今日は男性不妊について書きたいわけではなくて、不妊治療における男性の立ち位置について、お話したいと思います。

 

「不妊治療は男性と女性とそれぞれに原因があるので2人でするものです」というのは、その通りで何も間違っていない、しかし、原因が男性にあろうとなかろうと、治療回数や身体的負担という意味での主役は圧倒的に女性です。採卵周期は月経開始から採卵後診察までの来院は平均5回程度、移植周期も4~5回の来院が必要です。不公平とか色々思う方もおられるでしょうけど、これはもう性差なんでどうすることもできないし、割り切っていただくしかないです。

 

じゃあ男性はどうすべきか。やる気を出して、「今度の通院日はお休みだから一緒についていくよ」と言ったところで、「クリニック混んでるし、最近インフルエンザも流行ってるし、来ても何もすることないから、別にいい」などとけんもほろろに断れてしまった男性もいることでしょう。

 

帰宅した奥様が通院についてお話することが色々あっても、かろうじて半分くらいは分かるけど、「どう思う?」などと言われて気の利いたコメントをできず、「任せるよ」と失言に近い発言をしてムっとされたことがある男性も多いはず。

 

ストレスを抱えながら不妊治療をする女性の夫としてできることは、治療に対する理解しようとする姿勢と、ねぎらおうとする気持ちです。

 

「今度の通院日はお休みだから一緒についていくよ」でも不合格ではないんだけど、「自分としては、都合が合うから治療についていきたい気持ちがあるんだけど、どうかな」とお伺いを立てたほうが、ついてきて欲しい場合でも、本当はついてきてほしくない場合でも、どちらの返事でも雰囲気を乱さずに済むし、相手の立場や気持ちを尊重しているねぎらいの気持ちが伝わるかもしれません。

 

とりあえず、まずは通院日をしっかり把握しておくことです。といってもあまり詮索っぽい感じになっても監視されてるみたいで嫌がられる可能性もありますので、会話の流れの中でさりげなく次を把握しておき、帰宅したら、そんなに気の利いたことを言わなくても、「今日はお疲れ様、診察はどうだった?」と声をかけるだけでも、ちゃんと気にかけているよ、という姿勢が伝われば女性にとってとても心強いものではないかと思います。

 

帰宅した奥様が通院について色々話していて分からないことがある場合。まず大前提として、例えば日頃から、クリニックの説明書、同意書、資料などを持ち帰ってきたなと思ったら、一緒に読むようにすることが何より大切で、分からないことは当然誰にでもあるので、分からない内容は率先してインターネット等で調べてみるとか、そういうことを常にしていると奥様のお話も大体分かるとは思いますが、その上で、分からないことは、「そこがよく分からないんだけど、教えて欲しい」と素直に聞いた方が印象がいいことが多いと思います(そればっかりじゃだめですけど)。その上で分からないことは2人で調べよう、あるいは次回来院時の医師への質問事項としてメモしておこうとか、そのあたりの整理を一緒にやれる男性はパートナーとして心強いのではないかと思います。

 

「任せるよ」は、優しさのつもりで言ったことがあるとすれば要注意で、これ、イジワル翻訳すると、「俺よくわかんないから勝手にしていいよ」くらいに聞こえる可能性結構あります。2人で色々検討してメリットもデメリットも把握した上で、最終的な結論は女性の気持ちを尊重しますとかならOKですが、めんどくさいから投げちゃったみたいな印象を与えないように、十分注意して使わなければならない言葉です。

 

お酒、カフェイン、タバコ、肥満など。過度でなければ機会飲酒やカフェインは、思ったほど問題にならないことが多いですが程度問題、そして喫煙や肥満は精子によくありません。もちろん、実際にどの程度精子に対する影響があるかということも大切ですが、女性に比べて男性にできることは少ないのだから、せめて、日頃の生活習慣を見直し、少しでもいい状態で治療に臨めるように頑張ろうとする気持ちが、目に見える形で実行される、ということ自体がとても大切なことだと思います。「ちょっとくらいお酒飲んだって大丈夫だって」とかそういうことを平気で言っちゃうメンタリティに多くの女性はガッカリします。大丈夫か大丈夫じゃないとか、そういう話じゃないんですよね。それが、痛い注射して、通院頑張って、これから採卵しようとする私に対する態度として胸張れる姿勢ですか、という話なわけですから、別に、ちょっとくらいお酒飲んでも1日1杯くらいコーヒー飲んでもいいですけど、治療をないがしろにしている感じにならないように、注意というか配慮はしたほうがよいです。

 

 

最後に男性目線から。女性に言われて嫌な気持ちになる言葉ランキングの多分上位となるのが、「いいわよね、あなたは精子出すだけなんだから」というものです。この書き方は色々反論もあるでしょうけれども、女性が採卵するにあたっては、もちろん痛みもあるし、精神的身体的負担も大きいとは思いますが、基本寝ているだけでいいわけで、自分が何かをするわけではないし、採卵結果は採卵当日の自分の努力でどうにかなるものでもないです。でも、男性の場合、プレッシャーで射精できないこともあるし、そもそもクリニック初めてだったりすると、初めての場所でうまく出せるかなとか、所見悪かったらどうしよう、みたいな不安は大きい。しかも、精液所見は、もちろん不妊治療としてその精子が適切かどうかというのはもちろんあるけど、男性にとってはアイデンティティなので、色々な意味で一世一代の大勝負みたいな部分は恐らくあって、それを「精子出すだけ」と言われちゃうと、まあ間違ってはいないけど、男性心理としては傷つくかな。男性には男性なりの気苦労があるということも、ぜひ知っていていただければと思います。

 

ということで、今日は不妊治療と男性についてお話してみました。今夜はこの辺で。