シャミーは、ベティのことを、親友だと思っている。
皆は自分に対して冷たいのだが、ベティはそんなことはしない。
誰にでも、分け隔てなく優しく接してくれる。
シャミーは、ベティの、さっぱりとした性格が好きだ。
ベティの、赤褐色のショートヘアも好きだ。
そして特に、明るく裏表のない所が、好きだ。
ベティと笑いながら校舎を歩き、間もなくすると、シャミーのクラスが見えてくる。
「Aクラス」と記したプラスチックの板を掲げた、シャミーのクラスが。
名門ラーシアス学園でもトップと言われる、「Aクラス」が。
教室に入ると、早めに登校したにも関わらず、既に数名のクラスメイトが席に着いていた。
その中で、シャミーはクリスを見つける。
クリスとは、シャミーの、ベティの次に仲の良い――と少なくともシャミーは思う――友達だ。
クリスはいつも、学校に来るのが早い。シャミーとベティが教室に入ると、決まって、既に席についている。
クリスは、格好良い、方だと思う。艶やかな金髪と、爽やかな笑み。
そしてクリスは、学力が高かった。
シャミーが女子で一番ならば、クリスは男子で一番。
でも、クラスで二番。
シャミーに次いで。
***
「おはよう、クリス!」
朗らかな笑い声。振り返ると、シャミーとその友人のベティが、教室に入ってきた所だった。
「シャミー、ベティ、おはよう」
クリス――本名クリストファー・ジェフリー――は微笑んで挨拶を返した。
何が可笑しいのだろうか、シャミーが文字通り腹を抱えて、ベティの冗談に大笑いしている。
クリスは、そんなシャミーを冷静に見る。
シャミーは、クラス一の秀才であり、クラス一の美人である。…・・・と、クリスは思う。
ここ最近というものクリスは、ある思いに悩まされている。
シャミーに対するある思いに。
クリスは最近、シャミーに対して、ある感情を抱いている。
何とも説明のつけ難い、ある感情を。
何でも楽々とこなす、シャミーに対して。
クラス一、そして学園一の秀才、シャミーに対して。
***
ベティはくだらないギャグをシャミーに披露しながら、シャミーの後ろの席に着く。
強大なくじ運で勝ち取った、無二の親友の後ろの席に。
リュックから教科書を出して机に仕舞っていると、前から、シャミーが息を呑む音がした。
べティは上の空で尋ねた。
「どしたの、シャミー?」
「教科書が…・・・教科書が」
「は?」
「こ…・・・怖い……」
何かあったのだろうか。
そう思い、席を立ち、シャミーの傍らに立つ。
シャミーは、ぼろぼろの社会の教科書を開いたまま、言葉を失くしていた。
どれ、と覗きこむ。
「・・・・・・何、これ……。」
思わずそんな声が漏れた。
本来ならばつまらない印刷が施してあるはずの教科書。
しかし、シャミーの教科書は真っ白だった。
何者かの手によって、修正液で真っ白に塗られた教科書。
そして、ある見開きの二ページに跨り、黒いマジックで大きな文字が書いてある。
「死ね」
そして隅に、もう一言添えてある。
「――思い知ったか、秀才め。…・・・次のページを見ろ」
「次のページ…・・・?」
ページを繰る。
胸の悪くなるような明らかな悪意が、そのページには散りばめられていた。
…・・・犯人のあまりの悪意に、ベティは吐き気を催した。
白に塗られたそのページには、
犯人の手によって、
無数の「死ね」という単語が、
白のページが真っ黒になるまで、
びっちりと、
ほぼ隙間なく、
書き込まれていた。