞台全部が入る、最高の席でした。そしてオケの音も直接聴こえるので、バランス的にも良好。演奏者の表情がしっかりわかるので、オケの細かいニュアンスが手に取るように伝わってきました。

最後におまけ。なんと私の席の真後ろに小泉進次郎議員が座りました。早い時間から座っていて、小澤さんにはいつ挨拶に行く…云々、と言っていたので 誰だ? と後ろを向いてビックリでした。アリアのあとも しっかり拍手をしており 好感が持てました。それにしても 端正な素敵な方でした。

よこすか芸術劇場は馬蹄型のオペラハウス様式のホール。オペラを観るには最適の環境。そこで 全員が力を出しきった 元気一杯の作品を体験できました。
18000円を高いと感じない舞台でした。
ただ、プログラムの2000円はちょっぴり高いかも。英文がついていて厚さが倍だから仕方のないことか。
そして私が困ったのは 、手持ちが1000円しかなくて 会場に入ってから銀行に走ったこと。昨日のチケットぴあのお姉さんが、ラ フォル ジュルネのチケットを取った時、カード決済を希望したのに 間違って現金決済で発券したのが原因。今日の昼食はJRのコンビニでSuica決済にしたのですが、ここで足りなくなってしまった。
危なくプログラム 買えなくなるところでした。

今夜のテレビでは、小澤さんの1月の、私がチケット買えなかった、水戸の演奏会の模様が流れていました。

小澤さんの音楽づくりの姿勢は 本当に素晴らしいものを感じます。私の好きな曲と小澤さんとは、レパートリーがちょっぴり離れてはいますが、もっともっと応援をしたい 尊敬する音楽家です。