続きはいつなんだ、と外来で質問が何人かありました。お待たせいたしました、今日は体外受精に入る前の事前検査・体質づくり(下)です。

 

よくある質問が、「サプリメントは何か飲んだ方がよいでしょうか」というものです。もちろん、不測のものがあれば補ったほうがよいことには異論はありませんが、自分にとって何が必要か、ということを知ることが大切です。

 

リプロダクションクリニックでは、卵の質や数については「血中DHEAs、テストステロン、ビタミンD、甲状腺」について採血をして不足分を補っています。

 

DHEAについては、加齢に伴い、男性ホルモンおよび女性ホルモンの原料であるDHEAが減少しますので、血中DHEASを採血で測定し、低下している方にはDHEAが有効です。血中DHEASについては年齢が高い方、AMHが低い方等が採血の対象であると思われがちですが、年齢が若かったり、AMHがむしろ高い方でもDHEASが低い方が散見されます。特に、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)=高AMH+肥満+男性ホルモン高値、のように思われがちですが、日本人のPCOSの方は、やせ型ですらっとしており、ニキビ等も少なくてむしろ肌がきれいであり、DHEASや男性ホルモンも実際低値という方が多いように思います。高AMH、低DHEASの場合にDHEAサプリを処方するかどうかは賛否もあると思いますが、当院では最初から処方することにしております。もしDHEAの内服に抵抗がある場合でも1回採卵して結果が悪ければ内服を検討したほうがよいでしょう。

 

なお、DHEAは薬局・薬店・インターネットでは購入できません。もし見かけたら違法かインチキです。類似品に、「7ケトDHEA」というサプリメントが発売されており、「DHEAの改良型」などと謳っているサイトもありますが、副作用が少ないというのが改良型と銘打つ根拠みたいなのですが、生殖以外の目的での効果はさておき、少なくとも卵の質や数という点では7ケトDHEAは全く意味がありません。ご注意ください。

 

DHEAは、妊娠中は避けるべきですので、一般不妊治療(タイミング、人工授精)中の方は、治療中はずっと内服し、月経が遅れて妊娠検査薬で陽性が出たら内服を中止してください。採卵を考えている場合、採卵準備中、採卵周期中および採卵後もできれば内服してください(次の治療が採卵か移植かはっきりしない間は飲んでいた方がよいです)。しかし、次回は移植すると決めた時点で中止し、引き続き妊娠後も中止したままにしてください。なお、移植周期中のDHEAの内服は賛否があり、内服してもよいのではないかとの意見もありますが、少なくとも妊娠判定が陽性に出た時点で必ず中止するようにお願いします。

 

なお、DHEAを内服するとテストステロンが上昇しますが、血中DHEASは正常値でテストステロンのみ低い場合は、テストステロンの筋肉注射を行うことがあります。以前は、テストステロンの内服薬があったのですが残念ながら発売中止になってしまい、今は筋肉注射だけになってしまいました。

 

 

次にビタミンD(25OH-ビタミン)についてです。ビタミンDは、多嚢胞性卵巣症候群、子宮筋腫、卵子の質、着床障害、妊娠中の合併症(妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、低体重児、早産、流産)と関連すると考えられています。以前は測定するクリニックは少数派でしたが、最近では比較的一般的に測定されるようになってきました。ビタミンDの血中濃度の解釈や、「十分 > 30 ng/mL、不十分 20~30 ng/mL、不足 < 20 ng/mL」であり、目標血中濃度は、30~50 ng/mLです。市販のサプリメントでは1錠が1000IU (=25μg)のものが多く、1日1錠内服を定めているものが多いですが、1日1000IUでは不足することが多く、4000IUくらい必要な方も少なくありません。ビタミンDは脂溶性ビタミンだからとり過ぎはよくない、とよく耳にするかもしれませんが、実際に相当量のビタミンDを内服しても血中濃度的にとり過ぎの域に達するのはなかなか大変です。しかし、やはり気にはなりますので、きちんと血中濃度を測定して、不足であることを確認してから、不足分を補う程度に内服していただくのが安心だと思います。なお、先ほどもお示しした通り、ビタミンDは脂溶性なので、食事量が少ない時ではなく、できるだけ食事量が多い(できれば最も油っぽい食事の時)に内服すると吸収がよいと思います。また、分けずに一度にまとめて摂取した方が吸収が良いです。

 

なお、サプリ以外でビタミンDを補う方法は食事と日光浴ですが、食事は光物の魚(いわゆる青魚)とキノコ(特にキクラゲ)であり、嫌いではなくても毎日食べる感じではありません。日光浴については、UVカットをしたら無意味です(紫外線を肌に直接浴びないと意味がない)。紫外線については季節や天気による変動も大きいほか、やっと涼しくなりましたが日照時間の長い昨今の夏に外で日光浴などしようものなら熱中症が心配です。できる範囲の努力はしてもよいと思いますが、基本的にはサプリメントで補うことをベースにするのがよいと思います。

 

 

甲状腺については、亢進症も低下症もよくありません。甲状腺については、以前の記事に詳しくまとめてありますので、こちらをご覧ください。

 

 

長くなりましたので、食生活、BMI、東洋医学、その他については、次の記事にします。