ここまでシリーズで流産についてお届けしてきました。

 

こんなことを書くと専門家の先生に怒られるでしょうけれども、筆者の感覚では、流産は発展途上というよりも発展が混沌としている状況ではないかと思います。


不妊症についても、もちろん様々な検査や治療・考え方がありますし、各クリニックが特色もありますが、ベース部分が極端に違うわけではありません。

 

しかし不育症については、より積極的に検査を行う考え方、そうではない考え方、検査の項目についてもバリエーションが多いです。「不育症については全て調べてもらいました」という表現をされる方も多いのですが、とりあえずどこで何を調べたのか確認しないと、書き方アレですが「え、それで全部?」というような場合も少なくないわけです。


検査内容についても、ことさら心理面を重視したり、"当院でしか行えない独自の検査"を実施している施設があったり。施設としても不妊症検査・治療と不育症検査・治療を一体的に行える施設と、それぞれ別々の施設とあります。

 

また、様々な理由で不育症治療を手厚く行いながら初期を乗り切り、産科に行ったら、そんな治療いらないんじゃないか、みたいなことを言われることもありますし、かなり大きな病院でもヘパリン療法をしている妊婦を受け入れてくれない産科もあります(病院の体制上の問題もあるから仕方がない部分もあります)。逆に、検査が手薄の施設で「異常なし」と言われたが、詳しく検査してみたら、大きな異常があった、なんてこともあります。こういうことが多いというわけではありませんが、こういうことがあると、ただでさえ不安定な妊婦さんの不安が大きくなってしまいます。

 

ところで、学術活動としては、従来は、日本産科婦人科学会や日本生殖医学会で学術的な交流が行われてきておりましたが(筆者も過去に日本生殖医学会で不育症スクリーニングについて発表しております)、やっと2019年になって「日本不育症学会」が立ち上げられました。第5回の今年はちょうど来週、北海道で開催されますが、28題ある一般演題のうち、2題がリプロダクションクリニック東京の常勤医師からの発表です。発表に先立って院内で予演会があり私も参加しましたが、とても興味深い発表です(今年の日本不育症学会のプログラムはこちら。→ https://www.c-linkage.co.jp/jsrpl05/pdf/jsrpl_5_program.pdf ) 


不育症検査は、不妊治療ほどではありませんが、項目によっては高額であり、できれば保険適応を望みたいところですが、そのためには標準治療が確立することが不可欠です。"独自の検査"も本当に必要なら広められるべきだし、コンセンサスが得られない程度のものなら淘汰されるべきです。こうした学会を通じて検査や治療が徐々に標準化されていくことを切に願います。

 

 

妊娠しないのもつらいけれども、妊娠したが流産してしまう体験は本当につらいものがあります。特に不妊治療の集大成としての妊娠が継続できなかった時のショックは正に青天の霹靂です。全年齢平均の一般的な流産率が15%、40代半ばだと半数近くが流産する現実を考えれば、特に女性年齢が35代後半以降の場合は、不妊治療の時から不妊から不育までカバーできる施設に通院するメリットは非常に大きなものがあります。当院では不育症検査・治療を目的とした初診も可能ですので、お困りの方はぜひ相談にいらしてください。

 

 

不育症検査の様々な細かい項目についての意義や治療については、あらためて特集することにして、今回はこれにてシリーズ完結したいと思います。お読みいただきありがとうございました。


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