不妊治療においては使用する薬の種類や量が多い上、比較的薬が変わりやすいのが特徴です。治療を始める上でよくある質問に、「体への負担はどうか」「副作用はどうか」というものがあります。新しいことへの不安は当然のことなのですが、もちろんレアケースでは色々ないわけではないし、全く体への影響がゼロというわけにはいかないものの、大半の場合は、許容範囲内のものしかないと考えて大きく間違ってはいません。

 

薬の副作用に限らず、「治療の負担」「体への負担」は、大きく分けて「身体的負担(痛み、副作用)」「精神的負担」「経済的負担」に分けることができると思いますが、体質も感じ方もそれぞれなので単純な比較はできません。

 

たとえば、自己注射にしても、痛みも精神的負担もほとんどなくて楽勝です、という方もいれば、痛みも強いし怖いし、毎回決死の覚悟で泣きそうになりながらやってます!という方もおられます。このあたりって、他人の感じ方を想像しにくい部分です。自己注射が怖い方にとっては、自己注射なんて楽勝ですという方がいること自体思いもよらないことだし、信じられないことでしょう。一方、自己注射が楽勝な人にとっては、自己注射が怖い方は何がそんなに怖いのか理解できないことと思います。採卵も同様で、半分くらいの方は自ら「無麻酔でいいです」とおっしゃるのですが、何言ってんだとんでもない、寝ないことには採卵なんて絶対無理無理という方もおられます。

 

薬の副作用についても、薬使うの全然平気という方から、そもそも薬を使うこと自体抵抗があるとか、何使っても症状でやすいとか色々な方がおられます。

 

こういうのは、言ってもらわないと分かりませんので、どうぞ遠慮なく、怖いとか痛みに弱いとか薬使うの心配とか、率直にお申し出ください。どうしても必要なこともありますが、ある程度希望に沿ったプランを立てることが可能な場合もあります。

 

薬の副作用という点では、アレルギーも大きな課題ですが、残念ながら薬のアレルギーを事前に知る方法はありません。使ってみて症状が出て初めてアレルギーが分かりますので、何か心配な症状があればいつでもお電話でご相談ください。「こんな症状あるんですが、これは薬の副作用でしょうか、大丈夫でしょうか」という質問は毎日あります。実際には、大半の場合は「大したことないから様子を見てください」という返事になるのですが、中には、診察が必要だったり、薬の変更や中止が必要な場合もあります。ご自身では分からないでしょうから、心配な時はどうぞご連絡ください。

 

多数の薬剤を使用することによる肝機能や腎機能の影響は、なかなか予測が難しいです。基本的に薬剤による肝機能・腎機能の影響は不妊治療特有の問題ではなく、体質による個人差が非常に大きいからです。比較的肝障害等が起こる頻度や高めの薬剤とそうでない薬剤がありますが、高めといっても他と比較すればということであって絶対的な頻度が高いわけではありません。そのために、当院では周期ごとに術前検査として肝機能や腎機能のチェックを実施しております。

 

 

治療の負担といっても様々な側面があります。「感じ方の問題」という表現はあまり好きではありませんが、実際ににはそうした側面も色濃くあります。全く同じ治療をしても負担感が強い方、そうでない方、感じ方は実に様々です。しかし、漠然とした不安感の中で治療を進めているとますます負担感が増してきてしまいますから、できるだけ医師でも看護師でも、あるいはカウンセラーでもよいですので、心配なことはきちんと相談して解決していけるとよいのではないかと思います。

 

クリニックごとに説明ビデオや解説書を用意していれば、それらをよく見るなり読むなりして、治療内容をきちんと把握していることも大切なことです。もちろん、検査や治療内容について説明するのは私たちの責任ではありますが、受け身だけではなかなか知識や理解も増えてきません。ぜひクリニックが用意したものも積極的に利用して理解を深めてみてください。

 

当院の治療説明ビデオはこちら