闇の帳がおり、夕餉のしたくの演技、の小道具としての焚き火や松明のなか、兵たちは私の号令を待っている。
あまり緊張などしないタイプの私でも流石にこれはキツイ仕事だ。
タイミング自体は叔父様が測ってくれるので、実際には号令をかけるだけなんだけど緊張するなというのが無理な話だと思う。
この本陣の布陣からして、背後に断崖絶壁を置いて、前方には敵軍が迫っている、まさに背水の陣なのだから一歩間違えば、この崖に追い落とされてしまう。
いよいよ敵兵が近づいてきた
「敵だ!敵が来たぞ!」
叔父様が合図となる叫び声をあげる。
一瞬息が詰まりそうに成るが、直ぐに整えてから
「全軍戦闘開始!」
無事号令をかけられた。
私の号令と共に本陣の兵は、夕餉の準備の演技をやめ準備してあった武器を手に騎乗し、一気に体制を整える。
敵兵も一気に突入の体制に入っている。
私は、叔父様の影に隠れているように指示されたが、戦場の興奮が私にも伝播して来て思わず身を乗り出してしまう。
「おいおい、我が勇敢なる姪っ子よあまり前にですぎるなよ、そろそろ敵兵の矢が飛んでくる頃合いだ。ただでさえお前は目立つ格好をしているのだからな」
叔父様にたしなめられる。
そう、私は緋色のドレスの上に、一部胸部と肩部、腰部に甲冑を模した飾り付けをした、武装のようなものをしている。
これが兵たちにはえらく人気で
「我が軍に戦女神が舞い降りた!」
「我らにヴァルキリーの加護有る限り敗北は無い!」
「戦乙女の元に勝利を捧げん!」
正直これほどもてはやされたのは、初めてだった。
舞踏会にデビューした時でもこんなには騒がれはしなかったものだ。
おとなしく叔父様の背後に回り何時でも動き出せるように身構え、叔父様の合図を待つ。
「散開!!!」
叔父様の号令が、本陣一帯に轟く。
号令一家、合図の火矢が5本打ち上げられ角笛が鳴り響く。
一呼吸置いて本陣部隊が左右に散開する。
敵兵はまっすぐに本陣に向かって来ていたがこちらの動きを見て一瞬迷った様な動きを見せたのち、私と叔父様がいる右翼目掛けて突撃を始める。
私達は慌てふためき逃げる演技を要求されていたのだけれど、余りに敵の圧力が激しく途中からは演技などでは無く本気で逃げる羽目になる。
私達の右翼前方の伏兵たちが一斉に敵目掛けて矢を放つ。
この弓矢による攻撃自体では、戦果はほとんどあげられなかったが、ここからがこの策の辛辣な部分だった。此の弓矢による攻撃は、敵の注意を上に向ける為にあった。
敵兵の足元には、草を縛っただけの転倒を誘うための簡素な罠と、折れたナイフや割れた皿、尖らせた木片などが敷き詰めてあった。
どれも軍靴や蹄があれば問題ないただのゴミだが、鎧を身につけ重くなった身体で転ぶとどうなるだろうか?
この大雑把だが効果的な罠が敵軍の足を遅くしている間に、本陣の散開した左右それぞれの部隊は敵前方からほぼ移動し終えていた。
敵軍が本陣右翼に追いすがろうと再度布陣し掛けたその時、すでに敵軍の後方に位置していた大型風車から敵の背後をつくように、別働隊80名が長槍を並べて突撃してくる。
また私達右翼方面からも槍兵が、一気に敵軍を押し込み始める。
敵兵は、気が付くと私達が本陣を張っていた位置に綺麗に収まっていたのだ。
すなわち背後を崖に、三方を我が軍に囲まれているのだ。
この時すでに本陣の50は左右それぞれ、別働隊の包囲網に加わり敵兵への圧力を増している。
崖側には、簡易的にでは有るが天幕がはってあるため、崖の存在に気がつけない敵兵も多かったようだった。
戦闘は小一時間もせず終了した。
風車の国の兵の死者は7名、対する麦の国の兵の死者は実に150名を超え、そのうち7割が崖したに落ちての転落死だった。
投降した50名あまりもほとんどが重傷者だった。
なんだ風車の国の兵は強いじゃない!
いや、叔父様がすごいのか。
さすが銀の盾の面目躍如といった感じなんだろう。
そう思って叔父様に近づくと
「我が慧眼を有する姪よ、これは一体なんだ?」
何を叔父様は言っているの?
さすが銀の盾ですね。
「この戦果は何なのだ?ワシはアキの策に乗っただけだ、粘る余地など無い、ワシらや、敵軍らもアキの手の平の上で踊っていただけだ」
ちょび髭を弄りながら続ける。
「神算鬼謀とはまさにこれだな、今のところ敵で無いことが救いだが・・・」
どこか憮然としながら、仕上げをやってくると言い残し、興奮冷めやらぬ兵たちの元に向かった。
「お前も兵の前に出て、皆をねぎらってやれ!」
思い出したように、叔父様は振り返らずに言い残し、今度こそ捕虜の元に向かった。
言われた通りに、兵をねぎらいに行くと地響きを伴うように、沸き起こる大歓声に圧倒される。
兵たちは口々に
「風車の国万歳!」
「真紅の王女殿下万歳!」
「わが国の戦女神に乾杯」
「紅の戦乙女が降臨された!」
「疾風の女神よ!」
「紅の疾風!王女殿下万歳!」
歓喜の声は暫く途絶えることはなかった。
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あまり緊張などしないタイプの私でも流石にこれはキツイ仕事だ。
タイミング自体は叔父様が測ってくれるので、実際には号令をかけるだけなんだけど緊張するなというのが無理な話だと思う。
この本陣の布陣からして、背後に断崖絶壁を置いて、前方には敵軍が迫っている、まさに背水の陣なのだから一歩間違えば、この崖に追い落とされてしまう。
いよいよ敵兵が近づいてきた
「敵だ!敵が来たぞ!」
叔父様が合図となる叫び声をあげる。
一瞬息が詰まりそうに成るが、直ぐに整えてから
「全軍戦闘開始!」
無事号令をかけられた。
私の号令と共に本陣の兵は、夕餉の準備の演技をやめ準備してあった武器を手に騎乗し、一気に体制を整える。
敵兵も一気に突入の体制に入っている。
私は、叔父様の影に隠れているように指示されたが、戦場の興奮が私にも伝播して来て思わず身を乗り出してしまう。
「おいおい、我が勇敢なる姪っ子よあまり前にですぎるなよ、そろそろ敵兵の矢が飛んでくる頃合いだ。ただでさえお前は目立つ格好をしているのだからな」
叔父様にたしなめられる。
そう、私は緋色のドレスの上に、一部胸部と肩部、腰部に甲冑を模した飾り付けをした、武装のようなものをしている。
これが兵たちにはえらく人気で
「我が軍に戦女神が舞い降りた!」
「我らにヴァルキリーの加護有る限り敗北は無い!」
「戦乙女の元に勝利を捧げん!」
正直これほどもてはやされたのは、初めてだった。
舞踏会にデビューした時でもこんなには騒がれはしなかったものだ。
おとなしく叔父様の背後に回り何時でも動き出せるように身構え、叔父様の合図を待つ。
「散開!!!」
叔父様の号令が、本陣一帯に轟く。
号令一家、合図の火矢が5本打ち上げられ角笛が鳴り響く。
一呼吸置いて本陣部隊が左右に散開する。
敵兵はまっすぐに本陣に向かって来ていたがこちらの動きを見て一瞬迷った様な動きを見せたのち、私と叔父様がいる右翼目掛けて突撃を始める。
私達は慌てふためき逃げる演技を要求されていたのだけれど、余りに敵の圧力が激しく途中からは演技などでは無く本気で逃げる羽目になる。
私達の右翼前方の伏兵たちが一斉に敵目掛けて矢を放つ。
この弓矢による攻撃自体では、戦果はほとんどあげられなかったが、ここからがこの策の辛辣な部分だった。此の弓矢による攻撃は、敵の注意を上に向ける為にあった。
敵兵の足元には、草を縛っただけの転倒を誘うための簡素な罠と、折れたナイフや割れた皿、尖らせた木片などが敷き詰めてあった。
どれも軍靴や蹄があれば問題ないただのゴミだが、鎧を身につけ重くなった身体で転ぶとどうなるだろうか?
この大雑把だが効果的な罠が敵軍の足を遅くしている間に、本陣の散開した左右それぞれの部隊は敵前方からほぼ移動し終えていた。
敵軍が本陣右翼に追いすがろうと再度布陣し掛けたその時、すでに敵軍の後方に位置していた大型風車から敵の背後をつくように、別働隊80名が長槍を並べて突撃してくる。
また私達右翼方面からも槍兵が、一気に敵軍を押し込み始める。
敵兵は、気が付くと私達が本陣を張っていた位置に綺麗に収まっていたのだ。
すなわち背後を崖に、三方を我が軍に囲まれているのだ。
この時すでに本陣の50は左右それぞれ、別働隊の包囲網に加わり敵兵への圧力を増している。
崖側には、簡易的にでは有るが天幕がはってあるため、崖の存在に気がつけない敵兵も多かったようだった。
戦闘は小一時間もせず終了した。
風車の国の兵の死者は7名、対する麦の国の兵の死者は実に150名を超え、そのうち7割が崖したに落ちての転落死だった。
投降した50名あまりもほとんどが重傷者だった。
なんだ風車の国の兵は強いじゃない!
いや、叔父様がすごいのか。
さすが銀の盾の面目躍如といった感じなんだろう。
そう思って叔父様に近づくと
「我が慧眼を有する姪よ、これは一体なんだ?」
何を叔父様は言っているの?
さすが銀の盾ですね。
「この戦果は何なのだ?ワシはアキの策に乗っただけだ、粘る余地など無い、ワシらや、敵軍らもアキの手の平の上で踊っていただけだ」
ちょび髭を弄りながら続ける。
「神算鬼謀とはまさにこれだな、今のところ敵で無いことが救いだが・・・」
どこか憮然としながら、仕上げをやってくると言い残し、興奮冷めやらぬ兵たちの元に向かった。
「お前も兵の前に出て、皆をねぎらってやれ!」
思い出したように、叔父様は振り返らずに言い残し、今度こそ捕虜の元に向かった。
言われた通りに、兵をねぎらいに行くと地響きを伴うように、沸き起こる大歓声に圧倒される。
兵たちは口々に
「風車の国万歳!」
「真紅の王女殿下万歳!」
「わが国の戦女神に乾杯」
「紅の戦乙女が降臨された!」
「疾風の女神よ!」
「紅の疾風!王女殿下万歳!」
歓喜の声は暫く途絶えることはなかった。
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