北とぴあ国際音楽祭2017:オペラ《オルフェオとエウリディーチェ》 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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今日は東京でオペラ。
午前中のJAL(767)で伊丹から羽田へ。関空からLCCも考えたのですが、旅館の朝食が慌ただしくなるのと、空港まで(から)の交通費を考えると それほどの費用対効果も得られないので。

今日は亀山上空までは雲が無く、京都盆地とびわ湖がくっきり。


続いて信楽の町、そして飛行機の真下に、関西本線の加太越えの線路を確認しながら、亀山まで。
あとは駿河湾上空で、彼方に並ぶ、中央アルプス、南アルプス、富士山と、はるか彼方の雲と見間違うかのような北アルプス。ともに雪をかぶって冬支度を完了していました。

↑雲の彼方:左端 中央ア、中央 南ア、翼の下 富士山

今日のフライトは東向きに着陸したので 迂回もなく、60分を切る、あっという間。これに慣れると 18切符で大阪~横浜がとても辛く感じてしまう。

羽田からは日曜日のお得な切符と一区間の乗り越し料金で、モノレールまわりで王子へ。


北とぴあ国際音楽祭2017
オペラ《オルフェオとエウリディーチェ》

14時~
北とぴあ さくらホール


🎵クリストフ・ヴィリバルト・グルック作曲 オペラ《オルフェオとエウリディーチェ》(1774年パリ初演版)
[セミ・ステージ形式/全3幕/フランス語上演・日本語字幕付] 
 
指揮:寺神戸 亮 
振付:中原 麻里  
合唱・管弦楽:レ・ボレアード(オリジナル楽器使用) 
ダンサー:ラ ダンス コントラステ

オルフェオ:マティアス・ヴィダル(Ten.)
エウリディーチェ:ストゥキン・エルベルス(Sop.)
アムール:鈴木 美紀子(Sop.)


今日は豪華なパリ版ということで、期待大。最後のバレエ音楽が全曲聴けるっていうのがいい。今まで観た公演では、精霊の踊りくらいは入れるものの、他の曲はカットしちゃいますから。そして実演となればバレエ。踊りが観れるとなれば外せません。それとオルフェオを男声歌手が歌うのもいい。唯一、フランス語への抵抗感だけが私の問題。ホール前にはゲネプロの写真の展示がありました。



レ・ボレアードといえば古楽の精鋭。
器楽ではコンミスが戸田薫さん。他はBCJやOLCのメンバー中心。第2幕で活躍するハープは先日の相模湖で素晴らしい演奏を聴かせてくれた 西山まりえさん。そしてフラウト・トラヴェルソは前田リリ子さんと菊池かなえさん。さらにチェンバロは上尾直毅さん 等々。
合唱にも名倉さんや広瀬さんなど、ラ・フォンテヴェルデでご活躍の方のお顔がチラホラ。
豪華な布陣。

先日、お友達とオペラの話しになり、
「グルックの『有名な』オルフェオとエウリディーチェが、それほどまでに良い作品か?
観ればみるほど、そのストーリー(オペラに切り取られた部分)の面白さの欠如が明らかに感じられ、今では 演出と歌手の両輪が揃わないと、いとま簡単に崩れ去る…」
と、まとめた次第。
なにしろこのストーリー、開始の段階でエウリディーチェは死んでしまっているのですから!
つまり、オペラのストーリーはというと
『オルフェオが妻を探しに天国まで行き、妻を呼び戻して地上に戻る途中で振り返ってしまい、サヨウナラ』
ってこと。
舞台の大部分がオルフェオの1人舞台なんですから!

舞台上にはオーケストラが通常配置。舞台手前のスペースで歌手が演じ、装置は箱が2つだけ。あとは背景のスクリーンと舞台上に吊るした布へのイメージ映像の投影による演出がありました。

1幕と2幕を続けて上演、2幕と3幕の間に休憩が入る組み方。

序曲から、照明は落とされ 背後のスライドに模様が投影されました。オケは軽めの古楽器らしい音色が私好み。グルックの音楽にピッタリ。管楽器も最後まで安定した演奏が聴けました。私的には この序曲の間に、エウリディーチェが死んでしまう過程のパントマイムを挟むと、エウリディーチェが第2幕後半まで出番が無いということもなくなるので、良いと思っているけど、今回はもちろん違っていて、音楽に集中(映像チラチラでしたが…)の舞台。

第1幕冒頭の合唱が舞台裏から歌いながら登場。パートが混合で舞台上手と下手から出てきても、安定したバランスとまとまった音色は さすが!そしてそこにエウリディーチェが運ばれて来るという舞台。合唱の男性が8人で、それも寝台などはなくエルベルスさんを素手で支えて、は見ていてちょっぴりハラハラ。まあ、エウリディーチェが登場したから良しとしよう。
その後は(目がチカチカしたという人がいても何も言えないような)映像とバレエを組み合わせながらの効果的な舞台。
暗転して一呼吸で続けられた第2幕も同様。
第2場の天国(冥界)の場面からはバレエの見せ場。有名な『精霊の踊り』以降は歌つきのバレエと言ってもいいくらい。そこでスクリーンの奥にエウリディーチェを歩かせて影を映し出したのは良かったと思いました。そしてオルフェオとエウリディーチェが再会のあとにバレエ音楽が挿入されたいました。これはパリ版のオリジナルの通りなのでしょうか?
第3幕は前半はオルフェオとエウリディーチェの緊張した場面。それが18世紀のヨーロッパで最も有名なアリア『エウリディーチェを失って』と続く。グルックの作品では、そのあとアモーレが現れてエウリディーチェを生き返らせて、ストーリー的には終了。今回、そこで歌われた三重唱は知らない曲でした(ウィーン版だと『愛は勝つ』の旋律がここで出て来る)。
そのあとにバレエ音楽が2曲挿入されました。私のお気に入りの音盤では4曲入ってるのですが…(後述)
そして最後の『愛は勝つ』のソロと合唱は、聴き慣れたウィーン版と違っていて違和感バシバシ。それは合唱の冒頭のフレーズ(2小節)が繰り返し2回出て来るという座りの悪さ。私には勢いが削がれるような気がしました。

歌唱では、3年前の『プラテ』で好演したヴィダルさんが 今回も安定した見事な歌唱を聴かせてくれました。第1幕のパリ版のために挿入された幕切れのアリアの技巧と『エウリディーチェを失って』の慟哭の演技は圧巻でした。
エルベルスさんは正面でないと声が通り難かった感じが残念。背が高くてスタイルも良いのですが、ヒールのある靴を履いていたこともあり、ヴィダルさんより背が高くなって、手を引かれるにはちょっぴり違和感。そのは演出が手を入れても良かったのでは、と思いました。
アモーレの鈴木さんは、歌は少ないものの、古楽の歌手らしい清楚な声が良かったです。ちょっぴりホールを響かすまではいかなかった感じもしましたが、最後の『愛は勝つ』のソロではしっかりとした存在感の歌が聴けました。また 歌わない時にも 舞台後方に立って2人の行動を見守るような演出もあり、存在感のあるアモーレ。ちょっぴり演技に硬さがあったのはご愛敬のうちかもしれません(鈴木さんは2012年の『病は気から』での好演が忘れられません!)。
一番危惧したフランス語に対する抵抗感はまったく感じませんでした。言葉より音楽中心で聴いたみたいです。

最後に!
バレエ入りのオペラの習慣が無い(それどころか古典派のオペラすら上演されない)日本では、今回の最終幕の組み立てが難しかったように感じられました。
今回は、エウリディーチェが甦ったあと、バレエ音楽が2曲。私は4曲来ると思っていたので「えっ!」と思いました。前述のようにそれは第2幕に移動したのかはわかりませんが、もし4曲だと大団円のあと、バレエで舞台進行が冗長ととらえられそうな感じもあったので、これで良かったのかもしれません。私的にはバレエ音楽4曲のうち3曲を地元のバレエ教室の子どもに踊らせて最後の締め…という公共施設らしい手も。ただ1日目公演が金曜日のマチネだと子どもは使えないか…

実はこの演出で失敗だと思ったのは、そのあと。
バレエのあとの『愛は勝つ』のソロと合唱で締めた!と思ったら、指揮の寺神戸さんは拍手を抑えるかのような姿勢のあと、バレエ音楽を続けたわけで…
わたしは「残りの2曲を踊って『愛は勝つ』だ」と納得したら、何と…

カーテンコール

呆気にとられる客席。合唱が並んだところで、寺神戸さんが客席に拍手を促すということに。

最後に めちゃシラケちゃいました。

ストーリー的には、エウリディーチェが甦って大団円なのに、そのあとバレエを入れたから、もう 何がなんだか、つまりいつまで続くのか、わからない状態が続いたわけで…


本文中で音盤のことを書いたので関連の追伸
私はパリ版のCDを1種類持っているハズですが、フランス語の違和感で しっかり聴いてないままです。そのため曲の構成については思い込みのところがあると思います。その点についてはご勘弁ください。
なお、私の好きな(ウィーン版でもバレエ音楽入れちゃってることがあるので、私は普通に耳にしていた、それなので実演でカットされると残念でならなかった、その原因の)音盤は、 E.ルカーチ指揮、ハンガリー国立室内歌劇場。他にはマッケラス指揮がお気に入り。DVDではコンチェルト・アルモニコの古楽器(録音バランス悪いですが)盤は装飾を加えた歌唱がいい。
それとイチオシが東京藝大の、森鴎外訳の日本語版のDVD(スコアも持っています)。


そんなこだわりの、ストーリーはオルフェオ中心の台本失敗のつまらないオペラだと言うくせに、めちゃ気になるCD,DVD合わせて10組以上は持っているオペラ、なんだかんだと言いつつも楽しめました。
それはなんといっても『愛は勝つ』が私の知っているオペラの締めとしては、フィデリオと双璧をなす 絶対に感動しちゃう曲なので♥️