様々な治療の甲斐があって、無事に妊娠されたあとも、不安は尽きないことでしょう。エコーの時、診察の時に、皆様口々に「大丈夫ですか、順調ですか」とご質問されます。

 

実際には妊娠中の発育は個人差が大きいのですが、意外と知られていないのは、体外受精児の妊娠初期の発育は、自然妊娠のそれと比べて数日程度(筆者の個人的な主観だと3~4日)遅めに見えることが多いことです。体外受精児が小さいというよりも、週数算定上の差なのかも知れません。

 

ちゃんととったデータではありませんが、現場の実感としては、胎嚢(GS)の大きさは5週2日で3~4mmあれば十分順調であり、心拍は6週では見えないことは少なくなく、7週で初めて見えることも少なくありません。7週始めで頭殿長(CRL:赤ちゃんの座高)が数mmあって心拍が確認できれば十分に出産まで行ける可能性があります。

 

よくあるのが、妊娠アプリやインターネットサイトで、〇週〇日:現在〇mmくらいです、とか、患者さんのブログやインスタと比べて、「私の赤ちゃんは小さくないですか」というものですが、基本的には上記のライン程度に育っていれば問題はありません。更に言えば、仮に、やや小さめの発育だったとしても、いくら心配したところで、できることは何もありません。わが子の発育状況を心配する親心は当然ですが、妊娠初期とは言え個人差は少なくないため、情報をシャットアウトして信じてあげるのも大切なことです。

 

また、よく、CRL 〇mm ▲w△d のようにエコー写真に載っていることがありますが、これは、赤ちゃんが週数相当かどうかを見るための指標ですが、これも数日差し引いて考える必要があります。妊娠初期のこの表示機能は、どちらかといえば、排卵日が分からず予定日が確定しない妊婦さんの現在の週数や出産予定日を逆算するためのものであって、赤ちゃんが順調かどうかを判断するのが主目的の機能ではありませんのでご注意ください。

 

医師の中には、〇週で〇〇な状態だと厳しい、流産の可能性がある、などと内診や診察、ネットなどで言いたがる方もおられますが、一日千秋の思いで日々を過ごされている妊婦さんの気持ちを思えば、よほど確定的に厳しい場合以外は、必要以上に心配させるようなことは言わないであげてもらいたいなと思います。(こんなことを書くと、筆者が妊婦さんに「大丈夫ですよ」と説明しても、心配させないためにそんなこと言ってるだけなんじゃないか、などと思われてしまいそうですが)

 

 

奥様が妊娠中の世のご主人へ。

 

期待と不安でいっぱいの妊婦さんは、ホルモンの影響もあり、気持ちが非常に不安定です。

 

こういう時は、傾聴共感が基本で、アドバイスは禁忌です。「心配な気持ちは僕も同じだけど、一緒に赤ちゃんを信じよう」「心配はあるけど、順調だといいね」「先生は何て説明してくれたの?→(大丈夫だって言ってたけど)→それならまずはその言葉を信じてみよう」的な言葉は奥様の安心につながりやすいOKワードです。信じてみよう、順調だといいね、という言葉は反論のしようがないので夫婦で合意に至った感があり、不安的な気持ちの時でも納得感を得やすいのです。こういう時に不用意に「きっと大丈夫だよ」などと言ってしまうと、「どうしてそんなことが分かる」などと思われてしまうことがあるのでご注意ください。言うなら「大丈夫だといいね」です。

 

妊娠初期はつわりも始まりますので、家事の負担を軽くするための家事のお手伝いも大切です。今まで何もしていなかった男性が急に何かを始めると、やってもやらなくても色々言われてしまいますが、気持ちが大切ですので、やって色々言われるのが正解です。その時は、何かしてあげたい気持ちを伝えたうえで、何をどうして欲しいかを聞いてから始めてあげましょう。慣れない人にあちこち触られるのはかえってストレスという女性もおられますが、体調が悪くなってくるとそんなことも言っていられなくなってきますので、一度のno thank youで引き下がらず、体調を見ながらリクエストを聞いてあげてください。なお、ちょっとやっただけで、「俺家事手伝ったぜ」的な態度が鼻につくのは最悪で、だったら何もしない方がマシというレベルでダメですのでご注意ください。言葉だけでも「このくらいしかできなくてごめんね、少しずつがんばっていくね」くらい言えるとパーフェクトです。また、出産後の家事は(少なくとも建前上は)夫婦で一緒に分担するものですので、「お手伝い」は地雷ワードですので今のうちからご注意ください。

 

ということで、今日は妊娠初期あれこれについてお話いたしました。次回もお楽しみに!