■審判 これでいいのか
今場所は、審判の不可解な「物言い」のついた相撲が二番もあった。
【参照】↓
この件について、SNS上では意外と(?)審判部を支持する声が多かった。
日刊スポーツ・佐々木一郎記者の次のツイートから、審判支持の声が広がったように思える。
佐々木氏の言う「かつて誤審があったこともきっかけ」というのは、次の記事の件を指している(元のツイートでは、この記事のリンクを貼付している)。【参照】↓
佐々木氏のツイートを受けて――もし相撲を止めて、結果、反則がなかった、足は出ていなかった、となれば相撲の取り直しならぬ「やり直し」をしなければならなかった。そうなると、もっとスッキリしなかったはず。だからこれで良かったのだ――という意見が見られるようになった。
だが、必ずしも「やり直し」にしなくても済むはずだというのは、一番上に貼り付けた私のブログ記事の中で述べた。これはこれで「スッキリしない」と言う人もいることだろう。要するに、どのみちスッキリしないのだ。だとしたら私の提案がベターだと思うが、どうだろうか?
それはそれとして、私が「スッキリしない」のは「行司に同じことが許されるだろうか?」ということもある。
『裏まで楽しむ!大相撲』(タグハウス編/KADOKAWA刊)81ページイラストより
相撲が終わってから行司が「途中、足が出たように見えたのですが、確信がなかったので軍配を上げずに取り続けさせました。確認してください」というようなものだ。協会や審判部は、行司会がそんな「申し合わせ」をすることを認めるだろうか。審判には特権のようにそれが認められているとすれば甘い。
『裏まで楽しむ!大相撲』(ダグハウス編/KADOKAWA刊)88ページイラスト
何日目だったか、相撲中継の解説で舞の海氏が「途中で相撲を止めるべきでは」と言うと、審判経験のある錣山親方が「いや、審判は足だけじゃなくて相撲も見ていなけらばならないから難しいんです」と反論したが、私はこの時ばかりは珍しく舞の海氏に同意したものだ。
なお、上記リンク、日刊スポーツの記事中「取組を途中で止め、やり直したケースについて、日本相撲協会広報部は『極めてまれ。少なくとも戦後では、同様の記録は残っていない』」とあるが、取組が済んでからの「やり直し」というケースならある。【参照】↓
この時は、審判ではなく行司のミスによる「やり直し」だった。もちろん、だからといって「微妙な場合は軍配を上げず、最後まで取らせる」などという「申し合わせ」にはならなかった。
佐々木氏も記者として、ただ「実は審判部の取り決めでこうなっています。だから妥当です」というだけではなく、問題点を考えて欲しい。
空手の判定の不当性を訴える月井隼南選手のツイート。もちろん場合は違うのだが「こういう対応もやむを得ない」としている今回の相撲の審判問題と通ずるものがあるように思う。大相撲の審判も佐々木氏も、耳を傾けていただきたい。
月井隼南選手(同選手Instagramより)
■朝乃山問題
朝乃山の謹慎の件、千秋楽の記事でも「処分を解くべき」と言った。北の富士勝昭氏も「謹慎を解いてはどうか。協会にとっても損失だ」と書いている。↓
もっとも北の富士さんは「たかが酒を飲みに行っただけのこと」とも言っているが、そういう問題ではない。その「飲みに行くだけのこと」が、感染リスクのある行為だから問題なのだ。だが協会の感染対策ガイドラインは、何も飲みに行くことだけを禁じているわけではない(詳しくはリンク先を)。
【参照】↓
新型コロナウィルス感染症 対応ガイドライン 令和3年5月27日 公益財団法人日本相撲協会
飲みに出ることと、他の項目と、どちらが感染リスクが高いかは簡単には言えない。これらすべてに厳格に目を光らせ、そして違反があった場合、阿炎や朝乃山と同等の処罰を持って臨むのか。そうでなければ整合性が取れない。「そんなことまでチェックできるわけないだろう」というのは通用しない。朝乃山にはGPSで行動履歴まで調べ上げたではないか。
豪栄道を寄り切る 2019年名古屋(NHKテレビより)
結局、朝乃山に厳罰が課せられた理由は防疫上、由々しきことだからというよりも(1)「『夜の街』で飲んだ」というのはイメージが悪い(2)マスコミが取り上げて騒ぎが大きくなった(3)朝乃山が当初虚偽を述べていた
そんなところだろう。三番目の虚偽は悪質ということになろうが、報道されている内容を信用すれば、嘘を言ったのは、外出に同行した知人に頼まれてのことだったという。そうでなければ「あとで嘘とわかったら、かえって大変なことになる」という尾車理事の促しに応じていたのではないか。いや促しがなくても自ら申し出たのではないか。そこは情状を汲む理由にはならないだろうか。虚偽が協会幹部の感情を害したのは確かだろう。しかし感情で処分内容を決めてはならないのも当然だ。
もちろん、朝乃山の行動は軽いことではない。何らかの処分を課すこと自体に異議はない。だが「六場所休場」は無用の過剰制裁だ。問題行動を起こした力士だからといって、何をしてもいいわけではない。
別の問題もある。このまま、あと三場所休場すれば番付を三段目まで下げることになる。そうなると他の三段目力士にとっては脅威だ。何しろ幕内優勝経験もある元大関と本場所で相撲を取らなければならないのだから。三段目から昇進すれば、次は幕下力士の脅威になる。七番しか相撲を取らない幕下以下にとっては一つの黒星は重い。朝乃山との対戦が組まれた力士は不運と言うしかない。
昨年初場所(NHKテレビより)
力が落ちたとか、怪我や病気で番付を下げたわけではない力士が、その位置で強いのは阿炎や竜電の例を見れば明らかだ。朝乃山にしても本場所相撲となれば稽古をつけてやるようなわけにはいくまい。少しでも早く復帰すべく全力で相撲を取るだろう。こうなると三段目力士たちは、勝てる勝てないより、壊されることを心配しなければならないかも知れない。
【伊藤久右衛門】抹茶スイーツの開発やインターネット販売など新しい宇治茶の在り方の探求を続けています
協会は「処分が重すぎた」とは口が裂けても言うまいから理由は何でもいい。「辛抱見届けた」でも「白鵬引退恩赦」でも「北の富士さんの顔を立てて」でも「ブログで処分を解けと言っている奴がいるから」でも。処分を解くべきだ。
■舞の海さん 混ぜっ返さないで・・・
最後に私が愛読しているブログの紹介。おもに場所中のみの更新で、これは千秋楽翌日の記事だが、よくすぐにこんなことを思いつくもんだと、いつも感心しながら読んでいる。↓