「シャミー・アイ~死のマリオネット~」-13- | BLACK-SKY

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ひとりごととか、小説だとか。

取るに足らない言葉たちの遊戯会。



サンダーは、自信満々、余裕綽々といった出で立ちのシャミーを見て、怒りを更に募らせていた。


ふざけるな。

どうせ「能力」を使うつもりなんだろう。


この俺を突き飛ばすなんて。

よくもそんなことが出来たものだ。


やってやる。徹底的に制裁を加えてやる。

父さんが出て行ったのも、母さんが別人のようになったのも、全部あいつのせいなんだ。

俺が母さんの代わりに恨みを果たす――



サンダーは吊り上がったその目に殺意を漲らせ、何の前触れもなくシャミーに殴りかかった――







                    ***







不意にサンダーが、シャミーめがけて拳を振るってきた。

間一髪、シャミーは大きく身をのけ反らせ、攻撃をかわすことに成功した。大きな拍手と動揺のざわめきが、小波の如く広がっていく。


しかし続いて休む間もなく、二度目の拳が振るわれた。

今度は肩を掠っていく。肩に僅かな痛みが走った。


向こうがその気なら、私だって容赦しない。

そうシャミーは心に誓い、早速、サンダーの脛に思い切り蹴りを入れた。

「つッッ」

サンダーの間抜けな声がして、教室の張りつめた雰囲気は一気に弛んだ。

女子サイドから容赦ないくすくす笑いが聞こえ、サンダーは痛みと屈辱に顔を歪めた。「よくも」とか「母さんのために」とかいう単語がサンダーの口から漏れるのが聞こえる。


立て続けにサンダーのパンチとキックがシャミーを狙った。が、並外れた運動能力も手伝ってか、一つもシャミーに当たることはなかった。

お返しとばかりにシャミーはエルボーを(見よう見まねで)サンダーの鳩尾に。サンダーはゴホゴホと咳き込み、顔を上げたかと思うと、きっとシャミーを睨み付けた。その瞳には妖しい光が宿っていた。正気を完全に失ってしまっている。


「……殺してやる」

そう言ってサンダーはポケットに手を突っ込んだ。

何をしているのか。そうシャミーが思っていると、サンダーの手と共にポケットから何かが出てきた。


女子サイドから悲鳴が上がる。

その叫びを楽しむかのように、サンダーはにやりと笑った。




そう、サンダーが持っているのは、カッターナイフだった。







                    ***







フラミー・キャメルは、教室で事件が起ころうとしていることなど知らず、職員室のデスクでプリントを作成しながら、呑気にコーヒーを啜っていた。



するといきなり職員室のドアが乱暴に開かれ、数名の生徒が雪崩れ込んできた。

しかも、あろうことかその生徒は、全て自分のクラスの生徒だった。フラミーは恥ずかしさに顔を赤らめた。


「何です、騒々しい!!職員室には『失礼します』と言ってから入室するのが常識でしょう!!それなのにあなたたちときたら、挨拶もせずに駆け込んできて……恥ずかしいったらもう……」

「すみません。でも、今はそんな暇ないんです」一人の女生徒がおずおずと言う。


「何ですって!」フラミーは眼鏡のブリッジを押し上げる。

「そんな暇ないんです、とは何ですか!!とにかくきちんと謝らないと、先生は話を聞きません!!」

と、メタルフレームの眼鏡越しに生徒達を睨み付ける。最高に威厳たっぷりだと密かに満足していると、


「先生、そういうくだらない芝居要りませんから。ていうか、普通は、どうしたの、何があったの、とか聞くもんじゃないんですか」一人の男子生徒が堂々と言い放つ。

くすっという微かな笑い声が職員室のあちこちから聞こえてくる。フラミーにはそれが、男子生徒を褒め称える賞賛の声に聞こえてならなかった。


「……ゴホン!えー……それでは……。何が、あったのです?」

その途端、ドンッという大きな音が響いた。どうやら音は、階上から聞こえてくるようだ。

「えー、やけにうるさいですね……」

「うるさいですね、じゃないです。これですよ。シャミー・ブルータスとサンダー・リシェルが、大喧嘩してるんです」







                    ***







シャミーは凍りついた。まさかサンダーがここまで本気だとは、思いもしなかった。

陰湿ないじめを巡った喧嘩、喧嘩を売った張本人でさえも、その程度のものぐらいにしか考えていなかった。


まさか、サンダー、本気で私を殺すつもりじゃ――


嫌な予感に包まれたその時、サンダーがカッターの刃を出し、掛けてくるのが目に入った。









「危ないっっ!!」


誰かが叫んだ。









怒り漲るサンダーの顔。


その、手に握られたカッターナイフ。


刃が2センチは出ているだろうと思われるカッターナイフ。


蛍光灯の光を受けて、殺意に満ちた凶器の光を放つ、そのカッターナイフ。
































シャミーは咄嗟に目を瞑った――























































悲鳴が、どこかずっと遠くから、聞こえてくる。










……