自作短編小説『ホスト』
作:優愛(ゆうあ)
私の学生時代の初恋は実ることも叶うこともなかった小さな恋愛だった。
ー2011年3月ー
✕✕(友達):『なんか高校3年間ってあっという間だったよね~』
〇〇:『そうだね、もっと何かあると思ってたんだけどなぁ・・・』
友達の✕✕と卒業式が終わり学校内で話をしていた。
✕✕:『〇〇はさ、ふっかとどうなったの?』
突然、ふっかさんの話を出してくる。ふっかさんこと、深澤辰哉くんはクラスは違うけどバスケ部のエースで
誰からも好かれている男の人だった。もちろん誰からでも好かれるから女子からも人気だった。
〇〇:『その話はやめようよ、もう』
私はふっかさんに恋をしていた、でも、その初恋とも今日でお別れだ。
✕✕:『え~?何で、何で?〇〇があのバスケ部のエースのふっかに恋してる、なんて大スクープみたいなものじゃん』
大スクープって・・・。
〇〇:『もう、やめてよ、スクープとかさ、別にふっかさんに想い伝えたわけじゃないのに・・・』
そう、ふっかさんに想いを伝えたことは1度もない、もちろん伝えたいとは思った、けど・・・。
✕✕:『あーあ、そうだよねぇ・・・・あの感じじゃ無理だよね・・・』
ふっかさんが男女問わず囲まれて話をしているのが目に入ってくる。
〇〇:『ここから見てるだけで十分だよ、ふっかさんが幸せそうにしてるなら十分』
私は胸をギュッと押さえる。
✕✕:『〇〇・・・・あんたは偉いよ、本当に、大好きな人のためにさ』
✕✕は感動して泣きそうになっている。
〇〇:『もう、大げさだよ、さ、帰ろう、もう、ふっかさんのこともおしまい、おしまい』
おしまい、そう自分で決めた、もう未練も感じないようにしないと、と・・・。
✕✕:『そうね、次進もう~!』
✕✕は大きな声で手を上にあげる。
〇〇:『✕✕、声でかいって』
✕✕:『えへへ・・・ついつい・・・』
✕✕が苦笑いしながら照れていた。私たちは学校を後にする、それがふっかさんを見た最後の姿になると思っていた。
私たちが帰る姿をこの時ふっかさんが見ていたことも私は知らずに・・・。
それから時は経ち、10年が経過した。私たちは28歳になった。ふっかさんもそうだ。たまたま同窓会で✕✕と再会した。
✕✕:『や~、〇〇、元気にしてた~?』
〇〇:『久しぶりだね、すっかり大人の女性になってる』
✕✕がにやりとする。
✕✕:『そんなことないって~』
✕✕はおいしそうにお酒を飲む、私はお酒が苦手なのでソフトドリンクを頼む。
✕✕:『〇〇、大人なのにお酒苦手なんだね~?』
〇〇:『うん・・・苦手、というより飲めないって感じかな』
✕✕が美味しそうにお酒を一気に飲み干す。
✕✕:『もったいないなぁ~お酒の力があれば恋愛もうまくいくのに~』
まるで✕✕は恋愛が上手に言っているような言い方だ。
〇〇:『✕✕は恋人出来たの?』
✕✕は首を振る。
✕✕:『んなことな~い、出来てたら同窓会なんて来てませーん』
酔っぱらっているようだった。
〇〇:『そっか・・・』
✕✕:『〇〇は~?恋人出来た?というより、新しい恋してるの~?』
私は首を振った。ふっかさんを最後に見て以来恋愛は封じ込めていた、ふっかさん以外を好きになることなんて
出来なかった、この10年間、ふっかさんのことを忘れたことなんてなかった。いつだって、今だってずっと心の中には
ふっかさんの存在があった。
〇〇:『新しい恋かぁ・・・恋なんて10年前に捨てたからね』
✕✕がグラスにお酒を注ぐ。
✕✕:『そうだよね、〇〇の初恋はふっかだもんね、ふっか以外あり得ないってね~』
〇〇:『酔っぱらってるでしょ?』
✕✕は『えへへ』と言ってお酒を飲む。
〇〇:『飲み過ぎなんじゃない?』
✕✕:『そんなことない、ない、ほっといて~あ、そうだ』
✕✕はカバンの中から1冊の雑誌を見せる。
〇〇:『雑誌?どうしたの?それ』
✕✕:『ちょっと気になったページがあるんだけど、見てみて』
私は✕✕に言われた通り、そのページを開ける。
〇〇:『このページ?』
✕✕:『そう、ここ、この人、分かる?』
✕✕はある人物を指さす。そこには・・・。
〇〇:『これ・・・・』
間違いない、ふっかさんだった。どうして雑誌なんかに・・・?タイトルには『人気ホストナンバー1、ふっか』と
書かれていた。
✕✕:『ふっか、ホストになったんだってね~意外だわ、あのままバスケの選手になると思ってたのにね』
〇〇:『うん・・・・』
写真に写るふっかさんはまるで別人のようだった、髪色を金髪に染めてキメ顔をしている。
✕✕:『〇〇、ショックだった?ごめん、私が見てって言ったから』
私は首を振る。
〇〇:『全然平気だよ、それより、ふっかさんがホストになってるなんて、それの方が驚きだから』
どうしてあんなにバスケ部で活躍していて、バスケの選手になれると期待されていたのに突然ホストなんかに?
一体ふっかさんに何があったんだろう、と思った。
✕✕:『それ、どこのホストクラブだろうね?』
〇〇:『下に店名書いてあるよ?△△区のホストクラブみたい』
✕✕はグラスをドンッと置く。
〇〇:『✕✕?どうしたの?』
✕✕:『よーし、〇〇、いいこと考えた、ふっかに会いに行こう、そのホストクラブに行くの!』
突然の✕✕の言葉に驚きを隠せない。
〇〇:『え?待って、本気でそんなこと言ってるの?行くって・・・』
✕✕は激しく頷く。
✕✕:『当たり前でしょ?何でホストになったのか、ふっかに聞かないと!』
〇〇:『そ、それは・・・・』
そんなの話してくれるかなんて分からないのに・・・。
✕✕:『それに・・・ちゃんと〇〇の気持ちもさ、伝えないとさ』
〇〇:『もう10年だよ?ふっかさんだって覚えてないよ、私の事なんて』
10年前の事を伝えられたって迷惑に決まっている、それに、ホストってモテるだろうし、学生時代にあれほどモテていた
ふっかさんに彼女がいないわけないと思っていた。
✕✕:『何が10年よ、10年だから何よ、今更って思ってるの?あの時伝えておけばよかった、って
後悔してるじゃない、見えるのよ、私には』
さすが✕✕だった、私がふっかさんへの気持ちを話さなくても分かっていた。
〇〇:『でも・・・私みたいな人がホストクラブなんて・・・』
✕✕が私の背中をトンっとする。
✕✕:『私も一緒に行くから安心しなさい、大丈夫』
正直不安だった、いくら✕✕が一緒だからといっても、本当に行って大丈夫なのだろうか、と思った。
それから数日後、私と✕✕は駅で待ち合わせをして、ふっかさんがいるホストクラブに向かうことにした。
✕✕:『ホストクラブに行くのに緊張してるの?』
〇〇:『だ、だって、行ったことないんだもん、そういう所』
緊張しないわけないじゃない。
✕✕:『ま、そうだよね、〇〇は純粋だから、そういう所毛嫌いしてる部分あるもんね』
✕✕はホストクラブに寄る前に洋服屋さんに立ち寄る。
〇〇:『✕✕、どうしたの?何か気になるものあったの?』
✕✕:『〇〇、着替えよう、せっかくふっかに会うんだから、綺麗な姿で会わないと』
✕✕は私のために服を選んでくれた。
〇〇:『えぇ・・・これ高いよ・・・こんなの買えないし、着れないよ、申し訳ないもん』
✕✕は首を振る。
✕✕:『いいから、いいから、私に任せなさいって』
私は✕✕のおすすめする服を試着する。
〇〇:『・・・どう・・・?似合ってる?』
✕✕が『うんうん』と頷く。
✕✕:『もっと自信をもって、10年ぶりに好きだった人に会うんでしょ?もっと背筋伸ばす!』
そうだ、10年ぶりにふっかさんに会う、大好きだったふっかさんに会うんだ。
私と✕✕はホストクラブへと向かった。
✕✕:『確か、住所はここら辺よね』
〇〇:『う、うん・・・・』
△△区内はどこもホストクラブばっかりだった。こんなところに毎日来てる人の気持ちが
正直分からなかった。
✕✕:『うーん・・・どこのお店だ~?』
✕✕は雑誌とにらめっこしている。
〇〇:『あ・・・あのお店じゃないかな?』
私は1つのホストクラブに目をやる。✕✕が雑誌に書かれている店名と照らし合わせる。
✕✕:『あ、本当だ、ナイス、さすが〇〇、ふっかのことになると早いじゃん』
ふっかさんのことになると早い、別にそういうわけではないのに・・・。
〇〇:『本当にここにふっかがいるのかな?』
✕✕:『いるよ、きっと、いや、間違いなくいる』
✕✕と私は勇気を出して入店する。ドアを開けるとたくさんのホストたちが出迎えてくれた。
✕✕:『私たち、初めてなんですけど、大丈夫ですか?』
✕✕が頼もしく先導を切ってくれる。
〇〇:『・・・・』
ふっかさんはどこにいるんだろうとあたりを見回す。ホストの一人が私の所にやってくる。
ホストA:『可愛い子来ました~!誰、指名しますか?あ、名前は?俺は、□□』
そう言って名刺を渡そうとする。
✕✕:『あ、あの私たち、この人を探してるんです、ここで働いてるんですよね?』
✕✕はふっかさんの載っている雑誌を□□に見せる。
□□:『あ~、ふっかのことか、ふっか指名?』
✕✕は頷く。
✕✕:『できることならそうしたいけど、忙しいの?』
□□:『ふっかに聞いてくるよ』
□□は奥の部屋へと入っていく。
✕✕:『お店の方には出てないのかしらね』
私は首を傾げた。お店の奥にいるってことは、やっぱりそれだけ上位ってことなのだろうか。
やがて、お店の奥から□□が出てきた。
□□:『お待たせしましたぁ~、ふっか指名ですね、もうすぐ出てくるんで、こちらの席でお待ちくださーい、あ、飲み物
何にします~?おすすめは~』
私たちは座席に座る。□□がおすすめのメニューを見せてくる。
✕✕:『あ、〇〇はお酒が飲めないんだけど、ソフトドリンクとかあるかしら?』
□□は驚いた顔で私を見る。
□□:『へぇ~〇〇ちゃんっていうんだ、可愛い名前だね、お酒苦手なの?少しでもダメ?』
やけに私にくっついてこようとする。
〇〇:『あ・・はい・・・』
私は何だか申し訳ない気持ちになってくる。
□□:『え~?ダメとか言わないで、ちょっとだけ飲んでみなよ、試しにさ』
✕✕:『ちょ・・・何言ってるんですか?苦手なのに無理に決まってるじゃないですか』
□□が私の肩に手を触れようとする。
〇〇:『あ、あの・・・やめてください、私、こんなつもりで来たわけじゃなくて・・』
□□がにやりとする。
□□:『こんなつもり~?どういうつもりで来たの?ふっかだけが目的?何?ふっかの知り合い?』
✕✕:『知り合いっていうか、同じ学校に通ってた同級生ですけど』
同級生と聞いて□□が笑う。
□□:『ふーん・・・同級生、で?それで会いに来たってわけ?雑誌にふっかが掲載されてるの見て
会いに来たんだ~?そうなんだろ?』
□□が私の体をジロジロと見てくる。
〇〇:『やめてください・・・』
やっぱり来るんじゃなかった、と思った。その時だった。
深澤:『お待たせしました』
私たちの前にふっかさんが立っている。
✕✕:『ふっか!久しぶり、ねぇ、覚えてる?私たちの事』
ふっかさんは私の方を見る。
深澤:『・・・いいえ、存じ上げませんが・・・』
私はふっかさんが自分のことを覚えててくれてると思った、あまりにもショックだった。
〇〇:『ふっかさん・・・』
深澤:『お飲み物は何にしますか?』
ふっかさんは本当に私の事気づいていないのだろうか?
□□:『なぁ、ふっか、こいつらと同級生っていうのは本当なのか?』
□□が✕✕から聞いた話をする。
深澤:『同級生・・・ですか?』
ふっかさんが知らないな、という態度をとる。
✕✕:『ちょっと!ふっか、どういうつもりなの?何で覚えてないフリするわけ!〇〇がこの10年間、どんな思いで
いたか分かってるわけ!?』
✕✕が立ち上がってふっかさんに対して怒る。
深澤:『お客様、すみませんがトラブルになるようなことはやめていただきたいのですが・・・』
本当にこれが、10年前バスケ部のエースで活躍していたふっかさんだとは思えなかった。
〇〇:『・・・・ここに来たら、ふっかさんに会えると思ってた・・・・雑誌に載ってるふっかさんを見たとき
やっと会えるんだって・・・思ったのに・・・ふっかさん、私の事本当に覚えてないの!?何もかも?全部、忘れちゃったの?』
私は涙が出てしまう、こんなふっかさん見たくなかった。
深澤:『お客様、私情を挟むのはやめてもらえますか?今は仕事中です』
ふっかさんは表情一つ変えなかった。悔しくて悲しくてたまらなかった。
□□:『なぁ、ふっかは何にも覚えてないみたいだし、〇〇ちゃん、俺と遊ぼうよ~、ふっか、〇〇ちゃん指名してもいい?』
ふっかさんは何にも返事をしない。
✕✕:『・・・最低ね、10年ぶりに会いに来たのに、すっかり人が変わったみたいになってる、行こう、〇〇』
✕✕は私の手を引いて出ようとする。
□□:『え~?待ってよ、〇〇ちゃん、これから俺と一緒に・・・』
私は□□の方を見る。
〇〇:『遊びません!もう二度と来ません、ふっかさんにも会いに来ません!』
私ははっきりと切り捨てて✕✕と一緒にお店を出る。
□□:『ちぇ・・・結構かわいい子だったから、遊んで仲良くなろうと思ってたのに、なぁ?ふっか』
□□はふっかさんの方を見る。ふっかさんは無表情のまま私たちが出て行くのを見つめていた。
✕✕:『まったく・・・ひっどい男、10年であんなに変わっちゃうわけ?』
〇〇:『ごめんね、✕✕・・・せっかくふっかさんに会わせてもらったのに・・・』
✕✕は首を振る。
✕✕:『〇〇は悪くないわよ、それより、悪いのはふっかの方じゃない、一流のホストになったからか知らないけど
私たちの事まで忘れちゃうなんて、ありえないわよ、二度と会わないでいいわ、もう』
本当にこれでふっかさんとも終わっちゃうんだ、と思っていた。私は家に帰り、学生時代のアルバムを見る。
ふっかさんがバスケ部で活躍していた時の写真がある、とても懐かしい。
〇〇:『本当に・・・ふっかさん、私の事覚えてないの・・・?』
私はふっかさんの写真の上を撫でる。あんなに人が変わってしまったふっかさんを見るのは辛かった。
会わない方がよかったんじゃないか、って思っていた。
〇〇:『ふっかさん・・・・』
写真に写るふっかさんは凄く嬉しそうにガッツポーズをしていた、この時バスケの試合で優勝したんだっけな。
もう、この頃のふっかさんを見ることも出来ないんだ、この時のふっかさんにも会えないんだ・・・10年という時間が
ふっかさんの全てを変えてしまったんだな、と思ってしまった。
それから1週間が経ち、私は雑貨屋さんに立ち寄っていた。
〇〇:『綺麗な商品だなぁ・・・・』
雑貨屋さんに立ち寄った後、横断歩道の前で信号が変わるのを待っていた。もうすぐ信号が青になる、と思った時だった。
〇〇:『え・・・・』
向こう側にふっかさんが立っている。私とふっかさんは目が合う。
〇〇:『嘘・・・何で・・・どうしてここにいるの?』
青信号になり私は横断歩道を渡る、ふっかさんも横断歩道を渡ってくる。ふっかさんとすれ違う瞬間・・・。
深澤:『〇〇』
私はふっかさんに呼び止められた。
〇〇:『!?』
私は振り返りふっかさんを見る。
深澤:『・・・・〇〇だろ?』
1週間前に会った時のふっかさんと同じ人・・・?私は名前を呼ばれて動けなくなった。
〇〇:『ふっかさん・・・・』
横断歩道の信号機が赤になる、私はハッとして慌てて渡ろうとする。向こう側から車がやってくる。
〇〇:『!?』
深澤:『〇〇!』
キキー!とブレーキ音が響いたのと同時にふっかさんが私の手を引いて横断歩道を渡り切る。
間一髪で車に轢かれなくて済んだ。
〇〇:『ふ、ふっかさん!!大丈夫!?』
ふっかさんはかすり傷を負っていた。
深澤:『ごめん・・・いきなり』
私は首を振った。
〇〇:『とりあえず、手当しないと・・・』
私はふっかさんを自宅に連れていく。
〇〇:『待ってね、消毒するから』
消毒の道具と絆創膏を持ってくる。
深澤:『一人暮らしなんだな』
彼氏がいる様子が感じられないのだろう。
〇〇:『・・・覚えてたの?私の事・・・』
ふっかさんは静かに頷いた。
深澤:『ああ、1週間前にお店に来たとき、本当はびっくりしてた、だけどあの時は仕事中だったし
私情を挟まないように仕事してるから』
だから、あんな風に冷たく感じたんだ。
〇〇:『よかった・・・私の事忘れられてるかと思ってた。
私はふっかさんのかすり傷の部分に消毒を垂らす。
深澤:『っ・・・』
ふっかさんが痛そうな表情をする。
〇〇:『ごめん、痛かった?』
深澤:『いや、消毒のためだから我慢する』
消毒が終わり、絆創膏を貼る。
〇〇:『これで大丈夫だと思う、本当にごめんなさい』
ふっかさんは首を振る。
深澤:『さっきから謝ってばっかりだな、〇〇は、そんなに俺に申し訳ないのか?』
〇〇:『だって・・・10年ぶりに会えたから・・ずっと会いたかったから・・・』
ダメだ、泣いちゃいけないのに、どうしても涙が出そうになってしまう。
深澤:『俺がホストになっててショックだったか?あんなにバスケでエースとして活躍してた俺がホストなんかになってて』
私は頷けなかった。
〇〇:『正直・・・最初雑誌でふっかさんを見たとき、何でって思ってた、バスケの選手になるって思ってたから』
深澤:『俺もそうなると思ってた、10年前のあの時はバスケ選手になってやろうって思ってた』
私は救急箱を片付けようとする。
深澤:『驚いただろ、髪色だって金髪になってて』
私は改めてふっかさんの髪色を見る、本当に金髪だった。
〇〇:『・・・本当に金髪なんだね、髪の毛』
深澤:『10年ぶりに会ったのに、〇〇は全然変わってないなって思った』
私は変わるわけなかった、変われない、ふっかさんを好きな気持ちだって、本当は10年間変わったことなかったのに。
〇〇:『私は変わらないよ・・・卒業式のあの日もそうだし、ずっと変わってない』
ふっかさんがフッと微笑む。
深澤:『俺は10年の間にすっかり見た目も中身も変わった気がするのに、〇〇はずっと〇〇のままで、何かどこで
俺は間違ったんだろうって感じるんだ』
間違っている・・・?
〇〇:『ふっかさんは間違ってなんかいないよ、何があったかは分からないけど、でも、ホストのふっかさんだって
卒業式のあの日のふっかさんだって間違いなく、ふっかさんはふっかさんだよ、ずっとずっと変わってないよ』
私は涙がぽろぽろ溢れてくる、どうしたらいい・・・?10年分の想いがいっぱい出てきそうだった。
深澤:『〇〇・・・・会いに来てくれてありがとう・・・嬉しかったんだ、本当に』
私は首を振る。
〇〇:『ううん・・・・私もふっかさんに会えてよかった・・・今日ふっかさんに会えなかったらずっとふっかさんのこと
誤解したままになってたと思う』
深澤:『誤解?』
〇〇:『うん・・・ふっかさんは、もう私の事なんて何も覚えてないんだな、って』
ふっかさんが首を振る。
深澤:『覚えてないわけない、卒業式の日だって、悲しそうに去って行った〇〇の表情今でも鮮明に覚えてる』
〇〇:『え・・・?』
ふっかさんは、あの日私たちが帰る姿を見ていたことを話してくれた、私が悲しそうな表情をしているのも分かっていたらしい。
深澤:『〇〇が、よくバスケ部の試合に応援に来てくれたこと思い出したんだ、いつも俺の事見てた』
〇〇:『それは・・・』
それは、ふっかさんのことしか見てないから、ふっかさんのことしか好きじゃないから、だからふっかさんだけを応援してた。
深澤:『学生時代、俺は男女問わず仲良くされてて、人気になってた、けど、本当は寂しかったんだ』
ふっかさんが本音をしゃべりだす。
〇〇:『寂しかった・・・?どうして?あんなにみんなに囲まれてたのに?』
ふっかさんが私の手を握ってくる。
〇〇:『え・・・・』
深澤:『正直、皆からチヤホヤとかされたくなかった、俺はずっと〇〇と話したかった、話す機会が欲しかった・・・・なのに・・・
そういう機会が全然訪れないまま卒業しちゃって・・・10年もの間ずっと会えなくて・・・・』
ふっかさんがうつむく。
〇〇:『ふっかさん・・・』
深澤:『どうしたら、〇〇に会えるのか、ずっと考えてた、どうしたら〇〇の目に俺が留まるのか、ずっと考えてた、バスケの選手になって
有名になれば、また〇〇に会えるかもしれないとも思った、でも、そうなったとしても、〇〇の目には俺が留まってくれるかなんて分からなかった、
もっと分かりやすく目につく方法はないか、って考えた、そしたら・・・たまたまホストクラブの求人を見つけたんだ、それだ、って思った、
ホストになって一流のホストになって有名になれば、雑誌に載る、もしかしたら雑誌なら〇〇の目につくんじゃないか、目に留まって
俺に会いに来てくれるんじゃないか、って思ったんだ・・・・』
ふっかさんがそこまで自分のことを考えてくれていたなんて・・・。
〇〇:『ふっかさんって・・・・もしかして・・・』
もしかして、私の事・・・・。
ふっかさんが、私の方を見る。
深澤:『10年間、ずっと俺は〇〇のこと考えてた、ずっと〇〇に会えることだけを願ってた、俺はずっと〇〇のことが好きだった、周りに
どんなに他の女子が居ても、俺の目には〇〇しか女性として見えなかった、それは今だって、そうなんだ』
ふっかさんが真剣な表情をしている、吸い込まれそうな目つきだ。
〇〇:『ふっかさん・・・・』
まさか、ふっかさんも私の事を想ってくれていたなんて・・・。
深澤:『ようやく一流のホストになって雑誌に載ったときは本当に夢かと思ったんだ、これで〇〇と会えれば、ちゃんと自分の想いを
伝えようって思っていたから・・・・』
〇〇:『私・・・ホスト姿のふっかさん見たとき、彼女いるんだろうな、って思ったんです、だってホストってそういう仕事だから、女性の人を
喜ばせるような仕事だから、だから、ふっかさんは学生の時からすっごい人気だったから、彼女ぐらいいるんだろうなって思って・・・』
ふっかさんは首を振る。
深澤:『そんな簡単に〇〇以外を彼女にしたいなんて思ったことなんてない』
〇〇:『ふっかさん・・・・』
私はどういう反応をしたらいいのか分からなかった、まさか、ふっかさんと想いが同じだったなんて・・・。
深澤:『ホストになるのだって、〇〇のためだった、〇〇に会うためだった、これしか方法がないって思った、だから、本当に本当に
〇〇がお店に来てくれて、俺に会いに来てくれて嬉しかった・・・夢じゃないか、って何度も思った』
私は首を振る。
〇〇:『夢なんかじゃないです・・・私だって、ふっかさんに会いたかった、10年間ずっとずっと会いたくて・・・』
ふっかさんが立ち上がって私の事を抱きしめてくる、力強く抱きしめてくる。
深澤:『俺の方が〇〇に会いたかったんだ・・・ずっとずっと・・・会いたかったっ・・・・!』
私は涙が止まらない。
〇〇:『ふっかさん・・・私・・・私・・・ふっかさんが好き・・・っ・・・ずっとずっと好きだったっ・・・・』
私はふっかさんにありったけの想いをぶつける、10年間の想いをぶつける。
深澤:『〇〇・・・・』
ふっかさんは、力強く抱きしめてくれる。それがふっかさんの返事だと分かった。
〇〇:『ふっかさん・・・・』
深澤:『俺も・・・・俺もずっと〇〇のことが好きだった・・・・卒業式の日に伝えたかったのに、できなかった・・・
ずっと苦しくて悔しくて・・・・だけどやっと伝えられた・・・10年かかって・・・やっと』
ふっかさんも私の事を想ってくれている、10年間互いに同じ気持ちだった、その事がどれほど嬉しいことか。
〇〇:『うぅ・・・・』
嬉しすぎて涙がどうしようもなく出てしまう。ふっかさんが私から少しだけ離れる。
深澤:『馬鹿だな・・・もう泣きすぎだって・・・〇〇は』
ふっかさんが私の涙を拭う。
〇〇:『だって・・・・だって・・・やっとふっかさんに気持ち伝えられたんだもん・・・嬉しくて・・・』
深澤:『〇〇・・・・』
ふっかさんが私のオデコにチュッとキスをする。
〇〇:『ふっかさん・・・今・・・おでこに・・・・』
驚いているとふっかさんが私に顔を近づけてくる。
深澤:『もう分かったから、黙って?今は俺の事だけ見て、俺の事だけ考えてて』
ふっかさんが私の唇にキスをする。
〇〇:『ふぅっ・・・・』
ふっかさんが離れて微笑む。
深澤:『キス、初めてでしょ?分かるよ』
そんなの当たり前だ。
〇〇:『い、言わないで・・・』
ふっかさんがニヤニヤする。
深澤:『なんて、俺も実は初めてなんだけど』
〇〇:『え・・・・?』
ふっかさんがムッとなる。
深澤:『ホストの仕事してるからって、俺がどの女の人とでもこういうことすると思ってた?』
私は頷く。
〇〇:『うん・・だって、そういうのサービスとかであるのかなって・・・・』
深澤:『そんなことするわけないだろ?初めては全部〇〇がよかったんだから』
初めては、全部・・・・。
〇〇:『そ・・・そんな恥ずかしいこと言わないでよ・・・』
私は顔を逸らす。
深澤:『何恥ずかしがってんの?気持ち通じ合えたのに』
確かに気持ちは通じ合えたかもしれないけど・・・。
深澤:『もう、しょうがないな、だったらもっと恥ずかしくなることしたくなるんだけど?』
〇〇:『え!?』
ふっかさんを見ると、ふっかさんがニヤニヤしている。
深澤:『〇〇は、もう俺だけの彼女なんだから・・・・ね?』
ふっかさんが私を軽々と抱っこする。
〇〇:『やー!だ、ダメ、ふっかさん、降ろして』
ふっかさんが寝室のドアを開けて中に入る。
〇〇:『本当に・・・ダメってば!』
深澤:『何で~?俺たち同じ気持ちでしょ?ダメなんてことないじゃん』
ふっかさんがゆっくりベッドに私をおろす。
〇〇:『ふっかさん・・・待って・・・本当に・・・』
ふっかさんが私の上に乗る。ジーッと見つめられる。
深澤:『〇〇・・・・』
〇〇:『・・・・・』
心臓のドキドキが鳴りやまない。
深澤:『目を逸らさないで、俺を見ろ』
〇〇:『・・・・・』
私はふっかさんを見る。ふっかさんと見つめ合ってるだけで心臓が壊れてしまいそうだ。
深澤:『〇〇が恥ずかしいって思うこと、いっぱいしちゃうんだけど、いい?』
ストレートに聞いてくる。
〇〇:『ダメ』
深澤:『ダメなんてない、〇〇は俺の事本当に好き?』
そ・・・それは。
〇〇:『・・・好きだよ・・・好きだけど・・・』
深澤:『だけど、なんていらないから』
ふっかさんは私にキスをしてくる。ふっかさんが私の服のボタンを外していく。
〇〇:『や・・・っ』
ふっかさんが露わになった私の胸元にキスをする。
深澤:『綺麗な肌・・・』
〇〇:『み、見ないで・・・・』
深澤:『何で?こんなに綺麗な肌してるのに、滑々じゃん』
ふっかさんがブラジャーの下から手を入れる。
〇〇:『きゃっ!』
深澤:『〇〇って意外と胸あるんだね』
そんなこと言わないでほしかった。
深澤:『ねぇ、もっと見たい・・・見せて?』
ふっかさんがブラジャーを外そうとする。
〇〇:『ふっかさんのエッチ・・・・』
ふっかさんがムッとする。
深澤:『エッチ・・・・?その前に俺、一人の男だから、エッチも何も〇〇の全てが見たいって思ってるし』
全てが見たいって・・・。
ふっかさんがブラジャーを取る。
〇〇:『いや!』
恥ずかしくて手で胸を隠す。
深澤:『恥ずかしがらないでよ、綺麗な胸してるのに』
ふっかさんが私の手にチュッとキスをする。
〇〇:『ふっかさん・・・あの・・・電気消したほうが・・・』
ふっかさんが首を振る。
深澤:『え~?明るい方が〇〇の姿見えるから電気なんか消さない』
〇〇:『・・・意地悪』
深澤:『意地悪で結構』
ふっかさんは私の手をどかして優しく胸を愛撫していく。私はふっかさんに身を任せて
ふっかさんに愛されるのであった。
深澤:『〇〇、俺がホストやってること、本当はどう思ってる?』
目が覚めた私はふっかさんに聞かれる。
〇〇:『・・・ホストのふっかさんは・・・・かっこいいとは思うけど・・・』
深澤:『〇〇が嫌なら、もうホストはやめていいと思ってる』
突然の告白に驚く。
〇〇:『ふっかさん・・・本気なの?』
深澤:『ホストになったのも、〇〇に会うための目的だったんだし、目的は果たしたんだから、未練なんてないよ』
未練なんてないって・・・。
〇〇:『ホストって・・・他の女の人とこういうことしたりとかもあるの?』
ふっかさんが私の頭を撫でながら見る。
深澤:『ある人はあると思うけど・・・俺はしない、〇〇だけだから』
私の胸がキュンとする。
〇〇:『そうなんだ・・・』
深澤:『〇〇が、ホストの仕事嫌なら俺はやめる、辞める覚悟できてるから』
〇〇:『本当に・・・辞めるの・・・?』
ふっかさんがニコリとする。
深澤:『〇〇のためならね』
〇〇:『・・・・私・・・ホストのふっかさんも好きだよ、仕事してる時のふっかさん、クールだし、再会した時のふっかさんが
別人だったのはびっくりしたけど・・・でも、こうやって私だけをちゃんと愛してくれてるって分かったから』
深澤:『〇〇・・・・』
ふっかさんが私をギュッとする。
〇〇:『続けたいなら、私、ふっかさんのホストの仕事応援する、ふっかさんがホストになってくれたおかげで、私たちは
また会えたんだもの』
深澤:『続けて・・・・いいの?だって、他の女の人と接したりするんだよ・・・?〇〇が嫌な思いするかもしれないし、
〇〇が傷つくかもしれないし・・・・悲しい思いだってするかもしれない・・・俺はそんな思いさせたくない、〇〇のことは
大事にしたいんだ・・・一生かけて・・・10年会えなかった以上に大事にしたいんだ』
ふっかさんの気持ちはありがたかった。
〇〇:『それでも、ふっかさんは私の事愛してくれるんでしょ?』
ふっかさんは大きく頷く。
深澤:『当たり前だよ、そんなこと』
〇〇:『なら、私はふっかさんのこと信じるよ?彼女なんだもん、信じなきゃ』
深澤:『〇〇・・・・』
ふっかさんが私のオデコにキスをする。
深澤:『ねぇ、〇〇、もう1回・・・してもいい?』
〇〇:『え!?』
ふっかさんはニヤッと微笑んで再び私の中に潜って大事に大切に愛してくれるのであった・・・。
~完~