「シャミー・アイ~死のマリオネット~」-5- | BLACK-SKY

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ひとりごととか、小説だとか。

取るに足らない言葉たちの遊戯会。




マーシー・ブルータスは、二人の娘――シャミーと、その妹のマリーゴールド――と共に、ソファに腰掛けていた。


三人の視線の先には、テレビがある。

これから皆で、シャミーの出演したテレビを見るのだ。


待つこと数分、長いタイトルの付けられたその番組が始まる。


「お姉ちゃん、いつ出るの?何するの?」嬉しそうに、マリーゴールドが尋ねる。

「……『能力』を披露するんですって」マーシーは遠慮がちに言った。


マリーゴールドには、姉のシャミーとは違って、『能力』が全くなかった。

勿論本人はそのことを贔屓目に感じたりはしていないようだが――無理もない、まだほんの五歳なのだし、感じる余地もない――マーシーと彼女の夫は、そのことを非常に哀れに思っていた。


――可哀想なマリー。



「あっ、お姉ちゃんだ!」無邪気にマリーゴールドが言う。


番組は、『若干十歳にして脅威の才能を秘めた天才エスパー少女――シャミー・ブルータス』というタイトルのもと放送されていた。

内容はと言えば、シャミーがスタジオで披露する能力に皆で感嘆して意見を述べたり、シャミーの特技等を皆であれこれ聞きだし、天才だと誉めそやすようなものだった。


ごく普通で、中身のない、今時よくある番組だ。そうマーシーは思った。








                    ***






朝。


誰も教室にいないことを確かめると少年は、こそこそと教室に入った。


シャミー・ブルータスの机に両手を突っ込んで、まさぐる。

流石に昨日の今日なので、何も入ってはいなかった。


――まぁ、いい。こんなの、予想通りだ。


昨日悪戯されたばかりで、懲りずに置き勉をする方がおかしいのだ。


少年は後ろの方に向き直ると、ロッカーにシャミーの名前を探し始める。

そして、見つけた。


ロッカーから、音楽の教科書を見つけ、取り出す。

歌も上手くて、音楽の好きなシャミー・ブルータス。

だからこそ、悪戯のし甲斐があるというものだ。


少年は音楽の教科書を手に取ると、にやりと笑った。


――悪く思うなよ、「天才エスパー少女」。


――脅威の才能だなんて、笑わせる。


少年は思う。

あいつがちやほやされているのは、あいつの爺さんが有名な超能力者だからだ。

それなら僕だってちやほやされてもおかしくない。

なら、僕がちやほやされていないのは何故か――




――断じてあいつのせいだ。


――あいつのせいで、何が起こったか……。



「だから、悪く思うなよ」




僕だって、一方的に意地悪してる訳じゃない。


おあいこなんだよ。……いや、むしろ、まだお前の方が悪い。


おあいこになるまで、いや、それ以上になるまで、僕は「悪戯」をやめない。


分かるか?


覚悟してろよ、シャミー・ブルータス。



長々と呟いた後、少年は、ポケットから取り出したカッターナイフで教科書を真っ二つに引き裂いた。


教科書を、裂く。


裂く。


裂く。


なおも裂く。


跡形も無くなる程に。


やがて紙吹雪の如く細かく裂かれた教科書の欠片は、教室の隅に山のように積もった。


――これでいい。


少年は顔に、満面の笑みを浮かべる。


「悪く、思うなよ」


そして、あらかじめ書いておいたメモ用紙を、山の上にひらりと落とす。

そのメモにはこう書かれていた。


「死ね」







                    ***







あいつを殺したい、あいつを殺したい、あいつを殺したい――


女は狂ったようにそう呟いた。


女のいる部屋では、テレビがつけられている。

タイトルは、『若干十歳にして脅威の才能を秘めた天才少女――シャミー・ブルータス』。

イカれたタイトルだと女は思う。



四角く切り取られた世界の中で、憎きあいつが、シャミー・ブルータスが、宙にボールを浮かべながら笑顔をふりまいている。


――死ね死ね死ね。女はなおも呟く。


その笑顔が、憎い。憎い。憎い。とにかく憎い。


その笑顔を、その顔から永遠に拭い去ってやりたい。


あいつの存在を、この世から消し去ってしまいたい。


あいつを、出来るだけ残忍な方法で殺したい。



女は湧き上がってくる殺意を、空き缶を握り潰すという方法で、やっとの思いで堪える。それでも番組は消さなかった。





いつか、チャンスが訪れたなら……と、女は呟く。


いつかチャンスが訪れたなら。


いつかその時が巡って来たなら。


その時は、あいつを殺す。


絶対に。