胚移植のスケジュールにおいて、一度決定している移植日程を、あとから別の日に変更したい、というご希望や、あとから変更することはできるのか、というご相談を時々いただきます。今日はこれについてお話したいと思います。

 

【ホルモン補充周期の場合】

ホルモン補充周期の場合、移植日は、月経から〇日目、ということではなく黄体ホルモン製剤(当院の場合はルトラールやウトロゲスタン等)を始めてから、初期胚なら3日後、胚盤胞なら5日後になります(紛らわしいので着床の窓がズレているケースはここでは触れませんが、各論に相違はあるが総論としては同じです)。

 

例えば、月経開始が1月1日、受診日が1月15日だったとして、胚盤胞移植の場合、

受診当日の1月15日に黄体ホルモン開始→移植は1月20日

受診翌日の1月16日に黄体ホルモン開始→移植は1月21日

受診2日後の1月17日に黄体ホルモン開始→移植は1月22日

受診3日後の1月18日に黄体ホルモン開始→移植は1月23日

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となります。

 

黄体ホルモンを開始する前なら移植日の変更はできますが、一度黄体ホルモンを始めてしまったら、移植日程は前後いずれも移動不可となります。

 

例えば、1月15日に受診した結果、「1月16日黄体ホルモン開始、1月21日胚移植」に決定したとして、1月15日のうちなら、理論的には1月15日から黄体ホルモンを開始して胚移植日を1月20日にすることも、1月18日に黄体ホルモンを開始すいて1月23日にもできます。しかし、1月17日になってから、「やはり1月20日にしたい」と言われても、すでに1月16日から黄体ホルモンを始めてしまっていますから、移植日は変更できません。

 

時々、前日や当日に「体調不良なのでor都合が悪くなったので移植日をずらせませんか」というお電話がありますが、残念ながら直前の移植日変更はこうした理由で不可能となります。

 

あと、「1月16日の夜に黄体ホルモン開始、1月21日胚移植」の計画の方が、1月16日の夜に薬を使い忘れてしまったことに、1月17日の朝気づいて1月17日の朝、慌てて黄体ホルモンを使った上でお電話でお問い合わせいただくケースもあるのですが、この場合、黄体ホルモン開始から移植までの時間がどうあっても半日ずれてしまいます。半日くらいずれても問題ない、というケースならよいのですが、そのあたりを慎重に計算しなければならない方ですと、下手に朝、黄体ホルモンを開始してしまうと、その周期はキャンセルになってしまいます。この場合は、黄体ホルモンを開始しない状態でお電話いただければ、1日遅れ、あるいは2日遅れで夜から黄体ホルモンを始め、移植日も1日もしくは2日ずらして移植することで黄体ホルモン開始から移植までの時間を維持して移植することができます。

 

【自然周期の場合】

自然周期の場合、排卵日から初期胚なら3日後、胚盤胞なら5日後になります。自然に排卵した場合は、ずらすことは不可能ですが、hCG注射やブセレリン点鼻で排卵させ、排卵日を確定する場合、hCG注射やブセレリン点鼻を行う前であれば場合によっては移植日をずらすことができないこともありませんが、卵胞の大きさやホルモン値にもよります。またずらせても1日です。ホルモン補充周期に比べると日程調節性は大幅に劣ります。

 

移植日を変更すると、SEET法やその他オプションの実施日、判定日もおのずと変更になり、予約も全部取り直し、移植から判定日までの日数にも変更が生じれば、薬の処方日数にも増減が生じます(つまり、開始日、終了日、処方日数に変更が生じます)。こうした作業はミスの原因になりやすいので慎重に修正はしますが、患者さんにとっても混乱する原因になりますので、移植日はできる限りあとから変更が生じないように慎重に希望日程をお申し出いただけますと幸いです。また、それでもどうしても都合がつかなりそうな場合は、黄体ホルモンを開始する前にご連絡いただければと思います。

 

ということで、今回は「移植の日程を変えたい」についてお話いたしました。今日はこの辺で。