ひろしまオペラルネッサンス2015 モーツァルト『フィガロの結婚』 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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旅と鉄道と温泉が大好き。
そして、クラシック音楽も好きなもんだから、音楽会を理由に、日本国内を旅しています。
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朝風呂と温かい朝食が嬉しい天王寺の旅館からスタート。

昨日、難波で買った切符で自由席より安く指定席で広島へ。この移動で指定席に拘った理由は 乗る列車。『のぞみ』ではなく『みずほ』



九州新幹線のN700系車両。指定席は2×2列なので、そこがポイント!木目調の落ち着いた車内に、100系のグリーン車並のシートはゆったりでした。



新神戸から西の新幹線は、90年代に学会で岡山まで乗ったはずなのですが、まったく記憶になく、それ以前は高校の修学旅行で小郡まで乗っただけ。新神戸~新大阪間も上りの夜間でしたから、実質初乗りみたいでワクワクでした。
鹿児島中央行き のアナウンスを聞いて ゆったりシートに座れば、クセになりそう。大阪帰りに鹿児島で温泉に入って帰るなんて、なかなかじゃん!

と、バカなことを考えていれば 広島はあっという間。

広島駅からは路面電車で原爆ドームまで。
原爆ドームから平和記念公園を縦断してホールへ。ここはいつ来たっけ? 帰って来たようなホッとした感じが広島にありました。46都道府県がこんな感じになるのはいつ?

お昼は広島なので、お好み焼き。

お腹をいっぱいにして入ったのが
JMSアステールプラザ大ホール

14時~
ひろしまオペラルネッサンス2015
🎵モーツァルト『フィガロの結婚』



指揮:川瀬賢太郎
演出:岩田達宗
管弦楽:広島交響楽団

伯爵:山岸玲音
伯爵夫人:柳清美
スザンナ:古瀬まきを
フィガロ:山本徹也
ケルビーノ:小林理恵
マルチェッリーナ:浦池佑佳
バルトロ:藤井信行
バジーリオ:升島唯博
ドン・クルツィオ:柏原保典
バルバリーナ:吉村華織
アントーニオ:楠木稔
村の女性Ⅰ:山中優美
村の女性Ⅱ:新家華織
ひろしまオペラルネッサンス合唱団

今日の座席は大きな段差がある前から5列目の左サイドの中央。舞台より高い位置で斜めに舞台を観れる、絶好の場所。なんとここが上から3ランク目のB席なんて あり得ない!私的にはあと2つ隣まではS席相当でも十分。4000円とS席の半額で観ることができました。

今日の歌手ではスザンナの古瀬さんが2009年に横浜でやはりフィガロてスザンナの好演が印象に残っている他は、初めて聴く人ばかり。明日とのダブルキャストの公演ですがこちらを選んだのは、古瀬さんをもう一度聴いてみたいから。

ほぼ満席のホールが暗くなると
物凄いスピードの序曲から始まりました。スピードが速いっていうと 単調なのかと思わせますが、ハッとするようなpを組み込み、ワクワクするクレシェンドやディミヌェンドを織り交ぜていました。たかが序曲って勢いだけの演奏ではありませんでした。

第1幕に入ってからも歌は軽快なテンポで小気味良く進んでいきました。特徴的だったのがバジリオが部屋のまわりに張りついて、中の様子に聞き耳を立てているという設定。話の流れが自然になり、これは好き嫌いを超えて評価に値する演出だと思いました。
歌では特にケルビーノのアリアの速さが ちょっぴり歌詞が流れてしまうくらいのスピード違反レベル!
今回は演出が、その主張をとても鋭く明解に描いており わかりやすかったです。第1幕ではフィガロが村娘を連れて入ってくる場面。その前にフィガロはスザンナから初めて伯爵の狙いを聞かされた驚きがはっきりと演じられていました。そこから この場面が村娘を味方につけて動員したというのが明確になりました。そこでの描き方は伯爵に対する顔つきが敵意満々であまりに強烈!音楽の柔らかさとはあまりに対照的で ゾッとするくらいでした。

今回は、折々でこの伯爵に敵意ありありの演出がなかなか光りました。

第1幕から第2幕へは休憩無し。蝶々のアリアが始まると幕が降ろされ、幕の前に3人が残るかたちを取りました。

そして少しの間を置いて第2幕
ここでは夫人にフィガロが手紙の計画を話す場面で、夫人がはっきりと首を横に振り、その計画に反対する意志を明確に出したのに、スザンナとフィガロがどんどん進めてしまう、というスタート。
その後、ケルビーノが入ってきてからの夫人の態度は それほどケルビーノに関心を抱く素振りはなし。
これで夫人の位置が明確にわかりました。
川瀬さんの音楽も この幕では 速めですが 想定内の範囲でした。

休憩が入り 第3幕。
ここでは 今まで観たフィガロの中で最も凍ってしまいそうな演出に驚くことに!
婚礼の場面、婚礼の白いヴェールを伯爵がスザンナに被せるまでの村人の冷酷なまでの伯爵に対する眼。フィガロの伯爵に対する忌み嫌うような態度は どうにも上下関係が完全に崩壊しているようにしか感じられないくらいの、一触即発にならないのが不思議なくらいのを設定でした!

そして 説得力のあったのが、第3幕から第4幕への移行。
伯爵がスザンナから手紙を受け取り、ピンをバルバリーナに渡すまでを婚礼の場面内でハッキリと見せるのは 近頃観たフィガロでも何度かありましたが、今回は婚礼が終わると、そのまま バルバリーナが舞台(婚礼の広間)に残る設定。間髪を入れずにそこでピンを探すカヴァティーナを歌い、戻って来たフィガロとマルチェリーナがピンを渡す。そのままフィガロが嘆き、女性不信になり退出。
そこでマルチェリーナのアリアが始まると同時に幕が降ろされ、マルチェリーナが幕の前で歌い、その間に舞台転換を行い、庭の場面~つまり第4幕~に続いて、となりました。
第3幕と第4幕の間で休憩を置かない演出では、その間の舞台転換で 暗い中で静かにして待つのに比べれば より流れが自然になりました。

ですので、庭の場面はフィガロが男性陣を引き連れて来るところからになりました。
今回はマルチェリーナとバジリオのアリアも省略されることなく歌われました。ウィーン国立歌劇場が省略するからと、日本も真似て省略するという、ウィーン至上主義みたいなところは払拭され、演出に合わせて曲や曲順を選択するようになってきたようですね。

第3幕から第4幕にかけては オケも絶好調!歌にピッタリと合わせてきました。そんな中 今日の歌の白眉はスザンナの第4幕のアリア「恋人よここに」遅めのテンポで情感豊かな歌唱は素晴らしかったです。
そして大詰め、伯爵が謝る場面(♪コンテッサ ペルドーノ…)。川瀬さんはその前に、何と6~10秒くらいの凍りつくような間を入れたのです。その効果たるや凄かった! まわりに集まった人びとは これから何が起きるのか?という緊張感がビシビシ。音楽が始まり、ペルドーノと歌われるや 回りの人びとが「あり得ない! 」という驚きの態度に!
伯爵が謝ることが どれほどの事なのか!
が明確に伝わる演技(演出)が見事でした。
その場面では 舞台の上の丸い舞台には フィガロ、スザンナ、それにバルトロなどの上の階級の人達がいて、その左右のひとつ低い段のところにケルビーノとバルバリーナ、アントニオという階級差。そのような中で伯爵が謝る!
この時代のこの場面がどれだけ革命的なことであるかを 見事に描き切った舞台になりました。

今日のキャストはスザンナの古瀬さん以外は みな広島県在住、出身の歌手でした。古瀬さんが歌唱においては頭ひとつ抜け出た存在でしたが、演技はみな素晴らしい自然な動きで その性格が伝わってきました。
もう一歩だったのは歌唱。音がぶら下がる場面や歌の最初でテンポが安定しなかったのがこれからの課題でしょう。
ちょっぴり歌でハラハラする時に 全身でリズムや音のコントロールを見事に行った 川瀬さんの指揮は賞賛に値するのではないでしょうか?

年に数回ずつ観ているような『フィガロ』ですが、広島でハッとさせられる演出の舞台に出逢えたことは 嬉しすぎる誤算でした。

ホテルに向かう途中、夕暮れの平和記念公園と原爆ドームには、自然に手を合わせてしまう力が感じられました。





今夜は2食つきの大浴場のあるホテル。夕食はお昼に続いて お好み焼き。



今日は新幹線で前のお兄さんにおじさん(別々の)が 広島到着前に脱ぎ出してビックリするや、広島カープと阪神タイガースのユニフォームへの着替え。真っ赤なカープ色で迎えられた広島は とても充実しました。