アメブロれんやひめ -30ページ目

アメブロれんやひめ

ご来訪、誠に感謝いたします。


※土方歳三の実像写真を
独自に光源カラー化させ
3D Digital Human 再生。


※2025.8.2 個人出版
歴史人物探求シリーズ
Amazon Kindle 電子書籍
『土方歳三の謎』第1巻(名前の謎)
ペンネーム:連矢城(れんやじょう)

⑥ 無自覚の下手人(げしゅにん)


岩ヶ原の件から、半月ほど経った

ある日の夕刻、

俺は、ふたたび番所へ行って、

倒れていた男のことを尋ねた。
 

男の怪我は治ったそうだが、

記憶は戻らなかったので、

番所でも仕方なく、

近くの山寺の和尚へ身柄を預け、

仏門に帰依させることにしたという。
 

俺も近藤も、男のことを

沖田に話すことはなかった。
 

沖田は、捕まえてきた子犬に

「キナコ」という名前を付けて

可愛がっていた。
 

岩ヶ原では「菓子泥棒!」と言って

子犬を追いかけて行った沖田だが、

捕まえてみると、

子犬がくわえていた袋の中に、

「きなこもち」が入っていた。

 

沖田はそのとき、

「この子犬、お腹が空いてるんだな」

と思い、袋の中から、

きなこもちを出してやると、

子犬は嬉しそうにしっぽを振って、

ペロリと食べてしまった。

 

そして、もっと頂戴!とばかりに、

キャンキャン鳴きながら、

せがんだという。

 

「この子、きなこもちが

 好きみたいだから、

 名前を『キナコ』にしました」


沖田は嬉しそうに子犬を抱きかかえ、

「近くのお菓子屋さんへ行って、

 きなこもちを買ってきますね」

と、毎日、散歩のついでに

子犬を連れて出かけていった。

 

駄菓子屋のほうでも、

沖田と子犬が来るのを

楽しみに待っていて、

店主の爺さんなどは、

わざわざ、きなこもちを

子犬の顔そっくりに作って

店先に並べるものだから、

見るなり沖田は

大喜びで買いあさる・・

という始末だった。

 

近藤は、沖田の様子を見かねて、

「きなこもちばかり買ってこないよう、

 たまには沖田と子犬の散歩に

 ついて行ってほしい」

と、俺に頼んできた。

 

犬の散歩くらいで、

外出するときから一緒に出かけると、

沖田も見張られているようで

気持ち悪かろうと思い、

俺は先に行って、

駄菓子屋の横の裏通りで待ち、

偶然、なにかの用事で

出くわしたようにした。

 

子犬を抱えた沖田と一緒に

駄菓子屋の近くまで来ると、

店先に、網代笠(あじろがさ)を被った

托鉢(たくはつ)の修行僧らしき者が

ひとり、片手に小鉢を掲げて

経を唱えながら

佇んでいた。

 

そこへ店主の爺さんが出てきて、

僧の手の小鉢の中へ、

きなこもちと小銭を入れてやった。

 

と、そのとき、

沖田の手から急に子犬が飛び降り、

僧へ向かってピョコピョコ走り出した。

 

「托鉢だから駄目だよ、キナコ!」

沖田は慌てて追いかけた。


子犬は托鉢の僧の足もとで

鼻をクンクンさせ、

しっぽを振っていた。

 

僧も子犬に気が付き、その場にかがんで

鉢の中のきなこもちを差し出した。

子犬はペロペロと、きなこもちを食べた。



「もうしわけない」

と、沖田は僧に謝り、

小銭を鉢の中に入れてから、

子犬を抱き上げた。

 

僧は軽く会釈をし、

再び経を唱えて歩きだした。

 

すると、子犬が沖田の手から

また飛び降りて

僧のあとを追いかけた。

 

沖田は苦笑いしながら、

「あの鉢に、まだ、きなこもちが

 あると思ってるんだな」

と言って、すぐ子犬を追いかけて

抱き上げた。

 

ところが子犬は、

沖田の手から離れようとして、

もがいていた。

 

そして、托鉢の僧に向かって、

キャンキャンと声を上げて何度も吠えた。

 

俺は、何気なくその様子を見ていたが、

どこか奇妙な感じを覚えた。

 

「あの托鉢の僧は、

 どこから来たのだろう?」

 

あとで、それとなく

駄菓子屋の店主の爺さんに聞いてみた。

 

托鉢の修行僧たちは

近くの山寺の幸運寺から来ているそうで、

最近になって、

よく見かけるようになった、という。

 

「近くの山寺・・」

俺は、沖田と一緒に散歩から帰ったあと、

ひとりで近藤の部屋へ行き、

子犬の様子と托鉢の僧のことを話した。

 

「近くの山寺といえば、 
 岩ヶ原で倒れて記憶を失くした男が

 預けられたところだ。

 もしや、托鉢の僧の中に、

 あの男がいるのではなかろうか?」

近藤は、少し驚きながら続けた。

「あの子犬にしても、

 岩ヶ原で偶然出くわしたのでは

 ないかもしれないぞ」

俺も頷いて、

「駄菓子屋の前で見た托鉢の僧は、

 子犬となにか関係があるかもしれん」

俺たちが互いに思案していると、

外からキャンキャンと

子犬の声が聞こえてきた。

 

「トシさん、明日、山寺へ行ってみよう」

「うん。だが、明日は午後から

 道場稽古があるし、

 総司には、

 なんて話せばいいかな?」

近藤は少し考えてから、

「男の記憶が戻ってなかったら、

 総司には何も話さなくていい」

「少しでも戻ってたら、どうする?」

近藤の顔を覗くように聞くと、

「そのときは、また考えよう」

俺は無言のまま頷いた。



近藤としては、あの子犬のことも含め、

『果たし状』の送り主が、

岩ヶ原で倒れていた男なのかどうか、

確かめたかったようだ。



俺としては、まさか沖田が、

なんらかの方法で、

男を酷い目に合わせながら

黙ったまま見過ごしたのだろうか?・・

ということを、確かめたかった。



近藤も俺も、できれば、

沖田へ直接聞かずに済ませたかった。



もし、あのとき、

俺たちが、あの男を発見しなかったら、

男は岩場で気絶したまま

野タレ死んでしまったかも

しれないからだ。

 

反対に、

もしかすると、あの男が

沖田の背後から

襲いかかろうと

していたのだろうか・・。



いずれにしても、

男の記憶が戻らないうちから

沖田を「無自覚の下手人」として

咎めるようなことはしたくなかった。



翌朝、近藤と俺は、

「道具屋へ行ってくる」と沖田へ言って、

山寺へ出かけた。

 

昼前には到着し、

早速、和尚に尋ねたところ、

修行僧たちは既に托鉢へ出かけてしまい、

戻るのは夕刻頃だという。



和尚の話では、托鉢の修行僧の中に

岩ヶ原の男もいる・・ということだった。



男の記憶は、少し戻っているようだが、

まだ素性は思い出せないらしい。

 

ただ、もともと物覚えの良い男のようで、

念仏や読経は、短期間で習得したそうだ。



昨日、急に思い立って来たものの、

その日は道場の稽古もあり、

遅くなると沖田に疑われかねない。

 

夕刻まで男の帰りを待ったとしても、

素性がよく思い出せないのでは

なにを問うても判明しないだろう。

 

仕方なく、俺たちは昼過ぎに

山寺をあとにした。

 

帰りがけ、近藤はポツンとつぶやいた。

「結局、男の記憶が戻ろうが戻るまいが、

 御仏に仕える身となってしまえば

 俺たちが住む俗世とは、

 もはや無縁の者であることに

 変わりはないな」

 

俺も頷いて、

「子犬の鼻だけが、

 あの男のことを知ってるとしても、

 あえて沖田に話す必要はないだろう」

 

近藤と俺の思惑は、

「岩ヶ原の男のことは忘れよう」

ということで一致した。

画像
岩ヶ原の記憶を消す土方歳三と近藤勇(ゴリラ版)

 

 

子犬を飼うようになってから

以前にも増して

楽しそうにしている沖田の様子をみれば、

岩ヶ原の男のことなど全く知らない・・

というのが、やはり正解のようで、

少しでも疑った俺のほうが、

馬鹿らしく思えた。

 

しかし、それから半月ほど経ち、

事態は急展開した。

 


以上、創作連載 第1話『おかしな男』

⑥ 無自覚の下手人(げしゅにん)

 

💛次回(最終回)の予告

⑦ 心の機微


創作連載 第1話『おかしな男』①~⑤までのまとめ

(序幕:朗読&BGM動画)

https://youtu.be/y8b8WxncjI8

(前話①)

https://note.com/renji2ren8/n/naff5b019b381?sub_rt=share_pb

(前話②)

https://note.com/renji2ren8/n/n607e488bafec?sub_rt=share_pb

(前話③)

https://note.com/renji2ren8/n/n2fb973c314fd?sub_rt=share_pb

(前話④) 

https://note.com/renji2ren8/n/n960f4001874c?sub_rt=share_pb

(前話⑤)

https://note.com/renji2ren8/n/n0f85ddc9baaf?sub_rt=share_pb

⑤ 菓子泥棒

 

沖田が目を閉じて念仏を唱えていると、

そばでガサゴソと

紙包を動かすような音がした。

 

ふと目を開けると、

丸くて小さな子犬が

菓子袋をくわえていた。

毛並みが薄茶色で

コロッとしている。

 

「かわいい子犬だなあ。

 どこから来たんだろう?」

 

沖田は子犬を抱き上げようとしたが、

子犬は菓子袋をくわえたまま、

ピョンピョコと、しっぽを振って、

岩場の隙間に逃げてしまった。

 

「あ、私のお菓子ッ!」

沖田は岩場の隙間を探したが、

あたりが暗くなったせいで、

子犬の姿を見つけられなかった。

 

「菓子泥棒を捕まえなくちゃ!・・

 といっても、暗くてよく見えないし」

焦ってウロウロする沖田の足もとを、

薄灯りがぼんやりと照らした。

 

小田原提灯の光が沖田の瞳に映る。

「おい、総司、なにをそんなに

 慌ててるんだ?」

岩場の待機場所へ戻ってきた俺は

沖田のほうへ提灯を向けた。

「あ、土方さん・・」

沖田は少しホッとして、

「実は、お菓子の袋が・・

 ひとつ盗まれちゃったんです」

と、残念そうな顔をした。

 

そこへザッザッという足音とともに

前方の野原の草をかき分けながら、

近藤が御用提灯をぶら下げてやってきた。

 

「待機、ご苦労だったな、総司」

沖田は、ハッとしながら

「近藤先生、その御用提灯は、

 どうなさったのですか?」

と聞くと、

「うん、これか。念のために、

 トシさんが闇討ちを心配して

 近くの番所で借りてきてくれたのだ。

 もうしばらく相手を待とうかと思ったが

 暗くなって冷えてきたから

 引き揚げることにしたよ」

 

沖田はスッとひとつ息を吸い、

「それでは、その御用提灯、 
 ひとつ私にお貸しください」

「ああ、いいよ。しかし、

 なにか急な用事でもあるのか?」

近藤が不思議そうに尋ねると、

沖田はモジモジして

「急な用事というか、なんというか・・」

「菓子の袋が、ひとつ盗まれたそうだよ」

俺は、くちごもる沖田にかわって答えた。

 

「菓子泥棒か。誰に盗まれたんだ?」

と、続けて近藤が聞くや否や、

沖田は御用提灯を素早く受け取り、

「まだそのへんに、

 うろついてるはずですから、

 探してから家へ帰ります!」

と、言って、

一目散に手前の野原のほうへ

駆け出して行った。

 

さっぱりわけがわからない近藤は、

「トシさんよ、やっぱり、あいつ、

 おかしな男だよなあ・・」

と、小首をひねった。

「なんせ、お菓子だけが頼りだからね」

俺は少し笑いながら、

近藤の足もとにしゃがみ込んで、

別の御用提灯に火をともした。

 

と、すぐ後ろの岩場の陰に

草鞋の足を見つけた。

「おい、近藤さん、ちょっと見てくれ。

 人が倒れてるぞ」

俺は腕を伸ばして提灯を掲げた。

近藤も、後ろを向いて目をこらし、

「身なりは侍・・いや、浪人のようだが、

 体つきは、まだ若そうな男じゃないか」

俺たちは顔を見合わせてから、

すぐ提灯を持って

後ろの岩場の隙間に倒れている男の

近くへ行ってみた。

 

(続きは以下のnote記事リンクに掲載してあります。)

 

 

 

( ̄▽ ̄)今回は文字数が多く、

アメブロの掲載リミットで

こちらのほうへ

お話全体を転載できませんでした。

 

おもしろい話になってきたので

是非、リンクから、ご覧くださいませ。

 

まだまだ創作連載話は続きますが、

やはり投稿した記事の表示そのものが

最近の検索システム的に

「タグは全て無視扱い」

「リンクも全て無視扱い」

「表示そのものが出ない」

という傾向が続いているため、

 

もともと●●の総本山である

ということを承知しつつ、

noteで前半部分を掲載したら、

後半から続くお話は、

単なる趣味的な掲載ではなく

「自称作家」のお仕事として

ゆくゆく、まとめて

電子書籍化しようかなと

思ってます。

 

無料ブログに出した画像が

チューチューパクられて

バラバラに部分利用され放題に

なっていたことがわかったので、

なにかしら、手段を講じる必要が

でてきたことは確かです。

 

日本の歴史もよく知らず、

日本人ではない連中が

日本の国を侵略破壊しながら

上にのさばってる。

そろそろブッ飛ばしたいんだけどね。

 

 

 

(これまでのお話)

 

創作連載 第1話『おかしな男』①~④

 

(序幕:朗読&BGM動画)

 

 

 

(前話①)

 

 



(前話②)

 

 



(前話③)

 

 

 

 

(前話④)

 

 

 

 

(今回⑤)

 

 

 

( ̄▽ ̄)修正:「前話④」のリンクが抜けていて

おまけに「全話」なんていう誤記があったので修正。

 

 

メラメラアメブロにも記事をフル転載ドキドキ

 

※今回は、シナリオではなく小説タイプです。

④ 奇襲攻撃 

(土方の声)

陽は少し前に沈んだ。

闇が深まる田舎道を足早に歩きながら、

俺は、ふと思った。

約定の暮れ六つ時を過ぎても

果たし状の相手が近藤の前に

姿を見せない・・となれば・・

「夜陰に乗じて、近藤が襲撃されるかもしれない」

 

俺は、農家の物置に置いてきた

火打石で藁に火をつけ、

小さな小田原提灯に薄明かりをともした。

念のため、

近くの番所まで行って事情を話し、

「御用」と書かれた提灯の束を借りて、

再び岩ヶ原へ向かった。

 

画像
木刀の果し合いで相手を待つ近藤勇(崩しゴリラバージョン)


陽が暮れた岩ヶ原の野原では、

近藤がひとり、

果たし状の相手を待ちながら

木刀で素振りをしている。

 

あたりの岩場では、

万一にそなえ

沖田が待機している。

 

その背後へ

浪人ふうの若い男が

腰の黒鞘に手をそえ、

ひそかに迫っている・・。

 

試衛館の近藤勇を標的に、

『果たし状』を送ったのは

この男だった。

 

男は、もともと下級武士の次男坊で、

かつては、天然理心流道場に通い、

ほんの数日、稽古をしたことがあった。

しかし、

重い木刀を使った稽古で

腕や肩の筋だけでなく

手指の神経を痛めてしまい、

それきり道場へ

通うことはなかった。

 

男の夢は、

大名屋敷の剣術指南役となって

出世することだったが、

腕を痛めて以来、

竹刀を握ることも満足にできず、

医者からも「完全治癒は難しい」と

見放され、出世の道は閉ざされた。

 

男は、いたたまれなくなり、

家から僅かな金を持ち出して

浪人暮らしを始めた。

しばらくして身銭が尽きたので、

隣村の剣術道場へ転がり込み、

そこで下働きをしていた。

 

男が家を出る前には許嫁もいたが、

出世の夢が破れたせいで

酒癖や素行が悪くなり、

破談になった。

 

近藤も沖田も、

遠い昔、ほんの数日間だけ

道場で見かけたその男のことを

覚えているはずもなかった。

 

岩ヶ原の岩場で待機する

沖田の背後に

男はジリジリと近付く。

腰間の黒鞘が波打つように

揺れている。

 

沖田は、相変わらず

すねたようにクチをとがらせ

風呂敷の中の菓子袋をガサゴソと

音を立てながら、いじくりまわしている。

背後に迫る

男の存在に気づく様子はない。

 

浪人男は、昔を思い出しつつ

黒鞘の柄を握る。

 

他流派の道場で

下働きをする日々を送りながら、

天然理心流の、特に近藤勇に対して

恨みを抱き続けてきた。

「腕がダメになったのは近藤勇のせいだ。

 もう、もとのようには戻らない・・」

 

腕だけではない。

剣術指南役の夢を、一生を、

あのクソ重い木刀で台無しにされたのだ。

 

一時は、試衛館道場へ莫大な慰謝料を請求し、

金でユスることも考えたが、

失われた夢は、金で買い戻せはしない。

なにより、生まれ育った武家の名に

泥を塗るようなことはしたくなかった。

 

曲がりなりにも武士の意地があった。

なんらかの形で復讐しようと

心に決めていた。

 

果たし状に、

『木刀による立ち合いを所望』と

約定を書いておけば、

近藤も油断してかかるに違いない。

相手に対して真向勝負をしたがる

近藤の性格は、

他流派の門人の話から、

よく知っていた。

 

木刀で勝負するとなれば、

真剣は持参しないはずであると。

 

浪人男の腕では、

仮に真剣を抜いて勝負したとしても、

鍛え抜かれた天然理心流の門人を

殺めるまでには至らない。

そのことを、十分知っていた。

 

勿論、木刀で近藤と勝負するつもりなど、

最初から、なかった。

 

果たし状を送れば

必ず、近藤と近しい誰かが

護衛に来るだろう。

潜伏する護衛の背後から襲い掛かり、

岩場を利用して

腕を粉砕して駄目にしてやれ・・

くらいに考えていた。

 

その責任は、

全て近藤にあることを

自覚させたかった。

 

殺しはしない。

生きながら、一生、苦しむがいい。

 

沖田の背中を射抜くように、

浪人男の鋭い眼光がギラリと刺す。

薄暗い闇が、歪みながら深まる。

 

狙いどおり、

近藤勇との果し合いには

護衛として門人の沖田が

隠れて待機している。

 

木刀に大きな風呂敷包を吊るして

岩場に来た姿を目撃していた。

 

近藤が最も可愛がっている

舎弟の門人、沖田総司。

まさに格好の餌食だ。

 

そうとも知らない沖田は、

風呂敷包の中から、

駄菓子の入った紙袋を

いくつか取り出していた。

脇には、白樫の太い木刀が置いてある。

近藤と同じく、腰に真剣はない。

木刀しか持参していなかった。

 

浪人男は、沖田の背後で

刀の鯉口をきっていた。

 

沖田は、菓子袋を見ながら

少し気をとりなおし、

また、おはぎを食べてみた。

近藤の女房が作ってくれたおはぎは

沖田のひざもとの重箱の中に、

どっさり並んでいる。

「やっぱり塩の味しかしないや。

 奥さんには申し訳ないけど・・」

と言って、

沖田は座ったまま、

まるでお手玉をするように

後ろの岩場へ

おはぎをポイポイと

肩越しに放り投げた。

「塩は厄除けにもなるし、

 決して無駄にはなりません、ッてね」

一段を投げ終わると軽く目を閉じ、

片手で祈りを捧げ、

次いで重箱2段目の「おはぎたち」を

同じように後ろへ放り投げた。

 

沖田に襲い掛かる寸前だった浪人男は、

突然、丸くて黒いものが

次から次へと

大量に飛んできたので

よけるのに必死だった。

 

ただでさえ、薄暗い岩場で

足もとが不安定なところへ、

沖田が投げた

「おはぎたち」が、

次々と男の顔面に当たった。

 

浪人男は、たまらず岩場に

座り込んで踏ん張っていたが、

みるみるうちに

全身、黒い餡子で

ドロドロになってしまった。

 

こっそり不意打ちで攻撃しなければ

浪人男は目的を果たせない。

「なにをする!」・・と、

怒鳴ることもできなかった。

 

黙って岩場へ踏ん張ったまま、

餡子でドロドロにされ、

逆上寸前になった男は、

この際、一気に飛びかかろうと決心した。

 

と、次の瞬間、

「あ、そうだ、この渋柿も、 
 ごっそりあるけど、いらないや」

沖田はそう言うなり、

頭上から袋入りの「渋柿たち」を

一気にドバッと後ろへ放り投げた。

 

それは、意を決して突進した

浪人男の全身を強烈に直撃した。

 

先に「おはぎたち」の奇襲攻撃を受け、

ドロドロになった黒い顔面に、

今度は真っ赤な「渋柿たち」が急襲した。

 

男は瞬間、目を回し、

岩場から足を滑らせ、

運悪く、ゴツゴツした岩の角に

しこたま頭を打ちつけて

声をあげる間もなく失神し、

岩の間にドロドロと崩れ落ちて倒れた。

 

沖田は沖田で、

せっかく取ってきた柿が

渋くて食べられなかった悔しさもあり、

腹立ちまぎれに、

思い切り投げ捨てることしか

頭になかった。

 

子供っぽい男だが、

重い木刀で鍛えた腕力の持ち主だ。

熟した渋柿といえども、

剣術の三段突き並みに

驚異的な破壊力となったことは

いうまでもない。

 

しかし、そんな奇襲攻撃をしたことなど、

沖田自身、知る由もなかった。

先に後ろへ捨ててしまった

愛すべき「おはぎたち」のほかに、

「渋柿たち」の悲惨な姿を、

目にしたくなかった。

 

後ろへ捨てたものを

見るのがいやだったので、

まったく振り返ることもなかった。

 

袋ごと渋柿を投げ捨てたとき、

ドロドロの浪人男が倒れる物音も

同時に聞こえた。

 

しかし、沖田は

後ろの岩場に倒れた

男の存在に、

気が付くことはなかった。

 

ただ、しょんぼりしながら

「かわいそうに・・

 渋柿たちが岩場にドサッと

 当たったんだな・・」

座ったまま振り返ることもなく、

ため息まじりにつぶやくと

懐紙を出して手をぬぐった。

 

そして、軽く目を閉じ、

両手で合掌しながら

念仏のような祈りを捧げていた。

 


以上、創作連載 第1話『おかしな男』

④ 奇襲攻撃

 

💛次回の予告

⑤ 菓子泥棒

 


 

以下、第1話『おかしな男』①から③までのまとめ

 

(序幕:朗読&BGM動画)

 

 

(前話①)

 

 



(前話②)

 

 



(全話③)

 

 

 

 

 

( ̄▽ ̄)💛お時間あったら~noteもミテドキドキスキしてチョ💛