こんばんは。今日は、月経中に、いわゆる「遺残卵胞」がある場合や、小卵胞数が少ない場合についてお話します。

 

遺残卵胞とは正式な用語ではなく俗語であり、様々な場合があり、1つの状態を示すわけではありません。そして、それぞれについて対応が異なることはすでに何度か解説してきました。(正式な用語ではないため、""あるいは「」で囲ったり、いわゆる、と断り書きをつけたりしています)

 

 

 

 

 

遺残と言いながら実はE2が高い場合は、残りではなく新しい卵胞で採卵可能(妊娠も可能)であることですが、それ以外の場合はE2は正常値であり、①黄体遺残 ②黄体化未破裂卵胞 ③機能性嚢胞(functional cyst) ④単純性嚢胞(simple cyst) の4通りがあります。

 

④は、「いつもみえるやつ」的な扱いなので取り扱いに苦慮することはありません。穿刺してつぶしてしまうか、無視して治療するか、あるいはあまりに大きければ腹腔鏡手術するかの三択です。

 

①~③については、無視してそのまま卵巣刺激を開始してもよいのですが、いくつもある場合、大きい場合は、小卵胞数が正確に診断しにくい可能性もあり、できることならもう少し正常に近い状態にしてから治療周期に入りたいと考える場合もあります。

 

ピルやカウフマン療法をしてもよいのですが、卵巣機能が低下している場合、ピル内服後あるいはカウフマン療法後のFSH上昇あるいは卵胞数低下を来す場合があり、そうでなくても1周期消費してしまうことになることが懸念として挙げられます。

 

こうした場合に有用なのが、遅延スタート法です。遅延スタート法は、もともとは卵胞数を増やす方法で、2014年の報告だと、卵巣反応低下例に対して遅延法を行った結果、卵胞数、採卵率、刺激日数、成熟卵数、受精率等のすべての項目で通常刺激を上回ったと報告されています。もちろん、すべての周期でうまくいくわけではありませんが、遅延スタート法の真骨頂は時間稼ぎであり、遅延している間に、cystの縮小、小卵胞(AF)数の改善などを期待します。また、経験上、しばしばFSHの低下(高FSHの正常化)も経験します。遅延は通常約1週間前後で、改善がみられなければ、そこの時点でリセットをかけてもよいので、デメリットもほとんどありません。

 

過去の論文報告ではガニレスト(GnRHアンタゴニスト注射、セトロタイドの仲間)を使っていますが、レルミナ(GnRHアゴニスト内服)でも内服方法を工夫は必要ですが同様の効果を得られます。内服のほうが経済的身体的負担が少ないので、当院の遅延法は現在は、ほとんどの場合内服で行っています。

 

卵胞が増えなかったり、cystが思ったより縮小しないこともありますが、それでもいつもより小卵胞数が少ない、あるいは月経中に、いわゆる「遺残卵胞」がって困った、という場合にやってみる価値はある方法です。

 

今日はこのへんで。次回もお楽しみに!