N響創立90周年記念 ベートーヴェン「第9」演奏会 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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冬至の今日は太陽の照射時間とは無関係に暖か!
スーツだけで出掛けようかとも思ったのですが、やっぱり12月だし、と カーディガンを中に着て出勤。昼間はそれでも暑かった

早めに仕事を上げて、渋谷へ。
青いライトに照らされた公園通りを上がっていけば、青の洞窟は大混雑。



N響創立90周年記念 ベートーヴェン「第9」演奏会

19時~
NHKホール



🎵ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
ソプラノ:シモーナ・シャトゥロヴァ
メゾ・ソプラノ:エリーザベト・クールマン
テノール:ホエル・プリエト
バス:パク・ジョンミン
合唱:東京オペラシンガーズ


HPに記された聴きどころ(樋口隆一)
~ドイツ音楽の真髄を究めた現代最高の《第9》を~
『今年の「N響第9」は名誉指揮者のブロムシュテットが指揮してくれる。創立90周年ならではの豪華企画だ。
《交響曲第9番「合唱つき」》は、ベートーヴェンの9つの交響曲の総決算であり、ブルックナー、マーラーにも大きな影響を与えた問題作だ。シラーの「歓喜に寄す」に基づく終楽章はもちろん感動的だが、ほんとうの聴きどころはその前提となる3つの楽章にある。宇宙的な広がりをもつ第1楽章、単純な動機の反復が驚くべき効果を上げる第2楽章、天国的なまでに美しい緩徐楽章。最近はこれらをあっさりと片付けて終楽章に突入する「モダン」な解釈がはやりだが、それでは《第9》の真髄は伝わらない。ひとつひとつの動機や主題の意味を味わい、壮大な構造物にまで織り上げてゆくベートーヴェンの音楽的思考を、人間的な共感を持ってつぶさにたどり、真摯な態度で音にしてゆく。ブロムシュテットこそはまさにそういう指揮者なのである。
もう30年ぐらい前の話だが、ブロムシュテットにインタビューをする機会があった。すると彼自身、牧師の子として生まれたこともあり、バッハは常に心のよりどころだと言っていた。事実、彼のバッハ、特に《ミサ曲ロ短調》の名演は記憶に新しい。ドレスデン国立歌劇場管弦楽団、ハンブルクの北ドイツ放送交響楽団、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のシェフを歴任した彼こそは、まさにドイツ音楽の本道を歩んできた最後の巨匠である。現代最高の《第9》を期待したい。』

N響の第9は80年代後半、毎年 初日に1階の一番前の補助席(P席)の中央で聴いていました。その中で最も印象に残っているのは、運命の第3楽章のリピートを復活させた楽譜を校訂して話題となった、P.ギュルケ氏の演奏会。ハイドンの交響曲第46番を最初に演奏しましたからねぇ~←そっちです!

あとは誰の第9を聴いたか…ってちょっぴり記憶が怪しい。
そんなN響第9。四半世紀振りに初日、1階前方中央に戻ってきました。まぁ、私の年末お決まりの曲といえば、クリスマスオラトリオ→メサイア→第9と3番手で、更に小編成が好きな私は 大阪のテレマン室内管弦楽団のみがお気に入り。ということで、来年以降 N響を聴き続けることはまず無いかも。今回は この12月にN響桂冠名誉指揮者となった ブロムシュテットさんが指揮されるので 行くことにした次第。
今月のN響はデュトワさんとブロムシュテットさんという、私の好きなお2人の揃い踏み。
で、座席は一番前の補助席(P席、今日は1列作られていました)ではなく、本当の1列、それもど真ん中~よーく見たら 1月の小澤さんの音楽会よりチケット代が高いじゃん! やっぱり来年は行けないなぁ~

そしてズバリ、第9だけというプログラム。

配られたプログラムにブロムシュテットさんが「作曲家の意図を尊重すべき」「ベートーヴェンの思いを忠実に伝えるべき」と語っていました。
両翼配置でチェロとコントラバスを下手側。ソリストは後方の合唱の前列。合唱は前方に女声、下手にソプラノ、上手にアルト、女声の後方に男声で、下手 ソプラノの後ろにバス、上手 アルトの後ろにテノールが並びました。

もうすぐ90歳になられるブロムシュテットさん、指揮台に立ったまま。元気いっぱいの指揮の姿。
ベーレンライター新版を使用。もちろんそこで指示された反復を含めたアーティキュレーションまで忠実なまでの演奏となりました。
スコア(全音のミニチュア)は持参しましたが、1列目と幅が狭いNHKホールの座席ということもあり、鞄の中から出しませんでした。

第1楽章、ここでは両翼配置の効果がてきめん。これほどまで上手い第2ヴァイオリンを聴いたことがありません!冒頭の6連符から完璧。それをしっかりと彩っていくのですから、惚れ惚れして然り。明るい音楽づくりで、音の繋がり、楽器の受け渡し、がとても明瞭。スコアを見なくても 構成の隅々までわかる演奏、その中で第2ヴァイオリンを第1ヴァイオリンと遜色のない位置で弾かせる演奏は素敵すぎました。

第2楽章は、第1楽章に比べるとそれほどきわだった特質は見いだせなかった感はありましたが、安定したリズムと その積み重ねを爽やかに響かせたのが とても気持ち良かったです。
特にトリオの後半、反復の無い箇所での まるで初夏の湿原の中を流れるような、空気と雲が心地よい湿り気を運ぶ、風を感じることができました。

第3楽章は 思っていたより速いテンポでビックリ。しかし 聴きはじめれば そんなことはまったく意識からは飛んでしまい、たゆとう音の流れにどっぷりと浸かることができました。ここでも第2ヴァイオリンの効果的な表情づけが生きて、グッと音楽に深みが加わりました。

それに続く第4楽章は 第3楽章から休みを置かずに開始。それは予想通りの爽やかな音楽が響きました。
第1楽章から入場していた声楽陣は文句なし!バリトンのソロは冒頭から柔らかな声。最後の vollereの低いラの音もしっかり出しきりました。
その後の歓喜の主題、ブロムシュテットさんの述べているように 楽譜通りの歌唱(最初のFreudeの合唱はバスのみで、そのあとのDeine Zauber…はソプラノ合唱は休み)。ソリストは私の席ではソプラノが細い感じがしたのですが(3階まで届いたかな?)、その清楚な声は私好み。今日の唯一の乱れ(第3楽章の冒頭のファゴットは致し方ない)を感じたのは第3節のソロのバックのホルン。リズムを建て直せなかったのが残念。雄大なvor Gottは聴いていて窒息しそうでした。
アンダンテの部分では 合唱を軸にした大きな音楽が見事。もちろん合唱団のブロムシュテットさんにピッタリとついていく歌唱があってこそ。
アダージョの最後、ppでのソプラノの安定感はさすがとしかいえません!
続く二重フーガでは男声の一体感のある合唱が見事。飛び出して聴こえることのない安定した合唱。
最後のプレスティッシモの部分。速すぎない快速さは聴いていてとっても安心できるテンポでした。つまり、合唱に余裕を感じられるテンポと大きさ。そしてそこではソリストも立ったまま、ソプラノとアルトは合唱とともに歌っていました(テノールは見えず、バスは歌っていませんでした)。ここは私の拘りのところでしたので、立たせておくこと(歌はソリストに任せたのでしょう)は バロック方面から見た古典派の音楽づくりでは自然なことですね。
私ならさらに マエストーゾのpの、Elysiumの、ところをソロはfで歌わせたいと思うのですが、そうなればベートーヴェンの意図を歪曲させることになりますね…

フライングブラボーにちょっぴりムッときましが、それもわかる素晴らしい第9が聴けました。

終演後、団員を立たせてビックリ。今日はヴィオラのトップは川本嘉子さんでした!
それと ちょっぴり気になったのは、川本さんのお隣、ヴィオラのトップサイドの方のヴィオラになにやら黒いデザインがされている楽器。もうひとつ、チェロのトップサイドの向山さんの運指がなかなか独特だったこと。
舞台を目で見る愉しさも満喫できた音楽会となりました。

今日は完売、満席のNHKホールでした。

またまた青の洞窟を通って原宿から品川まわりで帰りました。