昨日は大原先生の記事をアップしたが、大原先生が書くといつもいっぱいいいね!が来る上、アクセスも増えるんですよね。いいなあ。「皆様の癒しはなんでしょうか」なんて書いてましたが、私たちの癒しは、大原先生、あなたです。これからもずっとずっと、笑顔が素敵で、いつも優しくて、でもすっごく頭が良くて、とっても頼りになる大原先生でいてくださいね!このくらい持ち上げておけば、また1か月後くらいにはもう1本記事かいてくれるかな。

 

 

では本題に。今日は昨日の続きでAMHや卵巣機能についてです。外来でよくある質問が、私は刺激したらどのくらい卵子が採れるのでしょうか、というものがありますので、それについてお話したいと思います。

 

こういう質問はとても困ります。というのは、卵巣の反応は、同じAMH/FSH/月経中小卵胞数であっても、患者さんによって、あるいは同じ患者さんでも周期によって結構異なるからです。質問にはちゃんと答えないといけないので、AMHが〇〇でFSHが△△であり、月経中の小卵胞数が□□個だから、☆個くらいですかねえ、などと言ってみるのだが、本音は、「やってみないと分からない」です。たとえば、40代のAMH 0.5程度のある患者さんだと、3~4個くらいが目標になるのだが、同じ方に同じ刺激しても1個だったり10個近く取れることもあります。毎月同じような刺激をしているのに、4個、9個、2個、5個などと採卵数が変遷するものです。

 

いつも反応があまりよくない方が、「今月は行ける!」となるのは、どんな時か。筆者の主観ですが、月経中のFSHは思ったほど関係なくて、エコーで5mm以上のはっきりした卵胞がいつもより多く見えている、月経中の(内因性)E2が30以上あると行けるかも、となります。

 

筆者の経験でもAMHが0.02未満でもFSHが100以上でも出産に至り得ます。低AMHや高FSHの方に、閉経ですなどと簡単に説明してしまう医師がおられるが、実にデリカシーがない。そもそも、閉経の定義は、「月経が来ない状態が12か月以上続いた時に、1年前を振り返って閉経とする」というものであり、あくまでも出血の有無に主眼を置いた観点であり、薬剤を用いれば生理を来させることはできるので、不妊治療をしている間は定義上閉経することは事実上ないのです(そもそも閉経と言う言葉は、お子様を特別望まない方が自然に月経がなくなる前後の更年期に入る前後で生理が止まったかどうかということを表現する言葉であり、生理を起こせば来てしまう生殖医療とは相入れない言葉です)。生殖医療ではこういった方々を早発閉経とは言わず、早発卵巣不全(POF、あるいはPOI)といいます。

 

AMHが高い場合はどうか。これこそどのくらい卵子が得られるのか予測困難です。重症OHSSのリスクは回避しなければならないが、刺激が弱すぎると期待を大きく下回る採卵数となってしまうので、そのあたりの見極めが重要となってきます。重症OHSSになるような場合は、グレードの良い胚盤胞が山のように凍結できることが多いのですが(採取できた卵子の数が多ければ多いほど、累積出産率は上昇するので安全が前提なら卵子が採れるのはよいことです)、一方でOHSSの重症度予測は難しく、予想より重症化することもあるので、安全を担保できる範囲内で数を目指していくということになります。

 

こういった、個人差、周期差に悩みながら、卵巣の声に耳を傾け続けるのが私たちに与えられた仕事であり、生き甲斐なのです。

では、今日はこの辺で。次回もお楽しみに!

 

 

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