皆さんこんばんは。

 

今日から、妊娠後解説シリーズと題して、産科的なことも解説していこうと思います。「いやいや、これから妊娠しようと思っているところに、気持ちを乱すことを書いてくれるな」と思われるかも知れませんが、いつか来るかもしれないその日になって、あれこれ急に心配になる方も少なくありませんので、内容に注意しながら色々お話していこうと思います。

 

今日は、妊娠週数の数え方についてお話します。基本的なことのようで知っているようで知らないことと思います。

 

まずは産科診療の歴史からひも解いてみようと思います。日本で初めて妊娠検査薬が市販されたのは1985年のことであり、また日本で経腟超音波検査が一般的に普及ベースとなり始めたのも同じくらいの時期からです。それより前の時期は、超音波といえば経腹であり、しかも画質も今よりも信じられないくらい悪いものであり、まるで魚群探知機のようなものでした。今の経腹超音波なら、高級機でなくとも5mm程度の胎嚢なら描出することができますが、当時の経腹超音波は数mmの胎嚢や、ましてや数mmの胎芽の心拍など分かるわけもなく、きちんと「おめでたですね」と診断できるのは、今よりもだいぶ週数がたってからのことです。

 

もっとも、今に比べて不妊治療(特に体外受精)後の妊娠ははるかに少なく、早期に胎嚢や心拍を確認したいというニーズそのものも今よりも少なかったはずで、当時としてはあまり困っていなかったのではないかと思われます。

 

では、超音波検査もない時代はどうやって妊娠に気づいたかと言えば、月経が遅れた→つわりが出てきた→体形の変化→胎動という一連の流れのどこかで妊娠に気づくことになります。そう考えると、つわりというのは、妊娠に気づくきっかけとしては大切なものだったのかも知れません(と、今書きながら気づいた)。

 

つまり、妊娠をカウントする上で、昔は最終月経からカウントするしかなく、最終月経開始日を妊娠0週スタートとしたのです。月経周期が28日程度とした場合、排卵日は妊娠約2週0日、生理予定日が4週0日、生理が1週間遅れると5週0日になります。ちなみに出産予定日は妊娠40週0日のことで、最終月経が1月上旬なら出産予定日は10月中旬であることから、十月十日(とつきとおか)といいます。

 

月経不順があったり、排卵日が明らかな場合、より正確な出産予定日算出のためには排卵日ベースで決めた方が正確なのは想像に難くありません。したがって、排卵日がわかる場合は、最終月経によらず、排卵日を2週0日として、40週0日を出産予定日とします。

 

しかし、世の中的には、最終月経も分からない、排卵日などもっと分からない、という方のほうがむしろ多いかもしれません。こういった場合は、胎芽・胎児の大きさから、そのくらいの大きさなら今の週数は妊娠〇週〇日だろう、という一覧表にあてはめて、そこから40週0日を算出することもあります。時々、超音波で、胎児の大きさの横に〇w〇dと書いてあるのは、現在の実際の週数ではなく、予定日算出の参考になるように、今の大きさだと、このくらいの妊娠週数だと思いますよ、と教えてくれているものですが、数日程度のズレはよくあることなので、気にする必要はありません。

 

排卵日や移植日が明確だが、大きさからの週数が数日ずれている場合、予定日を変えるかどうかは、はっきり言って、その担当医あるいはその病院の方針(=好み)次第ですが、どのみち予定日通りに生まれる方は1割もいませんので、数日ずらすかどうかに医学的な重みはあまりありません。

 

色々な人もいるもので、最終月経半年前、胎動もあったがしばらく放置、だいぶお腹が大きくなってから産科初診する妊婦さんもおられます。こういった場合は仕方がないので、胎児が正常に発達しているだろうと仮定して推定体重から現在の週数を算出し、予定日を計算します。せめて生まれる前には初診して欲しいものですが、色々な人の色々な事情に少しでも理解を示すのも産科医や助産師の大切な仕事だったりします。

 

予定日の計算は、ググれば専用のサイトがいくらでもありますが、最終月経ベースだと、最終月経の月から3を引くか9を足して、その1週間後くらい、胚移植ベースだと、移植の月から3を引くか9を足して、その10日前くらいです。お盆に移植するとGWが予定日、と覚えておくと覚えやすいです。

 

ということで、今日は妊娠週数の数え方について解説しました。

次回もお楽しみに!