日本センチュリー交響楽団 いずみ定期演奏会 No.37 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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旅と鉄道と温泉が大好き。
そして、クラシック音楽も好きなもんだから、音楽会を理由に、日本国内を旅しています。
音楽と旅を中心に、日記を書いていきます!

昨日の前半の日記からの続きです。
ですから『今日』とは12月8日のことになります。


神戸電鉄、今日は新開地から三田まで完乗。三田~有馬口に乗ったのは十数年振り。それも三田から神戸方面なので、逆向きも制覇!
有馬口と岡場で電車を待っていてビックリは、神鉄の電車接近音楽がメンデルスゾーンの『イタリア交響曲』の冒頭だったこと!何でだ? 私的には『青葉の笛』が最適だと思うのですが…
そして、三田から大阪までの福知山線。三田~西宮名塩間も乗った記憶の無い区間。ちょっぴり鉄分補給ができました。

旅館に荷物を置いて、環状線で大阪城公園へ。環状線から旧国電の車両は無くなったかの様相。


日本センチュリー交響楽団 いずみ定期演奏会 No.37

19時~
いずみホール

指揮:飯森 範親
ハープ:吉野 直子


関西のお友だちの他、今日は(も?)首都圏から ハイドン愛好家が集まって来られて、私のまわりは盛況。

座席は定期会員なので、いつもの前寄り中央の好位置。

最初のハイドンは
🎵ハイドン:交響曲 第41番 ハ長調 Hob.Ⅰ:41
今日の3曲のハイドンの交響曲の中で、最も楽しみに待っていた作品。あだ名も無く、当たり障りのないハ長調という、一見 つまらなそうな作品に見えるものの、フルート協奏曲の第2楽章、ホルンの妙技が聴ける第3楽章のトリオなど、魅力満載。
ヴァイオリン各6の両翼配置のチェンバロ(P.エスカンデさん)入り。コンマスは荒井さん。お隣に松浦さん(めちゃお洒落な衣装にも目が釘付け!)という強力体制。
フォルテの一撃で始まる第1楽章。開始早々、第1ヴァイオリンの音程が不安定。提示部が終わる頃には安定したものの、ちょっぴりハラハラ。
そんな中、アーティキュレーションの違う部分があり、ビックリ。フィルハルモニア版のスコアの脚注に示されているものを選択。とても新鮮に聴けました。ところが再現部で、その箇所にオーボエが乗るのですが、オーボエには脚注のアーティキュレーションが施されていないため、そこでは聴き慣れた旋律で再現されるという面白い結果が。統一がとれていないととるか、表現が広がったととるか、ですね。聴き慣れた私はもちろん後者で、新たな発見ができて嬉しかったです。
弱音器つきのヴァイオリンの曇った音で開始されるアンダンテの第2楽章。ヴァイオリンの主題が落ち着くと、フルートがヒバリの囀りのように 天高く駆け巡る。ヴァイオリンとフルートの対比が鮮やかな第2楽章。ここでは反復後の変化が存分に楽しめました。それはヴァイオリンに装飾を積極的に加えたり、弦の合奏をピチカートに変えるなど、強弱以外の、もしかするとやり過ぎとも指摘されそうなところまで、積極的に! 本当に聴き応えのある楽章でした。
インパクトのある2つの楽章のあとのメヌエットは、なんとも田舎くさいというか、実用的な舞曲的な3つの拍をしっかり踏みしめるような重心の低い音楽。
それに対してトリオは、オーボエとホルンのユニゾン。私的には狩の音楽的にホルンを存分に吹かした音楽を期待したのですが、飯森さんはホルンをオーボエの支えとしての役割に置いた音楽づくり。反復後にホルンを炸裂か?ということもありませんでした。しかし、ここでは弦を各1(ソリ)にしての室内楽的アンサンブルに衣替えさせました。そのため素晴らしい音色の変化と緻密な音楽に変わりました。
終楽章は3連符が常に弦が刻み続ける、極限のせわしなさをもつ プレストの第4楽章。大きな表情が生命力豊かな 充実した音楽として示されました。
この交響曲ではソナタ形式の後半も反復しましたが、長いとは感じさせない見事な音楽作り。ハイドンの音楽を手の内に入れている感もあり、頭が下がりました。
2009年のブリュッヘンのハイドンと並ぶ、否、それを超える、過去屈指ののハイドンの交響曲の実演、間違いなし!

続いて吉野さんのハープのソロで
🎵アルブレヒツベルガー:パルティータ ヘ長調
プログラム発表時から、この作品ってハープの作品? それとも他の協奏曲作品のハープ編曲? とわけわからん状態で、ホールに入った 謎だらけの作品。
ヴァイオリン4,ヴィオラ3,チェロとコントラバス1,ホルン2にチェンバロという身軽な編成。

第1楽章はソナタ形式で前後ともに反復つき。
ヴァイオリンとハープがともに旋律を演奏しちゃったりと、協奏曲というよりも、室内楽的な様相。吉野さん(飯森さんの指揮?)もソロ的に先頭に立つようなバランスではなく、旋律を彩るひとつの楽器の様。ただ反復のあとでは ハープが装飾を多彩に加えたので、そこではヴァイオリンから一気に抜け出した華麗さも見えたのですが、そこまで協奏曲的な優位さを置くこともなく…
しかし、そのようなちょっぴり中途半端な様相が 古典派の協奏曲の曙の時期の音楽としてはピッタリ。
第2楽章はハープのソロから開始。そして主導の協奏曲的楽章。冒頭のハープのソロの主題が グルックの『エウリディーチェを失って』に似だ出だし。古典派の音楽に数多の引用のあの旋律。ここでもそれに似たフレーズに惹かれてしまう。そんな旋律とハープの音色に聴き惚れていると、伴奏のヴィオラに飯森さんは 大きな表情づけを施したりと、しっかりとした呼吸と陰影が加えられました。
続いてはかわいいメヌエットとトリオ。ハープとオケの会話が聴こえる音楽。小さいながらもハープがソロとアンサンブルの両方の役割で音楽を作る様子が楽しく聴けました。
ソナタ形式の速い終楽章は、前の3つの楽章の集大成。しっかりと後半も反復しましたが、飽きることなく聴けたのは、吉野さんのメリハリのある音楽だからこそ!
滅多に聴けない作品を紹介してくれて、感謝です。

吉野さんのアンコールは
🎵フランシスク作曲(グランジャニー編曲):ブランル
最初はロセッティの作品か?とも思ったのですが、トリオがイギリス民謡みたいに聞こえたので「さて誰だ?」 でも、とっても親しみやすい音楽はアンコールにピッタリでした。
掲示された作曲家を見て調べたところ、フランスの作曲家の様。ってことはフランス民謡からの作品なのでしょうか? 耳に優しい素敵な曲でした。

休憩のあとは
🎵ハイドン:交響曲 第52番 ハ短調 Hob.Ⅰ:52
今日のハイドンの3曲の交響曲のうち、最も存在感のある 評価も高いのが、このハ短調の作品。
ヴァイオリンを各8に増強しての大きな編成。

第1楽章冒頭の主題から 荒々しさ炸裂。それに対して 人をおちょくっているかのような軽妙洒脱な第2主題(第80番ほどではないですが)の対比が ハイドンらしい。ここでの飯森さんの音楽は 荒々しさとの対比を鮮やかに出すことよりも、バランスの取れた古典的なハイドンを求めるというような姿勢が感じ取れました。反復も後半を省略。
第2楽章は第1ヴァイオリンのみに弱音器をつけての演奏。しかし弱音の繊細さを前に出すというよりは、しっかりとした音で、弱音器つきの第1ヴァイオリンと、弱音器なしの第2ヴァイオリンとの音色の違う音を絡ませながらの音楽づくりの様。ここでは反復を前後半とも省略しました。
ハ短調の厳しい様相を呈するメヌエット。そしてメヌエットの主題を長調にしたトリオ。
速めのテンポでメヌエットとトリオを勢いよく通した演奏が見事。とってもスッキリとして爽快。唯一、このテンポで一気に通すならば、後半のメヌエットも反復をして、バランスの良い(シンメトリーの取れた)形で聴きたかった。
第1楽章と同様、こちらは休符の効果的利用により 緊張感を高めたプレストの第4楽章。

ちょっぴり残念だったのは第1ホルンの超高音。特に速いテンポの楽章で、音を伸ばすところで、苦しそうだったこと! これを聴くと、このような扱いの作品には ナチュラルホルンの方が適しているのではないかと思ってしまう。
ソナタ形式の反復も適度に省略し、長くならないような配慮もありましたが、第41番のような才気煥発の発見が無かったのは残念。

今日の締めは
🎵ハイドン:交響曲 第43番 変ホ長調 Hob.Ⅰ:43 「マーキュリー」
今日のハイドンの交響曲のなかで、あだ名があるため、もしかすると一般に最も知られているのは、この作品なのかもしれない。しかし、3作品の中では最も穏やかで外見的な特徴的な目立たないのがこの作品のような気もする。
ヴァイオリンを各6に戻しての演奏でした。

ハイドン屈指の長い旋律の主題の第1楽章。変ホ長調の穏やかな色合いは 波に乗って漕ぎ出した舟の上の様。ただここの長~いフレーズの途中で 意図的にブレスをはっきりと取ったのは、新鮮な印象というよりは 流れを絶ちきったかの様。そこはちょっぴり違和感。しかしその他は流麗な しなやかな音楽。ハイドンの緻密な構成の音楽を堪能。ソナタ形式の後半の反復は省略。
第2楽章も第1ヴァイオリンのみ弱音器をつけての演奏(第43番、第52番の交響曲ともにフィルハルモニア版では第2ヴァイオリンも弱音器指定になっています)。ここでは52番のように強めに弾かせるというよりは、繊細に 弱音器の音色を生かした感じもしたので、第2ヴァイオリンにも弱音器をつけても良かったのでは、とも感じましたが、これはヴィオラ、バスとともに動く箇所が多いからとの判断だったのでしょうか。
ドレスの裾が舞うような、舞踏会を彷彿とさせる、メヌエット。トリオも同じ変ホ長調なので対比は少ないので、そこでの対比が欲しいところ。ところが飯森さんは、第52番と同じように、一気に演奏しちゃいました。もしかすると トリオはどこから? と思っているうちに終わっちゃった…という人もいたのでは、と思うようなまとめ方。もしかしてそれを狙っていたのなら、頭が下がります。私的には、トリオでテンポを動かしたり、編成を変えたり(ソリにしたり)と 煙に巻くより、はっきり提示しても良かったのでは、と思いました。
終楽章も長い旋律の主題の穏やかな音楽。
ここでは飯森さんは長い音符で音を伸ばすフレーズで、それまでのテンポとは区分して、ゆったりと聴かせてくれました。これが表情に深みを加えていました。特にゴーダの174~186小節のところは絶品でした。

今日は前半の2曲は、今年のベストにも成りうる考えられた名演奏と未知なる作品との出会いを与えてくれた、稀有な瞬間。それに対して 後半は、堅実な 今まで語られてきたハイドン像の枠から はみ出さない範囲に収まる演奏という、2つのパターンのハイドンが楽しめました。私的には圧倒的に前者の表現を希望しちゃうのですが…

最後の曲が終わってのカーテンコールの時、飯森さんが最初にホルンのところへ行き、大健闘の水無瀬さんを立たせた時に 水無瀬さんがバランスを崩してしまい、ハッとさせられる場面がありました。ハイドンの高音域のホルン演奏はめちゃ大変なはず。音程は不安定になりますが、ナチュラルホルンの方が身体への負担が少ないのでは?と、思ってしまいました。そして もしかすると第52番の交響曲での不安定さは体調が万全ではなかったのかもしれません。
ちょうど旅館から出る直前、明日予定していた音楽会の主催者から電話が入り、体調不良で演奏会が中止になったとの報告を受けたばかり。オケの、特に管楽器奏者は絶対に体調不良で休めませんからね。

そんなこともあり、今日の大阪の夜は寒かったので、外に立っていて風邪を引いたら大変なので、今夜は飯森さんのお見送りをせずに解散。
その後は首都圏組で、遅い夕食というか、飲み会。新世界に行ってフグの予定が、あの有名店は閉店時間が早かったので 串カツ屋さんに変更。
飲んで、食べて、話して…
締めに頼んだアイスがやたらおしゃれでビックリしちゃいました。


で、日記が翌朝となった次第です。