猫の事務所 (日本の童話名作選)/宮沢 賢治

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【著者】宮沢賢治
【対象年齢】全年齢
ファンタジーという物語の形式は、重いテーマでも誰でも楽しめる物語にできることは
以前にも書きました。今回取りあげる猫の事務所もまた、重いテーマを扱っています。

以下は読書のポイント

【あらすじ】
あるところに猫の事務所がありました。事務長の黒猫以下、四人の猫が書記として勤めていました。
四人の猫のうち、一人はかま猫でした。かま猫とは、夜かまどで眠る猫のことで、
体がいつも汚れた色なので、みんなからいじめられていました。
黒猫の事務長はかま猫をさりげなくかばいながら、事務所は日々順調に仕事をしていました。
ところが、かま猫が風邪で休んだある日、他の三人の猫が事務長にうそを吹き込み、
事務長までがかま猫をいじめるようになってしまいます。
しかし、一部始終を見ていた獅子によって、猫の事務所は解散させられるのでした。

【差別心は誰の心にもひそむ】
この物語ですが、よく読むとあることに気がつきます。

 けれどもこの事務所では、何せ事務長が黒猫なもんですから、
 このかま猫も、あたりまえならいくら勉強ができても、
 とても書記なんかにはなれないはずのを、四十人の中からえらびだされたのです。

つまり、事務長の黒猫もまた差別される側であることがほのめかされているのです。
差別を扱った物語では、差別する側がみにくく愚かで、
差別される側が人格者という形のものも多いですが、
実際には、差別される側も普通の人間であり、
別の差別の加害者になってしまうという悲劇も起こります。
植民地で支配された者どうしが憎みあうようになった
ルワンダ紛争なんかもこれに近いのではないでしょうか。


【考えてみよう】
この物語は「ぼくは半分獅子に同感です」という言葉で終わっています。
事務所の解散という獅子の決定が、はたして問題の解決になったのかどうか
考える余地を残した終わり方です。
感想文を書くネタとしては絶好のポイントですから、よく考えてみてください。