爽やかな空気に包まれた首都圏。朝、横浜からは残雪がきれいな富士山も見えました。今夜は新宿へ。
小倉貴久子の《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》
《第32回》〔ゲスト作曲家〕G.パイジエッロ Giovanni Paisiello [1740-1816]
19時~
近江楽堂
クラヴィーア:小倉 貴久子
カウンターテナー:彌勒 忠史
使用楽器:Klavier made by Chris Maene after Anton Walter [1795]
コンサートの聴きどころ
『国際的な影響力を誇った作曲家パイジエッロは、オペラの都市ナポリで頭角を現し、その後エカテリーナⅡの宮廷で活動。ナポリに戻り王室楽長・宮廷作曲家として不動の地位を手に入れますが、フランス革命後の後半生は激動の波にのまれてゆきます。ナポレオンの寵愛を得てパリに招かれるも短期間で帰郷。ナポリ共和制下では責任ある地位を得ますが、王政復古期には宮廷から冷遇されます。
83年にウィーンでパイジエッロの《セヴィリャの理髪師》が初演され大人気。モーツァルトの《フィガロの結婚》(86年)は、その続編が意識されていて、音楽も影響を受けています。皇帝ヨーゼフⅡの御前でクレメンティと競演した際、ロシア大公夫妻から「我がパイジエッロのソナタを弾いて」と請われ演奏。ブルグ劇場での大演奏会の折にも、パイジエッロのオペラの一節を変奏曲にしたり、ウィーン滞在中のパイジエッロを演奏会に招くなど、モーツァルトは敬意の念を抱いていました。』
と、ある。
私にとってパイジェッロといえば、高校生の時にFM放送をカセットテープに録って何度も聴いた『セヴィリアの理髪師』が大のお気に入り。私にとっては『セヴィリア…』といえば、ロッシーニよりパイジェッロの方が身近。その後、CDの時代になって他の作品も聴くようにはなったものの、やっぱりオペラ作品が多かったような…
今日はオペラのアリアが お気に入りの弥勒さんで聴けるのも めちゃ嬉しい。
今日は声楽が入るので、正面の後方(といっても4列目)で楽しみました。
最初は恒例の子どもの頃の作品
🎵モーツァルト:ロンドンの楽譜帳~ニ短調 K.15u
しっかりとした作品。小倉さんの演奏は いつものように繰り返しのたびにちょっとした表情の変化を加えての、おしゃれな音楽づくり。
続いて弥勒さんのカウンターテナーで
🎵G.パイジエッロ:歌劇《哲学者気取り》より「主よ幸いあれ」
モーツァルトの変奏曲で良く聴く あの主題の原曲。初めてその原曲(アリア)を聴きました。
そして弥勒さんの第1声で もう魅了。前から4列目という、このホールでは後ろ側で聴くと、ホール全体から音が降り注いでくるように聴こえてきました。そのバックにフォルテピアノがキラキラと見え隠れする様。
「ここがちょっぴり違うじゃん」とか比較をしながら聴いていたら、あっという間に終わってしまった。歌に集中すれば良かった…と反省。
そして 次はやっぱり
🎵W.A.モーツァルト:パイジエッロの歌劇《哲学者気取り》より「主よ幸いあれ」による6つの変奏曲 へ長調 K.398
原曲のあとに聴くので理解が深まります。
小倉さんの演奏は 流麗で歌心いっぱい。しかし、ひとつひとつの変奏を とても端正に形作ったという感じ。
続いて
🎵W.A.モーツァルト:ボードロンの歌劇《セヴィリャの理髪師》より「私はランドール」による12の変奏曲 変ホ長調 K.354
ここは『セヴィリアの理髪師』繋がりのプログラミング。
この大規模な変奏曲では 小倉さんはモデレーターを積極的に加え、フォルテピアノの共振をも意図的に作ったのか、ファゴットペダルのような音まで聴こえてくる音色の七変化。この大きな表現は パイジェッロの変奏曲のあとで、とても効果的に感じました。
次に『セヴィリア…』を受けて
🎵G.パイジエッロ:歌劇《セヴィリャの理髪師》より序曲~「その時が近づいています」~「私の名前を知りたければ」
原曲を知っている私には、フォルテピアノでの序曲はもう一歩 ダイナミックさに欠ける(ppが出せない)のが残念。しかし 小倉さんのレクチャーを受けての、クレシェンドの魅力を伝えるには必要不可欠な選曲でした。
続く『その時が…』のアリアはオペラでは序曲に続く曲。序曲から休まずに演奏しても良かったと思ったのは私だけ?
ここで弥勒さんのお話(レクチャー)が入りました。その内容は『モーツァルトはラテンの音楽だ!』ということを、魔笛とコシの中の曲を例にお話しされました。もう、目から鱗って感じの 興味深いお話でした。
次の『私の名前を…』のアリアは 台本上ではモーツァルトの変奏曲の『私はランドール』と同じところ。モーツァルトの方は 歌詞の冒頭をタイトルにしなかったので、名が違うとのこと。
『私の名前を…』は第1幕で伯爵の歌うセレナードでした。弥勒さんの甘い声は このような曲にピッタリ。お話では、本来、伯爵がギターを弾きながら歌うので…と、もしや弥勒さんが!と思ったのですが、それはなし。それより私は、このセレナード、オペラの最後の場面では、伯爵のあとに窓でロジーナが歌い始めるや、突然窓が閉められて突然終わるので、もしや小倉さん 歌っちゃうのかな~とか思っていたのですが、それはやっぱりありませんでした。伯爵の歌の最後のところで静かに閉じられました。
弥勒さんが出られるので 何をさせるかと期待しちゃう私がいました。
休憩のあとは
🎵W.A.モーツァルト:「クローエに」K.524~「夕べの想い」K.523~「春への憧れ」K.596
『クローエに』と『春への憧れ』は音楽の授業を受け持った時に 歌った曲。特に『クローエに』はカウンターテナーで歌ったので、今日の弥勒さんの表情豊かな歌唱が聴けて感激。というか、私は撃沈💣💥 そして『春への憧れ』は、私は日本語で歌ったので撃沈はされなかったものの、ここでは小倉さんのフォルテピアノの絡みがとってもおしゃれでワクワクしちゃいました。こんな伴奏で歌っていたら 思わず跳びはねたくなっちゃうという様。笑顔いっぱいにさせてくれる小倉さんの伴奏が冴えた『春への憧れ』でした。
続いては
🎵G.パイジエッロ:6つのソナタ:第3番ト長調、第6番 変ホ長調
この6つのソナタ集は、本来 ヴァイオリン助奏つきの作品とのこと。単一楽章からできていて、小倉さんいわく「ソナタ形式というより オペラのアリアのよう」
ト長調は絵画的な、オーケストラを聴いているような音楽(演奏)で一気に魅了されました。冒頭の主題は ホルンの響きそのもの。そのあとも弦や木管の音が聴こえてきました(オペラアリアは…)。
第6番も色彩鮮やかな曲で とても愉しく聴けました。
この作品集は、ぜひ ヴァイオリンなしで全曲聴きたいなぁ~と。
そして最後は
🎵W.A.モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》より序曲(C.G.ネーフェ編曲)~「自分で自分がわからない」~「恋とはどんなものかしら」
ネーフェ編曲の序曲は、ピアノ伴奏のフィガロで聴く序曲とはちょっぴり異なっていて、ちょっぴり違和感があるものの、その違いを楽しむことはしっかりとできました。
序曲のあと、小倉さんが後ろを向いて帽子を被ると 弥勒さんが登場。寸劇仕立てで ケルビーノの2曲が歌われました。やはり弥勒さんは女声の曲が一番。
ケルビーノを弥勒さんで観たいです!
絶対に女声よりいい!
弥勒さんの素敵な歌唱も加わり、大満足の今日の演奏会。普通ならレポートもここで締めちゃうのですが、今日は もう一言。
恒例のアンコール。次回の作曲家の紹介。
🎵E.T.A.ホフマン:『ウンディーネ』からのアリア
これが実に心に響く素敵な曲で、本公演を彼方に持ち去ってしまうくらい。特に歌のかげて揺れるフォルテピアノが絶品。ホフマンは名前を知ってはいるものの、1枚もCDを持っていない(はず)。素敵なオマケをいただいた気分になりました。
弥勒さんの強靭で弾力のあるビロードのような声にフォルテピアノの優しい音色がピッタリ。歌唱の箇所でフォルテピアノがしっかりとバックにはまっていたのが素晴らしかったです。
今日は小倉さんのこのシリーズのCDの先行販売と弥勒さんの興味深い本の販売がありました。
サイン会します の言葉に釣られて、両方ともお買い上げ。どちらも一目惚れだったので、サインまでしてもらって、さらにテンション上がって帰ることができました。



