卵巣機能が低下している場合に何かできることはありませんか、という質問は毎日のように外来であります。様々な選択枝の中には、医学的根拠は比較的あるもの、乏しいもの、賛否があるもの、特定の人が推奨しているだけで賛否があるとさえ到底言えないようなもの、完全な詐欺デタラメ、など様々なものがあります。

 

各クリニックには各クリニック独自の推奨基準があることが通例ですが、クリニックごとに言うことが違う上、それに加えてサプリメント関連会社、漢方専門薬剤師、鍼灸師、その他自称専門家が、色々なことを吹き込んでくるので、患者側としては混乱するなと言う方が難しいと思います。

 

医師は、所属するクリニックとしての検査基準や治療基準が通常ありますので、比較的迷いなくクリニックの標準方針に沿って「これは意味がある」「これ意味ない」「飲んでもいいけど賛否両論」などとズバズバ言ったりするわけですが、いくつかのクリニックで自信満々に違うことを言われたりした日には何を信じてよいか分からないことでしょう。

 

リプロダクションクリニックでは、松林医師がブログで方針の根拠となる論文を多数紹介し、常に知識をアップデートしておりますが、大切なのは、ただ、〇〇という論文がある、とか、(日本であっても海外であっても)学会で△△と言われている、というだけでは説明として不十分で、その論文なり学会発表が信頼に値するものかどうか(いつどんなスタイルで研究したのか、症例数やデータの出し方)、他の報告ではどうなっているのか等まできちんと考えることが必要です。

 

さて、そんな中で比較的賛否が少ないのがDHEAです。DHEAは男性ホルモンの前駆体(原料)で、これが男性ホルモン・女性ホルモンへと変換されます。男性ホルモンというネーミングがよくないのですが、一定量の男性ホルモンは女性にとっても大切なものです。

 

内服の適応はクリニックによって異なります。①卵巣機能が低下していそうな方にはとりあえず内服を推奨する考え方、②血中テストステロン(男性ホルモン)を測定して低値なら処方する考え方、③血中DHEA-S濃度を測定して不足している方だけに補充する考え方の3通りが一般的で、以前は①の施設が多かったと思いますが、最近では③の施設が増えてきたのではないかと思います。リプロ東京では開院以来一貫して③の考え方です(②は少数派です)。

 

DHEA-Sは採血で簡単に調べることができ、結果は約1週間で判明します。AMHが良好ならDHEA-Sも良好なことが多いですが、低値な場合もあります。一方、AMHが良くない場合はたいていDHEA-Sは低値です。ただその程度は人それぞれであり、当院では程度により内服量の調整をしています。DHEA-Sは問題ないが男性ホルモンそのものが低値という場合は、男性ホルモンそのものを補充(テスチノンデポー)することもできます。

 

DHEAサプリは医師の指導のもと服用が原則であり、法令により通販での購入不可能となっていますので、クリニックで処方してもらうしかありません。7-keto-DHEAという似て非なるものを通販で買うことはできますが、7-keto-DHEAには不妊治療におけるDHEAとしての効果はありませんので十分ご注意ください。またDHEAサプリは男性が内服すると精液所見が悪化する恐れがありますので、こちらも十分ご注意ください。

 

また、DHEAは妊娠中したら必ず中止してください。移植周期中は、実際には飲んでしまっても問題はないようですが、クリニックの方針としては原則中止としています。

 

参考記事はこちらです

卵巣機能低下におけるDHEAの効能:メタアナリシス(松林ブログ)

7ケトDHEAはDHEAの代わりになるか?(松林ブログ)

☆DHEAは着床を促進する?(松林ブログ)