創意工夫は大事なこと
御 教 歌
何事も 物の上手と ならむには
すきと器用と 功(こう)つむとなり
何事においても道を窮めていくには、一途になること、才知にすぐれていること、そして我が身に徳を積むことである。
このことを仰せの御教歌です。
ことわざに
「好きこそ物の上手なれ」
「好きなことは、天分があるからであろうが、自ら進んで工夫したり、絶えず努力するので、自然と上手になる。」
このようにあります。
また、「下手の横好き」という言葉を聞きますが、これは好きであっても天分がないから、そこで留まってしまうというというのです。
私の知人で芸妓さんがいましたが、15歳で置屋にお世話になり、相部屋(5~6人)で修行を始めたそうです。
最初は「仕込み」期間があり、礼儀作法から唄・踊り・三味線など稽古事をこなしていく傍ら、姐さん芸妓に付いて見よう見まねで覚えていくのだそうです。
そして置屋の女将の許しが出て、晴れて舞妓となれるのだそうです。
一見、派手な世界に見えますが、実際はとても地味で、生活そのものも質素に暮らしているようです。
自分で選んだ道、しかも好きで選んだ道ですから、弱音も吐けず、愚痴もいえません。
少しでもやる気がないと、「里に帰るかい?」と置屋の女将から言われるので、工夫・努力をすることを怠らなかったそうです。
長年修行して身に付けた一つとして、背筋をビシッと立てたまま、見事な挨拶をします。
また、長時間着座しても姿勢を崩すこともありません。
あの姿勢は、長年修行してきた人でないと出来ないものだと思いました。
常日頃から創意工夫し努力してきた人は、やはりどこからとなく漂ってくるものが違います。
御指南に
「善と悪とは人間其の分々の力相応にしれり。しらぬはすべなし。さて其のなす物事一つ一つにこれはよしと思えはば、憚(はばか)る事なく尽力(じんりょく)して其の事にかかるべし。今こそ其の果を見ざれども、其の果必然歴々(れきれき)たり。」
「事の善悪はその人に応じて判断出来る筈である。しからば、これは善い事だと判断したら遠慮することなく全力で取り掛かることが大事である。たとえ、今すぐ結果が現れないとしても、いつかは報われるのである。」
いずれの道でも窮めていくには、そのような心がけが大事であることを仰せです。
道を窮めていくにもやはり因があることを捉えて、創意工夫・努力をしていきたいものです。