神戸市室内合奏団 第141回定期公演:ハイドンのふたつの時代からー疾風と怒涛から古典派の確立へー | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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秋晴れ、小春日和の大阪☀️
朝、時間があったので、散髪✂️
JR~阪神と乗り継いで、三宮へ。
お友達と待ち合わせて、昼食のあとは…


神戸市室内合奏団 定期演奏会
「ハイドンのふたつの時代からー疾風と怒涛から古典派の確立へー」

14時~
神戸文化ホール・中ホール

指揮及びチェロ独奏:鈴木秀美
神戸市室内合奏団


今日の公演は指定席。前から2列目中央、秀美さんの真正面。

最初の曲は
🎵L. ボッケリーニ:チェロ協奏曲第7番 ト長調 G.480
ボッケリーニは12曲の素敵なチェロ協奏曲を残してはいるものの、実演で聴く機会は本当に稀。古典派様式の弦楽の協奏曲としては、ヴィオッティのヴァイオリン協奏曲とともに、もっと演奏会で聴きたい作品のひとつ。
この作品は60年代に『ボッケリーニのチェロ協奏曲』として流布していた変ロ長調の第9番の協奏曲。その第2楽章が実はこの第2楽章と差し替えられていたのいう、LP時代の人は、第2楽章だけ知っていると思われる作品(当時はハイドンのハ長調の協奏曲が見つかっていなかったので、ニ長調の協奏曲に、この『ボッケリーニのチェロ協奏曲』がカップリングされたLPが多かった)。

オケの編成は4-4-2-1-1という小編成の両翼配置。秀美さんは暗譜で、チェロのオケのパートも弾きながらの演奏。
やわらかで弾力のある秀美さんのチェロは絶品。それはソロはもちろん、見事だったのは、チェロのトップで弾いていた伝田さんとのリピエノの部分。ふくよかで、ヴァイオリンの旋律が色彩豊かに変身。
第1楽章の明るさいっぱいの音楽は、太陽の光があふれていました。
それに対して、(有名な?)第2楽章は、冬の曇り空のような寂しさあふれる音楽。チェロの歌が存分に聴けました。
そして晴れ渡った第3楽章。チェロとオケの呼吸が見事。
第1ヴァイオリンが元気いっぱいで、時にチェロのソロを消しちゃう勢いのところがあったのは、ご愛敬。モダン楽器4本の威力の大きさを感じました。唯一、第2ヴァイオリンが第1ヴァイオリンと離れて対旋律を演奏する場面で、その立体的な構造が 明確には聴こえてこなかったところが残念でした。
ガット弦の秀美さんのチェロも安定。今まで聴いた秀美さんのチェロで、屈指の演奏が聴けました。

あとは秀美さんは指揮に専念
 🎵F. J. ハイドン:交響曲 第44番 ホ短調 Hob.I:44「悲しみ」
中期の有名な作品。寒色系のハイドンの魅力を凝縮したかのような音楽。ヴァイオリン各6に編成を増やしての演奏になりました。
実演でハラハラしてしまうのが、高音域でのロングトーンを担当するホルン。そのつながりで第2ホルンの低音域のロングトーンも耳についてしまう。今日はそのホルンが パシッ!と決めてくれました。オケの上に綺麗な服を纏わせた様な真っ直ぐな素直な音は安心して聴けました。
第1楽章では、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの掛け合いが鮮やか(チェロ協奏曲の不完全燃焼はここで払拭)。
第2楽章のメヌエットでは、細かなアクセントなどの豊かなニュアンスに、感服。
アダージョの第3楽章は、弱音器をつけた籠ったヴァイオリンの音色と、第2ヴァイオリンを中心とした3連符での呼吸を感じられるような温かい音が素敵でした。
そして3つの楽章の特質を集大成したかのような終楽章は圧巻でした。

休憩時には、東京の拝鈍亭でご一緒になる方お2人を加えての歓談。そちらの方々は お互いに
「まさかここでお会いするとは!」

休憩のあとは
🎵F. J. ハイドン:交響曲 第87番 イ長調 Hob.I:87
パリセットの6曲の中で、最もコンパクトでタイトルも無い、地味な作品。地味というと私の好奇心が最大限に首を持ち上げるわけで、ここでもその法則が当てはまり、この曲ではいろいろこだわりを多く持っている次第。
ここでは編成が8-8-6-4-2と増強?されました。
この作品では、エネルギッシュで熱い音楽が聴けました。ボッセ先生の時に聴いていた、どのような作品でも優しさいっぱいの穏やかな演奏とは、一見対照的な音楽が生まれました。
第1楽章の展開部の最後、第1ヴァイオリンがソリスティックに動くところ、特に2小節の休符の箇所。今回の秀美さんは その休符を長めに、というより 完全に止めて、オケのメンバーの集中力を最大限に 再現部に突き進むところが最高。反復前後での長さがちがっていました。私的にはその休符のあと、再現部に駆け上がっていくところの第1ヴァイオリンの↑レミファソラシ・↓ミレドシラソ のところはソロでやって欲しかったかも。
美しさあふれる第2楽章。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンとの16分音符を通しての会話が絶妙だったのはもちろん、素晴らしいホルンに木管楽器が加わったアンサンブルがこの楽章の聴きどころ。絶品! 唯一、私的には管楽器のアンサンブルに第1ヴァイオリンだけが弦で絡んでくる、87~90小節。ここのヴァイオリンは合奏ではなくてソロがいい。
明るく楽しいメヌエット。ここではトリオはなんと言ってもオーボエのソロの妙技を聴きたかったのですが、つまり反復を生かした演奏を期待したのですが、それは無し。楽譜通りで残念。
お茶目な終楽章。ここで秀美さんは仕掛けましたが、その前に。弦が全音符2つ伸ばす箇所が提示部と再現部であるのですが、そこでのビブラートの無い 真っ直ぐな音にゾクゾクしちゃいました。今回、ボッケリーニから オケはビブラートは控え目な素直な音づくりが気持ち良く聴けましたが、この最後のところが一番印象に残りました。
そして秀美さんの真骨頂!『ハイドンの意図』を再現する試み。ここで大成功。
第4楽章のゴーダで2つのフェルマータの半終止。終わると見せかけて終わらない。そのあと一気に終わるわけですが、ハイドンは最後の音のあとに、1小節のフェルマータと反復記号つきの全休符小節を書いているのです。つまりこれは何を示しているかというと、そう、終わったと見せかけて 続けるという仕掛けとしか考えられません(これで満足いかないハイドンは交響曲第82番、そして交響曲第90番の仕掛けに突入するわけです)。今回はそこで見事に聴衆を引っ掛けました。終わったと思わせて拍手を誘いました。それも多くの方が参加するという『大成功!』反復後に秀美さんが「してやったり!」という表情で聴衆側を向いたところで、聴衆も「引っ掛かった」ということがわかる苦笑い。
楽しい演奏の締めとなりました。

大きな拍手に応えて、アンコールはあるだろうと思っていましたが、秀美さんはチェロを持ってきてのアンコール。
🎵ハイドン:交響曲第13番~第2楽章
チェロ協奏曲の様式で書かれているこの楽章。なんと、装飾を『これでもか!』というてんこ盛り。私的には 開いた口がふさがらない状態。
指揮をしたあとに この演奏は圧巻でした。

神戸市室内合奏団というと、やはりご健在の時に追いかけていたボッセ先生の ハイドンやクリスチャン バッハ(音楽)。今日のオケから出てくる音楽は、ボッセ先生とは一見対照的でしたが、どちらの音楽もハイドンに語らせるという、楽譜に敬意を払う姿勢は同じもの。「古典派の音楽を演奏させたら一番!」と思っていた神戸市室内合奏団に鈴木秀美さんの指揮は『間違いない』を通り越して『最高』でした。
そうしたら、アンコール前の秀美さんのお話で、「私は神戸市室内合奏団の創設時のチェリストでした」と。そういえば 秀美さんって神戸の出身でした。

終演後、秀美さんに気になったことを質問。実は今日のオケのチェロパート、1→3→4と人数が増えていったのですが、みな、エンドピン無しで演奏していたのです!モダン楽器の団体なのにみんなエンドピン無しで演奏しちゃうって、ビックリだったので、その件を訊くと
「昨日、伝田さんと飲んでて、エンドピン取ってやろうってことになった…」~本当に?
「飲むことは大切だ!」~これは本当かも!
「それで4人ともエンドピンなしで弾くことになった…」
ということ。凄いチェロ奏者の集まったオケだ!
ですから 豊かに変身したチェロの響きが堪能できました。

今日は、オケのホルンとチェロを聴けただけでも 神戸に行った価値有りでした。

ホールからお友だち(顔見知り)4人で出たあと、地下鉄組みと神戸駅組みに分かれて。私は神戸駅から新快速、大阪まわりで帰ります。