古楽の興Ⅲロバート・ヒル チェンバロ リサイタル:サルビアホール | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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今日は横浜市内の区民ホール。その中でも抜群のコンサート回転率を誇る鶴見駅前に作られた真新しいホール。

古楽の興Ⅲ
ロバート・ヒル チェンバロ リサイタル

19時~
鶴見区民文化センター サルビアホール 音楽ホール


チェンバロ:ロバート・ヒル

HPの謳い文句は
『内容 中世、ルネサンス、バロック、古典派時代の音楽に焦点を当て、当時のオリジナルな奏法・楽器を使用し、響きが自慢の音楽ホールで堪能するシリーズ「古楽の興(たのしみ)」
第3回目はアメリカのチェンバロ奏者ロバート・ヒル氏を迎え、バッハの大作・ゴルトベルク変奏曲をお届けいたします』
他のホールでの公演でも『古楽界最後の大物が初来日!』などと紹介もされている方。
私にとってのヒルさんは、数多あるハイドンの鍵盤独奏曲の音盤のうち、最も私のお気に入りの(あくまで『お気に入り』であって 名演とか一般的なオススメとは違う)1枚がヒルさんのもの。初期の作品を中心に入れたチェンバロを弾いたもので、ストップを駆使しての音色の万華鏡のような演奏が、めちゃ楽しい。そんなわけで、ちょっぴり苦手なゴールトベルクのプログラムだったけど、行くことにしました。

発売当日に予約をしたので、前から2列目。しかし、ど真ん中だったので、鍵盤が見えない位置で、残念。もう少し左に寄れば良かった…

🎵J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲
最初に派手なアルペジオの小さな曲が演奏されたあと、ちょっぴりの間を置いて、ゴールトベルクが開始されました。

主題のゆっくりなこと!テンポの遅さにビックリです。反復はほとんどの変奏で行われました。
第1変奏に入ると、テンポの遅さは感じられなくなりました。
第3変奏は速いと感じるテンポ。反復後の装飾もしっかりと聴きとれました。
第5変奏の後半はとても綺麗な音で聴けました。主に左手が上の鍵盤。右手が下の鍵盤。
第7変奏は反復のあとでの音色の変化がとても巧み。
第9変奏では反復後の装飾が自然でとても綺麗に聴こえてきました。
第10変奏のフゲッタでは、3本弦を力強く弾いての音づくりは熱い音楽になっていました。
第11変奏は舞踏会の音楽。上下の鍵盤の音色の違いが効果的。そして後半の部分でのテンポの揺れを大きくして感情豊かな音楽づくり。
第13変奏は前後半とも反復省略でした。
第14変奏は左手が上、右手が下が基本で、腕の交差があるので 音色の変化がとっても楽しめました。
第15変奏も反復なし。遅めのテンポでしっとりとした音楽が聴けました。

後半になる『序曲』と書かれた第16変奏は堂々の開始のあと、後半になると音色は変えずに大きくテンポアップさせて集中させられました。
第18変奏は 瑞々しいリズムの明るい音楽。
第19変奏は上下の鍵盤の音色の微妙な変化がとっても綺麗で、まるで高原を流れる風の様。
第20変奏は左手が上、右手が下が基本で、ここでも腕の交差による音色のクロスが面白く聴けました。
第21変奏はとっても重々しい音楽。後半は反復後にストップを変えて音色の変化が良かったです。
第23変奏は羽のある虫が風の中をくるくると舞うよう。とっても綺麗な音楽が聴けました。後半はリズムがしっとりと楔を打つような堅実なつくり。
第24変奏で初めてリュートストップを選択。しかし反復後は3本の弦を弾く厚い音との対比がくっきり。そして後半は反復後にリュートストップに戻る シンメトリー的なスタイル。
第25変奏も上の鍵盤がリュートストップのまま。ここでは左手が上の鍵盤。右手が下の鍵盤という、大きな音色の違いが同時に楽しめました。
狩の音楽を彷彿とさせる第26変奏と思っていた私でしたが、ヒルさんのつくる音楽は狩の香りには程遠い音楽。「なんで狩の音楽にならないのだろう…」と思っていたら 次の変奏になってしまいました。
第28変奏は速めのテンポで32分音符の目まぐるしい回転で 目が(耳が)回りそう。
最後の第30変奏は端正で堂々とした音楽。後半は装飾をはっきりと入れて、そして反復後はテンポをぐっと落としながら、アリアに戻りました。
ダ・カーポのアリアは遅めのテンポでしたが、冒頭よりは多少速め。冬の広葉樹林のような枝がくっきりと見えるような、無駄のない音。16分音符の動きがひとつひとつしっかりと耳に届くようになるや、最後の音となり、80分を超えるゴールトベルクが閉じられました。


終演後、サイン会。私のお気に入りのハイドンのCDを持参したので、それにサインをいただきました。ヒルさん、ジャケットにサインを…と申し上げたのですが、CDまでサインを書いてくださいました。


ちょっぴり苦手なはずのゴールトベルク変奏曲、ヒルさんの色彩豊かな音楽は、一睡もする余地のない音楽でした。もしかして、寝れないゴールトベルクって、ダメな演奏?