先天異常の、半分は原因不明、環境因子は5%、単一遺伝子異常(いわゆる遺伝病)が2割、染色体異常が25%と書きましたが、エコー以外の全ての検査は、ほとんどの場合、このたった4分の1の染色体異常にターゲットを当てています。

 

染色体には性染色体と常染色体があり、1番~22番までが2本ずつあるのが常染色体(合計44本)、性染色体は男性がXY、女性はXXです。

性染色体異常はターナー症候群(45,XO)、クラインフェルター症候群(47,XXY)、超女性(47,XXX)などがありますが、いずれも健康上決定的な影響を及ぼすわけではない上、エコーや検査では分からないことが多いのでここでは話題から除きます。

常染色体異常としては、13・18・21トリソミー以外の常染色体異常は出生困難であり、出生可能な主な常染色体異常には、13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーの3種類があります。

13トリソミーは全身に異常を伴う染色体異常です。「パトウ症候群」と呼ばれることもありますが一般的ではなく、「13トリソミー」と言われることが多いです。頭が小さい、口唇口蓋裂、手指の特徴的な屈曲などの外表奇形に加えて先天性心疾患や神経系異常の合併が多く、90%は1歳までに亡くなります。

18トリソミーは、やはり全身様々な合併症を起こす染色体異常で、「エドワーズ症候群」と呼ばれます。胎児期からの成長障害、先天性心疾患、肺呼吸器系障害、消化器合併症、泌尿器科合併症、筋骨格系合併症、難聴や悪性腫瘍など数多くの合併症を抱えて産まれてきます。こちらも90%は1歳までに亡くなります。

21トリソミーは、いわゆるダウン症(正確には「ダウン症候群」)、もちろん心疾患や消化管奇形などの合併症はあるものの、50~60歳まで生存することも可能です。

13トリソミーと18トリソミーは合併症が多いので、専門的な出生前診断を受けなくてもエコーで発見されることが多いこと、また出生したとしても早期に亡くなることが多く、わが子がもちろん亡くなるのはとてつもなく悲しいものではありますが、両親が長期にわたる介護を余儀なくされるわけではない、という点は決して無視することはできません。

一方で21トリソミーは長期生存が可能です。もちろんわが子が長生きすることはとても喜ばしいことです。しかし、綺麗事と現実は別です。普通の赤ちゃんを育てるのでさえ非常に大変なのに、比較できるものではありませんが、その何倍、あるいは何十倍大変な介護兼子育てを余儀なくされます。成人してもサポートが不可欠な状態であるにもかかわらず、ダウン症を出生する夫婦は高齢が多く、50~60年も育てることは不可能に近いです。

自分の身に降りかからないことは、机上の空論と綺麗事だけを言うこともできますが、いざ自分の身に降りかかった時、わが子を思いつつ、果たして責任をもってその子を育て上げることができるか、全く自信が持てずにどうしてよいか分からなくなってしまう混乱したお気持ちは察するに余りあります。

つまり、染色体異常の有無を見る検査と言えば、分かりやすく言えば21トリソミーかどうか分かることが重要になってくるわけです。


明日に続きます。