今日は11月29日、いい肉の日です。11月11日はポッキーの日、11月22日はいい夫婦の日ですが、外来でコメントして一番皆様の反応がいいのが、この日です。たいして面白いわけではないのでウケ狙いでドヤ顔で言うよりも、ニコリともせず真顔で急にと言うと、不意を突かれて笑っていただけることが多いと気づき、この言葉にはだいぶお世話になりました。ちなみに、「ポッキーの日」は、皆様、ほぼ無反応で、患者さんとクラークの冷ややかな視線がステレオで突き刺さり、寂しい思いをしました。

 

 

さて、いきなり脱線してしまいましたが、今日は体外受精における排卵誘発(卵巣刺激)において、卵胞の大きさが不ぞろいの場合がしばしばあります。こうした時はどうしたらよいのでしょうか。

 

不ぞろいといっても、色々な場合があります。何しろ、とても曖昧な言葉であり、患者さんから見れば不ぞろいだが医師からみればそんなこともないというケース、あるいは医師により不ぞろいだと感じたりそうではないと感じたり、あるいは同じ医師でも、日によって感じ方が違う場合もあり得ます(その場合は、どちらとも言える程度の不ぞろいさではないので、大した問題はないことになります)。

 

 (例1) 25/15/14/12/12/11/11/10mm

 このような場合は、主席卵胞(25mm)は無視して10~15mmだけを見て育てていきます。これが、32/22/21/20/19/18/18みたいになるまで待ってトリガーすれば、2番手以降はちゃんと採れ、成熟率も質も問題ありません。元25mm→32mmの主席は変性ないし取れずとなる可能性もありますが、先入観はいけません、意外と成熟卵が取れることもあります。

 (セオリー1) 2番手以降が比較的揃っていて数もある程度ある場合は、主席は無視する

 

 (例2) 25/24/15/14

 大きいものもあるが、小さいものもあるような場合です。この場合、大きなものを無視して小さいものだけを取りに行くにしては、大小のバランスが気になります。この場合は両方を取りに行くようにします。クロミッドは小卵胞を育てる傾向があることを利用し、例えば、クロミッド 1T+HMG 300IUで刺激している場合は、クロミッド増量(1T→2T)、HMG減量(300IU→150IU)をすると卵胞の大きさが揃うことが多いです。途中で刺激の量を変えると卵子がよくないなど言う先生がいますが、実際にそうなるというデータは一切存在しません。惑わされないようにしてください。 

 (セオリー2) クロミッドとHMGの割合を変更するとうまくいくことがある

 

 (例3) 25/10

 これば難しいですが、差が大きすぎる場合、両方を狙うのは難しいです。素直に25mmだけ狙いに行くか、1個は許容しがたいということであれば、その周期はキャンセルすることになります。その周期どうしても両方取りに行きたい場合は、例2の方法で粘ってみるのもありです。

 

 (例4) 25/10/10/9/8/7/5

 この場合は、25mmはhCGかブセレリンで排卵させてしまい、ランダムスタート(排卵後から卵巣刺激開始)をしたほうがうまくいきます。この場合のトリガーにhCGを使うのはよくないという意見もありますが、あまり根拠はありません。例えば、HMGフェリングなどはわざわざ薬液にhCGを添加しているくらいであり、卵巣刺激にlow dose hCG療法というものがあるくらいなので、hCGの注射が卵胞発育を大きく妨げることなど理論的にあり得ません。ただ、わざわざhCGを使う理由もあまりありませんので、ブセレリン等の点鼻薬の手持ちがあれば、わざわざ痛い思いをして注射をしなくても、点鼻で十分ではあります。あるいは、25mmをトリガーちゃんと打って1個だけ採卵した上で、duo刺激することもできます。しかし、小卵胞がこれだけたくさんある状況で、1個だけ25mmを取りに行くのは、医学的には全く問題ありませんが、コスパの面ではもう一歩という考え方はできます。

 

書きながら思ったのですが、もし採卵が保険適応になれば、「高額療養費」の対象となり、1か月あたりの支払金額に上限が設けられます。3割負担の自己負担額が一定金額を超えた場合、それ以上は請求されないという精度です。1か月に2回採卵したら、高額療養費をどうせ超えるから2回目の採卵は自己負担額実質タダになりますが、それでは反則ではみたいな話が出ると、月1回までという制約でも作られる可能性もあります。でも、自費なら助成金で月2回採卵できたのが、保険だと制約作られるなんておかしな話です。じゃあ同一月内2回目の採卵は自費でやればいいじゃんと思われるかもしれませんが、そうすると混合診療がどうだとかなると思うのですが、こんな細かい話まで煮詰めて色々スタートできるとは思えないし、そもそも保険診療は皆さまが思われているよりもはるかに不透明であり、同じことをしても加入保険(社保・国保・他)や地域によって保険通ったり通らなかったりなんて普通にありますので、月2回の採卵が通ったり通らなかったりということも起こり得るため、現場は大変気をもんでおります(これでもだいぶ抑え目に書いています。これ以上毒吐くとまずいのでこのくらいにします)。話がそれました。

 

 (その他)

様々なケースがあるので一概には言えませんが、1~2個だけ突出して育つ場合は、月経中のE2が高かったり、D3ですでに10mmくらいの卵胞が存在することが多いです。月経中のE2値は、FSH値と同じかそれ以上に重要です。例えば、FSHが20だろうが30だろうが、E2の値がある程度あれば、刺激して勝負かけても卵胞が育つことが多いし、FSHが正常値でも月経中のE2の値が低すぎるときは育ちが悪いことも散見されます(AMH、年齢、体質にもよりますので一概には言えません)。

 

例えば、月経中のE2が50以上あるような場合は、そもそも1個だけ突出して育つ可能性が大なのです。こういう時に、最初はクロミッドだけとか、HMG 150IUだけで行ったりすると不ぞろいになるリスクがあるので、AMHや年齢、治療歴的に問題がないようなら、CC 100mg+HMG 300IUあたりでガンガン刺激したほうが不ぞろいさはなくなります。

 

あるいは、それはちょっとという場合、いったん遅延法に逃げて卵胞を揃えることもできます。E2が低値の場合の遅延法はレルミナを3日に1回も飲めば十分ですが、E2が50以上の場合は、隔日で飲んだ方が安心です。セトロタイドによる遅延法も有効ですが、セトロは、高いし痛いし痒いので、遅延はレルミナで十分です。排卵抑制としてはレルミナは効きすぎることがあるので、当院では、よほど特殊な事情がない限り、排卵抑制としてのレルミナは避けるようにしています。

 

ということで、今日は卵胞の大きさが不ぞろいの時にどうするのか、についてお話してみました。

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