「シャミー・アイ~死のマリオネット~」-3- | BLACK-SKY

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ひとりごととか、小説だとか。

取るに足らない言葉たちの遊戯会。




シャミーは怒りと悲しさで、体が微かに震えるのを感じた。


「……酷い!誰がこんなこと……」

ぼそりと呟く。


と、身体が熱くなっていく、不思議な感覚を覚えた。

身体の内から何か熱いものが込み上げ、隈なく全身まで回っていく。そんな感覚。


ベティがはっと息を呑むのが聞こえた。

「シャミー!ちょっと、『能力』が……。」


――えっ?


自分の体を見下ろす。

シャミーも、息を呑む。


自分の手が、足が、髪が、そして何故か服までもが、深紅に染まっている。


「……またやっちゃった」

シャミーは深紅に染まったその顔に、精一杯の微笑みを浮かべてみせた。







                    ***







ベティは、みるみる深紅に染まっていく親友を、ぽかんと口を開けながら見つめていた。


でも、ベティがこうなるのを見るのは、初めてのことではなかった。


シャミーは、物凄く怒ると、こうして深紅に染まる。

頻度で言えば、半年に一度ぐらい。


でも昔はもっと凄かった。

シャミーはいじめられっ子だったから、こうして深紅に染まることも珍しくなかった。


でも、去年くらいからは、『赤』を拝むこともなくなった。

シャミーによると、シャミーのお母さんが、学校で『能力』を解放することを禁止したのだそう。

理由は、知らない。






                    ***







「おはようございます」フラミー・キャメルは言う。

すぐに、おはようございます、先生、という声がクラスから返ってくる。

挨拶とは気持ちのいいものだと、フラミーは改めて思う。


プリントをデスクに置き、椅子に座って一息つく。

そしていつものように、クラスを一瞥する。フラミーの日課であり、癖。


するとフラミーは異様なものを見つけた。

深紅に染まったシャミー。髪も、肌も、瞳も、赤。

噂には聞いたことがあるものの、フラミーは『赤』のシャミーを見るのは初めてだった。


――これはただごとではないかもしれない。長年の教師の勘がそう告げていた。


「ブルータス。どうしました?」

シャミーが、その赤い、燃えるような瞳でフラミーを見る。


「何ですか、キャメル先生?」

シャミーの言葉には刺があった。心なしか目つきも鋭い。

内心腹立つのを堪え、フラミーは威厳を保ち、シャミーになおも質問する。


「いいえ。……でも、学校内で『能力』を使用するのは、お母様から禁止されていると思ったのですけれど。あなたがお母様との約束を破るとなると、何か理由がある訳でしょう?」


シャミーは眉間に皺を寄せた。

「……はい、キャメル先生。今朝、教科書に落書きがあったんです」

「落書き?」

「見てください」

シャミーは問題のページを開き、フラミーに手渡した。


そのページを見た途端、フラミーは驚いて、メタルフレームの四角い眼鏡を掛け直した。

非常に陰険な悪戯だ。十歳の子供がするものとは、とても思えない。







                    ***







怒りに燃えるシャミーと、驚く担任を、サンダー・リシェルは唯無表情で眺めていた。


別に悪戯書きくらいで、ああも騒がなくていいものだと、冷静にサンダーは考える。


「死ね」なんて、別に誰でも思うことだ。誰でも一日に一回は思うことだ。思わない方が不自然なのだ。そうサンダーは思う。

特に、天才少女と崇められているシャミー・ブルータスに殺意を抱く者など、このクラスに限らず、世の中には腐る程いる。


それを実行するかしないかの違い。

勇気か怠惰かの違い。

唯それだけだ。


当のブルータスだって、その隣に座ってる「模範生」のジェフリーだって、キャメル先生だって、誰だって、誰かに対して、「死ね」なんて思うはずだ。


結局皆、いい子ぶってるだけなのだ。


「リシェル、どう思う?」

後ろから、「模範生」が、囁く声がする。その声には、明らかに「お前を疑ってるぞ」という響きが含まれていた。


――だから俺は、振り返って言ってやった。


「その犯人に、拍手を送りたいね」

「は、拍手?」

「その演技、わざとらしいぞ。ジェフリー」

「え?」

「犯人は、お前だろう?」













クラスが水を打ったように静かになった。


目という目が、あの「模範生」に注がれる。


皆、不審そうな目つきで、クリストファー・ジェフリーを、見る。





――他人の不幸は蜜の味。サンダーはそう、口の中で呟いた。