「だからさぁ、そこをどうにかしてって言ってるんじゃん!」
商人協会のドアを開けるなり、そんな声が聞こえてきた。
商人協会の内部は、先ほどまでいた魔術協会とは大分違っていた。
魔術協会より受付の空間が広かった。
そして、きらきら光る物体があちこちに飾ってある。
近づいて見てみると、金や宝石を使ったアクセサリーとか鎧だった。
声の主は、受付の前に陣取って、威圧的な空気を送っている。
赤茶色の髪で、リボンでまとめてポニーテールにしている。
「どうなの? なんとか出来ないの?」
対応をしていない受付員が、心配そうに見ている。
なんとなく近寄りにくかったが、それでもユニーは受付員に話しかけた。
「あの、商人協会長に挨拶に来ました、ユニリア・オルゼットです!」
そう言って、頭を下げてから紹介状を出した。
受付員は、はっとした顔をして紹介状を確認する。
「あっ、あぁ、先ほど魔術協会から連絡がありました。どうぞ、こちらです」
ちらりと隣のやり取りを見て、受付員が出てきて案内をしてくれる。
隣は、まだにらみ合いが続いていた。

コンコンッ
一際大きな扉の前で、受付員がドアをノックした。
「先ほど、フェディック様から連絡のあった、ユニリア様です」
「おぉおぉ、どうぞどうぞ!」
受付員に促されて、扉を開けた。
中は、広めで工芸品や絵画がたくさん飾られている。
部屋の中央のシャンデリアがすでに爛々と輝いていた。
「わははは、ごちゃごちゃしてますでしょう。全部、うちの協会の人たちが持ってきてくれたんですよ」
そう言って、ユニーの前に恰幅の良い、いかにも商人風の男が歩いてきた。
「私、承認協会会長のブルガッタ・ダムンシスと申します!いやぁ、どうぞよろしく」
半ば強引に握手をしながら、協会長は自己紹介をした。
「さぁさ、どうぞ。フェディック殿から話は聞いておりますよ。まさか、こんなに可愛いお嬢さんだとは思いませんでしたが」
勧められたソファに座る。すごく上等なソファで程よく柔らかかった。
「ふむ…なんでもオルゼットさんのお孫さんだとか?」
「あっ、はい」
「いやぁ、私も何度かパーティーに入れてもらったことがあるんですよ。ふむ、時が経つのは早いですなぁ」
宿も探さなければいけないので、あまり時間はかけられない。
「あの、それでお店を開きたくて」
「おぉ!そうでしたな、すみませんすみません。それじゃあ…っと、まずは協会名簿のためにこちらの用紙に記入いただけますかな?」
協会長は一枚の紙をユニーの手元に置いた。
「それを書いてもらったら、えーっと、店舗登録かな? すでに決めているということは?」
「あっ…、それがまだです」
答えながら、項目を埋めていく。
店舗経営の経験…ユニーは手伝いをしていただけなので無しに丸をつけた。
「ふむぅ…何か空き店舗があれば斡旋することも出来るのですが…」
協会長が首を捻っていると、廊下で何か騒ぎ声がしてきた。
その声は徐々に大きくなり、そして、
バーーーーンッ
「ひゃあっ」
思わず悲鳴をあげるユニー。
慌てて扉の方を見ると、受付の前にいたポニーテールの人だった。
「おやおや、どうしましたコルレ嬢。そんなに怒っていては皺が…」
「うっさいわね、おっさん! それより何なのよこいつら、話が通じないじゃない!」
協会長は、そんなコルレの怒気を涼しげな顔で受け止める。
「ふむ、一体どうしたんですか? 見ての通り、今は来客中ですよ?」
「私だって客でしょ! 会費払ってるんだからね! …そうよ、それよりうちんところのテナントがまた逃げたのよ!」
そう言って、協会長に詰め寄ってくる。ユニーの方は完全に無視だ。
「ここで紹介してもらっても、ろくなのが来ないわ! 来るのは、人生途中リタイアのおっさんばっかり」
コルレは、早口でまくし立てる。美人なのに、眉間に皺が寄りまくっていた。
「ふむ…じゃあ、どんな人間が良いんだい?」
「そりゃあ…可愛い少年とか、可愛い少女とか。むさいおっさん意外なら何でもいいわ。あいつら、私がちょっときつく当たっただけで逃げてくし」
「どう考えても、ちょっとでは無いと報告されているがなぁ…。ふむ、じゃあこの子でどうです?」
協会長は、ユニーの方を指差した。
コルレと初めて目が合う。何も言わず、ユニーをじっと見つめるコルレ。
ユニーは少し恥ずかしくなり、顔をそらしてしまった。
「…この子が商売を?」
「そうですよ、ユニリア・オルゼット君。ずっとお爺様の手伝いをされていたそうで、経営力は問題ないでしょう」
にこやかに協会長はコルレに言う。
「それに、問題があれば、コルレ嬢が教えてあげてください」
コルレは、少し難しい顔をして…ユニーを立たせた。
おずおずと立ち上がるユニー。
「むー…」
少し唸って、コルレはユニーの肩に手を置いてきた。
「あっ、あの…?」
ぎゅ~~~っ
手がそのままスライドしていき、抱きしめられた。
「かっわいい~~! 何これ私がもらっていってもいいのぉ? そうよ、こういうのよ! 早く言ってよねおっさん!」
ぎゅうぎゅうと少し苦しくなるくらいに抱きしめられている。
密着した体から、ほんのり甘酸っぱい匂いがする。
「わはははは、とりあえず放してあげたらどうです? 苦しそうですよ?」
その言葉を受けて、ユニーはようやく開放された。
頭を掻きながら、コルレが謝ってきた。
「さて、ユニリア君の方はどうだい? ちょうど、このコルレ嬢の建物がテナントを募集していてな。とはいっても、見てもらってからの方がいいかな」
ユニーの気持ち以前に、コルレの腕がユニーをがっしりと掴んでいた。
「それじゃあ、コルレ嬢の店にするにしろ何にしろ、明日もう一度来てもらえますかな?」
「はっ、はい!」
「うっし、それじゃあ、おっさん。この子もらってくよ!」
ぐいぐいと引っ張られながら、ユニーは商人協会を後にすることになった。
外に出ると、もうすっかり夜になっていた。
コルレは、ようやく腕を放してくれた。
「えーっと、ユニリアちゃんだっけ?」
「はい、あのユニーって呼んで下さい、みんなそう呼んでいるので」
すると、コルレは顔に両手をあてて、きゃーっと声をあげた。
その声で何人かが振り返った。
「ユニーちゃん? かっわいいーユニーちゃん、ユニーちゃん!」
すごく賑やかな人だとユニーは思った。
「それで? 今日はどこに泊まるの?」
そうコルレに言われて、ユニーは思い出した。
この強引な展開で、すっかり失念していたのだ。
「あっ…その…どうしよう…」
「あれ? もしかして、泊まるところが無いの? …うーん、それは商売人としてどうかなぁ?」
そう言われると返す言葉が無い。ユニーはすっかりうなだれてしまう。
ぎゅう~~~~~っ
また抱きしめられてしまった。
本当に、この人の思考がわからない。
「しょうがないから、私の家に泊めてあげるわ。それで、明日の朝にお店の方を見に行くわよ」
「はっ、ふぁいっ」
抱きしめられているので、上手く返事が出来なかった。

それから、手をつないでコルレの家を目指すことになった。
手をつないだのは、はぐれるといけないからという事だが、少し子ども扱いされている気がして、ユニーの気は進まなかった。
でも、コルレが笑顔で手を差し出してきたので、無下にすることも出来ず、少しドキドキしながら手をつないで歩いた。

コルレの家は、祖父が冒険家時代に住んでいたという街の北西部にあった。
「お一人で住んでいるんですか?」
ユニーが尋ねると、
「うん、今まではね…」
と、なにやら意味深な言い方でコルレは答えた。
一人暮らしにしては、結構大きめな家だった。
「ささ、入って入って。大したところじゃないけどねぇ」
コルレに続いて、ユニーも家に入った。
「わぁ…」
ものが綺麗にまとまっていて、置いてある小物もセンスが良かった。
「そこ、座っててくれる?」
指示された椅子に座った。これも、可愛らしい丸椅子だった。
一日泊まるだけなので、あまりきょろきょろと見て回るのも悪いと思い、おとなしく待つことにしア。
すると、ほっとしたのか、今日の疲れがどっと出てきて、目蓋を重くする。
「あぁ…ダメだ…」
そう言って、ユニーは眠りに落ちてしまった。

「…ニーちゃん? ユニーちゃん?」
ゆさゆさと体を揺らされながら、ユニーは目を開けた。
心配そうな顔で、コルレがユニーの様子を伺っている。
「疲れちゃった? そっかぁ、今日来たばっかりだものね」
コルレとは、道中で色々な話をした。主に、自分がどうしてこの街に来たかということと、今日の行動についてだった。
協会にいた時のコルレとはまるで別人のように、優しげな目でユニーの話を聞いてくれた。
「でも、椅子に座ったまま寝たらダメよ? ほら、こっちに来て」
また、コルレに手を引かれてユニーは歩き出した。
「じゃじゃ~んっ」
そう言いながら、部屋のドアを開けるコルレ。
見てみると、その部屋は、可愛らしいシーツがかかっているベッドと机、ライトやクローゼットのある小部屋だった。
「今日からあなたの部屋よ」
ユニーは、困惑した表情を浮かべた。
ここが、今日泊めてもらえる部屋なのかなとは思ったが、今日からとは…?
「泊まるところ、無いんでしょ? じゃあ、ここに住んじゃいなよって話」
「えっ、あのっ、えっ…」
「あれ? もしかしていや? それともどこか当てでも…」
「いえ、そういうことじゃないんですけど…」
まだ、コルレのところで店を開くかも分からない。それに、ついさっき会ったばかりなのに…。
「店とか気にしないでね? それに、宿代もちゃんと貰うから気を使わなくて良いし、何より…」
コルレは、ゆっくりと上を見上げた。
「元々ここって、うちのじいちゃんの家だったんだけど、もう一人、冒険者と一緒に住んでたんだって」
その話を聞いた瞬間に、どくんと心臓が大きく鼓動した。
「その人の名前がオルゼットだったんだ」
あまりの偶然に、ユニーは眩暈を覚えるのだった。

ライトセイバーを付加するフリーのツールがあるらしいですね。でも、それで作る動画が無いなぁ
剣術かっこいいなぁ。
すごい勢いで再生数が伸びてるのも頷ける出来。


今、洋ゲーのXBOX360版のスターウォーズをやっているので、おぉ!って思っちゃいました。
Star Wars: The Force Unleashedというやつです。
初っ端の操作がベイダー卿とか、テンション上がります。
ざわざわと教室が騒がしい。
休み時間であることを考慮しても、うるさ過ぎる…。
でも、それもしょうがないことで…来週からは夏休みに入るから。
私も、ちょっとだけ嬉しい。あんまり予定が無いのが寂しいけど…。
去年も今年と同じように予定が無くて、遥子と二人でだらだら過ごしたり、突発的に海を見に行ったりした。
だから、今年もそんな感じになるだろうと思って、今日まで遥子の予定を聞いていなかった。
私の座っている席から、斜め前にある遥子の席を見る。
すると、遥子は珍しく手帳を見てうなっている。
少し嫌な予感がした。

「どうしたの? 珍しく難しい顔をしちゃって…」
私がそう尋ねると、こちらを見もしないでこう言った。
「うぅーん…結構多いんだよねぇ…」
そして、ぽつりと呟いた。
「バイト…」
「えぇ~~~!!?」
皆が私の方を一斉に見た。
思わず、大声を上げてしまった…。
恥ずかしさのあまり、私はその場に小さくうずくまった。
「…あぁ、びっくりしたぁ。もう、さつってばいきなり大声出しちゃダメだよ」
遥子がさらに追い討ちをかけてくる。
私は、小さく「はい…」と返事をした。
「ほら」
その声と同時に、私の目の前に手帳が差し出された。
見てみると、8月の予定表の半分近くに赤丸が付いていた。
その他の月もぱらぱらと見てみる。
「ちょ、ちょっとさつ! 人の手帳あんまり見ないでよ!」
半分くらい無意識でめくっていた。
私は慌てて謝った。
「はぁ…まぁ、いいんだけどね。中、見ちゃったんでしょ?」
「うっ、うん」
遥子の手帳の他の月は、見事に白紙だった。
「どうも手帳とかつけるの苦手なんだよね…将来のために習慣付けなさいって言われちゃって」
私も手帳は持っている。その日の出来事とか予定もちゃんと書いている。
手帳を返しながら、私は疑問を口にした。
「それで、どうして急にバイトを始めたの?」
あーっと言いながら、遥子は遠い目をした。
「親戚に喫茶店をやってる人がいて、お母さんが勝手に決めちゃったんだよねぇ…」
去年の遊び呆けた夏休みの影響らしい。
何もしない位なら、社会に出ろということらしい。
「ごめんね、さつ。言うのが遅くなって…私も知ったのは一昨日だったんだけどね…」
なんとなく重い空気のまま、始業のベルが鳴ってしまい私は席に戻った。

はぁ…何故か私までため息が出てしまう。
特に予定が無くてもよかった。遥子となんとなく一緒にいるだけで十分だったんだ。
でも、今年はそうもいかなくなってしまった。
なんとか一緒にいることは出来ないだろうか…?
そう思った私は、次の休み時間に、遥子に一緒に喫茶店で働けるかを聞こうとして…断念した。
遥子の話によると、その喫茶店は結構小さくて、本来ならバイトも必要ないところを無理言って入れてもらったそうだ。
このまま暗い気分で過ごすのは嫌だったので、明るい話題に変えようと思った。
「でもさ、バイトしたらお金もらえるでしょ? 何に使うとか決めてるの?」
全く考えていなかったのか、遥子はうーんっと言って黙った。
しばらく待っていると、今度は頷きだした。
なんだか、その仕草がちょっと可愛い。
「原付の免許を取ろうかな」
結構、現実的な答えが返ってきた。
美人なんだから、もっとおしゃれをすればいいのにといつも思っているけど、言ったことは無い。
…もし、それでさらにモテたりしたらと思うと、今のままでいいのかもしれない。
そんな私の葛藤も知らずに、この友人はいつものスマイルを浮かべてにこやかに言った。
「そうしたら、後ろにさつを乗っけてあげるからね!」
一瞬、二人乗りで海岸線を走る姿を思い浮かべたが、首を振ってその妄想を消した。
「原付で二人乗りって、確かダメじゃなかった?」
「えぇっ!? そうなの…?」
「原付じゃなくて、もっとちゃんとしたのを取らないと…」
遥子はまた唸って、黙ってしまった。

結局、話は進展せず私たちは帰路に着いた。
二人とも特に部活動をしていないので、帰るのはいつも一緒だ。
遥子には、勧誘がいくつかあったが全て断ってしまった。
部活で活躍する彼女も見たかったが…帰宅部を選んだようだ。
後で、彼女に聞いてみたら、
「どうせやるなら、一から作ろうかなぁ」
と言っていた。
いつか、気まぐれで部を作るかもしれない。
私が、そんな思い出に浸っている間に、分かれ道についてしまった。
すると、遥子が分かれ道の前で立ち止まった。
私もそれにつられて立ち止まる。
「ごめんね、さつ。あの、怒ってるんでしょ? バイト入れちゃったから」
私はそんなことをこれっぽちも考えていなかったで、驚いてしまった。
もしかして、私が黙っていたから機嫌が悪いと思ってしまったのだろうか?
むしろ、話を振ったのに潰してしまった私の方が悪い気がする。
「怒ってないよ、全然怒ってない。ただ、どうしようかなって思ってただけで」
「そっ、そっかぁ」
遥子はほっとしていた。
突っ走る性格なのに、意外と繊細なんだよね。
そういうところも微笑ましい。
「それで、さ。バイトなんだけど、遊びに来てよ。私、さつの顔見れたら頑張って出来るような気がするから」
またもや不意打ちを食らって、私は照れ隠しに下を向きながら返事をした。
遥子がいるのに、行かないわけが無い。問題は…、
「どこにあるの? その親戚の喫茶店は」
「ここ」
「…えっ?」
ちょうど、私たちの分かれ道に喫茶店が建っている。遥子は、それを指差して言った。
「ここがその喫茶店なんだ。近いでしょ? …ってさつ?」
私は、がっくりとうなだれた。
今までのやり取りは何だったのだろう?
もしかして…遥子にからかわれた?
そう思って、遥子を見ると、私が喫茶店に行くということを素直に喜んでいるようだった。
そんな計算出切る人じゃないもんね…。そうだ、そんなことより…、
「あのさ、遥子…」


夜、いつものように手帳を開いて、今日の出来事を書く。
「色々あったけど…今年も楽しい夏休みになるといいな」
8月の予定表。半分近くある赤丸。
早く、遥子の働く姿が見てみたいな。
喫茶店の常連になる日も、そう遠くないのだった。