私はいま、宵闇の松明の明かりでも光り輝く様な白馬に跨がり、叔父様と轡(くつわ)を並べ王救出部隊の指揮を執っている。

 と言っても、あくまで実際隊の指揮を私が行うわけではなく、叔父様が直接行う。

 私は指揮官とはいえ、お飾りだった。

「ニナちゃんが部隊を組織して、王を救出を自ら行う。この過程を内外に示しておいた方が、今後の継承権の争いで優位にたてるからね」 


 とアキは、大きなおなかを引っ込めながら申し訳なさそうに言っていたが、言われれば、そういう物かと理解出来るけれど、何か釈然としない。


 軍馬との大きさの比率がおかしく見えるほどの巨体を面白そうにかがめて、いつものようにちょび髭をいじりながら叔父様が話しかけてくる。

「なんだ、考え事か我が聡明なる姪っ子よ。それともアキが近くにいなくて寂しいのか?」


 ななな・・・なんてことを叔父様はおっしゃるのか、ただちょっと釈然としないだけよ、アキの態度や今回の作戦が。


「アキか・・・、あいつは本当に小さな頃しか知らないが、大分苦労したんだろうな。剣の腕もさることながら知略・政略にはかなり富んでいるようだ、王位継承権を放棄して気ままに戦いに没頭しているワシなんかよりよほどそういったことには頼りになるだろうよ」

 
 フリーゾは今年16になったところなので、通路の在り処を知らない。
 これを利用して決死隊は、王と王冠を奪取すべく潜入を行う。
 これに対して私たち本隊は、決死隊のための壮大な陽動。


 それだけではなかった、軍議冒頭に兵を二人一組で組ませ街道に配置し、敵兵の確保を最優先で行った。
 これにより8名からの敵兵の確保に成功した。

 ここで数名の下手の芝居から白の国の大軍が姫君の苦境を予見し援軍に向かってすぐ近くまで来ているだのといったものから、姫の旗下の兵は50に満たないといったもの、姫自身が陣頭指揮を執っているといったものまで、捕らえていた敵兵にそれとなく聞かせた上で、軽微にワザと隙を作り脱走させている。

 ある程度のところで発見し、真に迫る勢いでの追跡までする念のいりようだった。


「これには二つの意味があるんだ。一つは本体との連絡を取らせないこと。これでこちらの戦力の実数を把握させず、また本体との連携をとらせないことにもつながるでしょ?もう一つはこちらのほうがより重要なのだけど、敵兵が城に立てこもらず野戦に討って出るように仕向けること」


 そんなことを、決死隊出発前に森の中の狩人が差し入れてくれたチーズパンをほおばりながらアキが説明してくれた。

 言うことは一級の将軍のようだが、パン屑をポロポロこぼしながらニコニコとおいしそうにチーズパンをほおばっている姿で説明されても威厳や尊厳のかけらも見受けられない。


「おおよその敵の数は、僕の試算と近衛兵のみんなの決死の偵察で大体200前後と、互角の兵数とわかっているわけだから、あとは戦術的なところになるんだよね」


 ワインが苦手だと世にも珍しいことを言うアキのために、わざわざヤギの乳を搾ってきてくれた狩人に礼を言いながら続ける。


「とはいえ、野戦で必ずしもかつ必要は無いんだ。決死隊の行動が少しでも行いやすく、王様と王冠を取り戻すことが第一目標になるのだから、外での野戦に関しては負けない戦いをして少しでも時間を稼いで欲しいというところになってくるんだよね」


 ミルクを口に含んだアキは世にもまずそうな顔をする。今度はぬるいミルクは甘すぎて苦手なんだよねと贅沢極まりないことを言い出す、水でも飲んでいなさいというと


「おなかを壊しそうだからお湯が良いんだけど・・・今はそれどころじゃないし差し入れてくれた人に申し訳ないからおいしく感じるように努力しながら飲んでみる・・・」


 ポジティブなのかネガティブなのかよくわからないことだと思う。


「でも敵兵の数を少しでも討ち減らし、かつ自軍の損害が少しでも少なくなるように算段はつけてあるから、あとでリッツ叔父さんに聞いてみてよ」


 アキは身支度のため私のもとを離れていく。

 私がずっと考えていた小さな頃のアキとはずいぶんかけ離れているように見えるけれど、やっぱりお節介でお人よしなアキなんだと改めて思った。

 でも小さい頃のほうが絶対かっこよかった・・・。

 これは・・・改善が必要ね!!

 場違いな・・・だけどかなり真剣な決意をした。