世の中の情けは人の為ならず
~御 教 歌~
世の中を 助くる心 なき人は
ものしりにても 無益也けり
世の中に貢献していく志のない人は、どんなに物を学び知っていてもそれは無益なこと。
このようにお示しの御教歌です。
今の私達に出来る事、大事なことは、一人一人の意識から変えていくことのように思います。
それが
「今のこの状況が良くなっていくのに自分は何が出来るのだろうか?」
を真剣に考えていくことが、事の始まりのように思います。
能楽作品の「葵上(あおいのうえ)」に
「世の中の情けは人の為ならず、我人の為辛ければ、必ず身にも報ふなり」
「世のため、人のため情けをかけておけば、また人の為苦労すれば、必ず自分に報われてくるものである。」
このように、世のため人のために苦労していくことは、必ず自分自身に還(かえ)ってくるというのです。
また、トクヴィルというフランスの思想家は、
「民主主義社会では、人々の関心はどうしても現在と自分に集中する。」
という言葉を残していますが、「現在」と「自分」に集中してしまいがちな私たちのあり方を鋭く指摘しています。
現在の先に将来・未来があることを見据えた考え、自分中心から他者へ目を向ける生き方に変えていくためにも、宗教は必要不可欠だとも言っています。
本日の御教歌とトクヴィルの言葉は、現在の私たちに問いかけられているように思います。
世の中という全体を良くしていくところに、自分という個人が良くなっていく因があり、全体から物事を見つめていけるお互いになっていきたいものです。