はいどん楽遊会 その二十九:雑司谷拝鈍亭 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

旅と鉄道と温泉が大好き。
そして、クラシック音楽も好きなもんだから、音楽会を理由に、日本国内を旅しています。
音楽と旅を中心に、日記を書いていきます!

気温が低めの首都圏。
昨日は仕事の帰りに 相模原市の山奥の温泉までひとっ走り♨️ 紅葉も始まり、露天風呂がちょうど良い涼しさでした。

今日は層積雲の広がる都内。層積雲らしく、青空も見えたりもするのですが、雨もパラパラ🌂 久しぶりに中古CD屋さんに行くも、目的とは違ったDVDの掘り出し物を見つけて、唱歌の本とともに購入しちゃいました。
そして お昼をたらふく食べて、護国寺へ移動。

 
はいどん楽遊会 その二十九

17時~
雑司谷拝鈍亭

楽遊会弦楽四重奏団
ヴァイオリン:若松夏美、竹嶋祐子
ヴィオラ:成田 寛
チェロ:鈴木秀美


最初の曲は
🎵F.J.ハイドン:弦楽四重奏曲 イ長調 作品20-6 Hob.III:36
作品20の中では、私にとっては一番馴染みの薄い作品。フィルハーモニアのミニチュアスコアを参照しながら。
アレグロの第1楽章。提示部の第1主題後半での 突然の2度も出てくる(連続していない)ヘミオラをはじめとして、様々な仕掛けがてんこ盛り。パッチワークの様相がめちゃ楽しい。

反復記号を持たない通作形式のアダージョの第2楽章は、ヴァイオリン協奏曲の様。ソナタ形式の提示部を丁寧に繰り返すような構造。その2度目には装飾をこれでもか…と書いている。これを見るとハイドンの反復に対する姿勢がよくわかる。展開部のあと、再現部を期待すると転調して 再現部はまだか、と思わせて、そこで終止というなんとも人を騙したような楽しい構造。若松さんのヴァイオリンは楽譜通りでしたが、耳には装飾を積極的に加えてのアグレッシブなスタイルとして届きました。そしてもうひとつ、竹嶋さんの第2ヴァイオリンの16分音符で動く時の伴奏の息づかいがとってもきれいでした。

明るく明快な、複雑な前の2つの楽章に対して肩透かしを食らわせるような単純なメヌエット。
トリオはなんと、第2ヴァイオリンがお休みの弦楽三重奏。これには聴衆もビックリしたようで、終演後の竹嶋さんのまわりの話題は、弾かなかったトリオについて😁 そんな本当の『トリオ』では第1ヴァイオリンが五線譜の上には出ない低めの音中心の、ヴィオラとチェロに寄り添った落ち着いた響きが温かかったです。

フーガと題されたアレグロの第4楽章。4つの楽器が緻密に絡まっていく、箱根細工のような楽章。しっかりと地に足をつけたように、がっちりと組み立てられた音楽が聴けました。

続いて
🎵F.J.ハイドン:弦楽四重奏曲 ヘ短調 作品55-2 Hob.III:61 「剃刀」
こちらは日本楽譜のミニチュアスコアを参照。
💬鈴木さんのお話しで、この「剃刀」というタイトルは、ハイドンのカミソリが切れなくなった時に、カミソリを贈られた人に御礼として渡されたという伝説に基づくもの。つまりこのタイトルは曲の内容とは一切関係ない、とのこと。

アンダンテの変奏曲の第1楽章。ヘ短調(と続くヘ長調←これを主題とする解説もあるのですが、私はこれが第1変奏に思える)の主題のあと、ヘ長調とヘ短調の変奏が続く充実した楽章。しかし最後の長調の変奏以外は第1ヴァイオリンが主題を演奏し続けるスタイル。このようなスタイルの曲だと 無条件で耳に入ってくる第1ヴァイオリンではなく、下の3つの楽器のスタイルにどうしても注目してしまう。最後のヘ長調の変奏は秀美さんのチェロが主題を受け継ぎ、高い音域で大きく歌いました。

ヘ短調のアレグロの第2楽章はソナタ形式。(第2主題の直前とかではない)変なところに組み込まれた2小節の休符が面白いアクセントになっている。もちろん楽譜通りにしっかりと休むのですが、それが この小さなホールの聴衆には奇異に映った(聴こえた)のが明らか。展開部も最初に2小節の休符。ハイドンが音楽にブレーキをかけて楽しんでいる様。
そんな中、平行長調のヘ長調で始まる再現部が、それほど色合いが変わらなく聴こえたのは、私だけ?

ヴィオラから歌い始めるメヌエットは同音反復の続く主題が印象的。楽器もだんだん厚くなるような、弦楽四重奏の実験をしているような面白さが感じられました。
ヘ短調の穏やかなトリオも旋律よりリズムとハーモニー中心の凝った曲。

元気なプレストの終楽章。細かい動きの中にリズムの遊びが見え隠れ。秀美さんの音楽づくりは、諧謔的なところを強調する方向性。もちろんチェロの大きな表情づけが音楽に リポビタンD並みの生気を与えていました。

休憩中にクーラーを入れて、ホールをクールダウン。前半は湿気がすごく、ガット弦に対しては過酷な環境。それに対して 後半は 空気がカラッと入れ替わった様。

🎵F.J.ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調 作品64-6 Hob.III:64
こちらはオイレンブルクのミニチュアスコアを参照しながら。
やわらかな主題で始まるアレグレットの第1楽章。第1ヴァイオリンの歌がとてもなだらかな起伏で流れていく音楽が 自然の風景を見ているかの様。pの繊細な響きが素敵でした。
途中でスコアから全く異なるリズムで演奏された箇所があったので、終演後、若松さんにスコアを見せて確認したところ、スコアが(演奏者が使用したのとは)異なっているとのこと。私は今日の演奏の方がリズムが生き生きとして良かったです。

アンダンテの第2楽章は3部形式。ヴァイオリンの協奏曲(というより私の好みはレチタティーヴォ風)のような技巧的な中間部に対して、両端の4つの楽器が緻密に絡み合う 幻想的な響きに満ちた部分とのコントラストを明快に描き分けた演奏が聴けました。若松さんのヴァイオリンの中間部は、速めでサッパリ系。隈取りされた役者が大きな見栄を切るような私の好みとはちょっぴり離れた、協奏曲的な音楽でした。

平明で穏やかな、これぞハイドンというメヌエット。
目の前で踊り出すようなトリオは、第1ヴァイオリンの装飾が民族色の濃いスパイス(ポルタメントの使用)がありました。なお、それも若松さんに訊いたところ「使用した楽譜には『1本の弦で弾け』とあったので それで…」とのこと。トリオの愉しさでメヌエットの印象は飛んでいってしまいました。

プレストの終楽章はハイドンらしい端正で潔癖な縦の線がキチッと嵌まることを前提に作られた音楽。ここでは4つの楽器全体で大きな山をつくりあげていきました。
そしてコーダでは音楽に急ブレーキをかける遊びで 聴く者を翻弄させて、終わる。ハイドンの面目躍如たる音楽を4人は「これでどうだ!」と締めました。


今日から拝鈍亭の楽遊会の部は、2000円以上の志納となりました。適正価格に近づいた感じです。そのためか、今日はいつもよりは空いたかな…って感じ。

その後は演奏者との懇親会に参加。そこで拝鈍亭の楽遊会の弦楽四重奏曲の部が あと4回で終了(全曲演奏し終わってしまう)なので、どうするか問題を、勝手にワイワイ、ガヤガヤ。
「モーツァルトのハイドンセットがある!」
「ハイドンと言われてきた作品3がある」
「全曲を印刷したアンケートを配ってリクエストを取る→そこで だれにも選ばれなかった曲を『こんないい曲なんですよ』と演奏すればいい」
「もう1回、最初からやる」
「管楽器を入れてディヴェルティメント、鍵盤楽器を入れて 小協奏曲」
侃々諤々…
あわせて住職から来年度の拝鈍亭の予定が回されて、酔っぱらう前に みんなでチェック✍️

酔っぱらったあとで「じゃあ 次は山形の天地創造で」と皆さんと確認をすると、私だけが土曜日で、他の方々は日曜日とのこと。あれ~😅