ひとにぎりの未来 (新潮文庫)/星 新一

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【著者】星新一
【対象年齢】中学生・高校生

今回取りあげるのはショートショートで有名な星新一の作品です。(上記の本に収録されてます)
「繁栄の花」など国語の教科書で同氏の作品を読んだ人も多いのではないでしょうか。
ボリュームの割に、読んだあといろいろと考えさせられる作品が多いのが特徴です。

以下読書のポイント
(ほぼ完全にネタバレなので注意)

【サーカスのコビト】
ある町にサーカスがやって来ました。見世物はコビトの曲芸です。
舞台でコビトは団長に散々にいじめられ、人々がそれを見て楽しむのです。
やがて良識ある人々が、団長の虐待を裁判に訴えます。
ところが、団長はコビトは人間ではないから虐待ではないとつっぱねます。
結局、裁判の判決はコビトの人権を認め、選挙権等の様々な権利も認めました。
だがその直後、コビトの呼びかけによって地下から無数のコビト達が地上に現われたのでした。

【数の暴力】
民主主義の欠点は数の暴力に弱いことです。
よく言われますが、ファシズムを産んだのは民主政治です。
ヒットラーも民主的な選挙によって国の代表に選ばれてしまいました。
大勢の人が誤った判断を下せば、それが国の方針として決定してしまうわけです。
このため、民主政治の社会で生きる私達は、この数の暴力には日頃から注意しなければいけません。
この作品の最後は、コビトが数の暴力で人間を支配することをほのめかして終わります。

【人権の重さと軽さ】
そもそもの問題は、人々がうわべだけでコビトを弱者と判断し、
コビトの正体も知らないまま、同情だけで権利を認めてしまったことにあります。
誰かに何かの権利を認めるということは、最終的には社会全体に影響が及びます。
その影響は必ずしも良いものばかりとは限りません。
街角でティッシュペーパーを配るように、誰にでも気軽に権利を認めるというわけには行かないのです。
誰にどの権利をどこまで認めるべきか慎重に議論する人と
感情論だけでほいほい権利を認めてしまう人
権利というものの重さを理解しているのははたしてどちらなのでしょうか。
この作品を読み返すたびそう思うのです。