今日からシリーズで流産について解説していきたいと思います。

 

流産の原因は、「胎児の染色体異常」と「母体の体質や環境要因など胎児の染色体異常以外の原因」に大別されます。女性年齢等にもよりますが、妊娠のおよそ15%に流産は起こり(20代だと流産率は10%程度、40代前半で40%程度)、また、流産のうち約8割は胎児の染色体異常によるもの(年齢とともに染色体異常による流産の割合は上昇)ですが、逆に言えば2割は胎児以外に原因があることになります。

 

流産は一定の頻度で誰にでも起こり得ることであり、それ自体特別なことではありません。妊娠の15%に流産が起こるということは、6回妊娠すると1回流産する程度の確率であるということですから、例えばサイコロを振って1が出る確率と同じということです。

 

サイコロを振って1回1が出ても、それは想定内のことです。2回連続1が出たらどうでしょうか。まあそんなこともあるでしょう。では、3回連続で1が出たら?珍しいなとは思うでしょうけれども、その時点で即、サイコロがインチキなんじゃないかと確信するほどではありません。では4回連続で1が出たら?さすがにちょっと1が出すぎだなと怪しくなってきます。5回連続で1が出る頃には、このサイコロは1ばっかり出ておかしいなという気持ちが強くなります。色々な感じ方はあるでしょうけれども、この感想が、そのまま流産にも当てはまるイメージです。つまり、3回連続で流産することは偶然でも十分に起こり得る、4~5回連続で流産することは多くはないが、単なる偶然で流産が続くことも、全くあり得ないわけではない、ということです。

 

しかし、漫然とサイコロを振り続けるのではなく、「このサイコロは、1が出やすいのではないか」と疑ってサイコロが1が出やすくなっているかどうかを調べたほうがよいですね。サイコロを振り続ければいずれ1以外が出ることが期待すればよいならそうするしかないし、サイコロが1が出やすい状況になってしまっているのであれば、何か対策をしてから次のサイコロを振った方がよいことになるわけです。

 

どの時点でサイコロの検証(不育の検証)をするべきかについては、本人の年齢(残された時間)、どの程度妊娠しやすいか、どの程度流産を避けたいか(誰だって流産は避けたいが、より深刻なストレスとなり次の流産を是が非でも避けなければならないのか、そこまではないのか、そのあたりは個人差があるはず)、夫婦の希望(どんどん検査を進めたい夫婦とそうでない夫婦がいる)など様々な要素によって方向性は異なってくると思いますが、どんな検査があって、検査の解釈や方針はどうするべきなのかについて解説していきます。

 

流産は非常に大きな喪失体験であり、不妊治療後の妊娠であれば、今までの不妊治療の集大成である妊娠が脆くも崩れ去ることを意味し、次の治療が必要になることを意味します。妊娠しないのもつらいですが、一度喜んでしまったがために、奈落の底に突き落とされる振り幅は倍増し、流産自体の肉体的負担のみならず、精神的喪失も相当なものです。

 

後述しますが、男性と女性ではだいぶ感じ方が違います。ジェンダーレスが話題の現代ですが、生殖医療や妊娠出産は究極のジェンダーであり、精子は生物学的な男性しか、卵子は生物学的な女性しか持ち得ず、正常妊娠は生物学的な女性しかすることはできません。特に妊娠後は、女性はお腹の中に赤ちゃんがいて様々な症状が出ますが、男性はもちろんそういったものはありませんので、不妊治療中に比べても、男性と女性で感じ方や考え方に差が広がってきます。本シリーズでは、そのあたりにも迫ってみようと思っております。

 

なお、流産・不育症の世界は、不妊症と比べても確立度が低い分野であり、様々な考え方があります。このブログはリプロダクションクリニックの公式ブログではありますが、当院の方針を軸にしながらも、できるだけ幅広い視野でお送りしたいと思います。

 

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