貧(ひん)すれば貪(どん)する
御 教 歌
塩なめて くらした時を 忘るるな
朝からさかなで めしをくふとも
今が満たされた生活であれば、辛く・苦しい日々を過ごしてきた時を忘れないようにしたいものであることを仰せの御教歌です。
当時(明治時代)は、朝から魚をおかずにごはんを食べる家庭は裕福で、貧困苦を強いられてた人達は、塩をなめて生活していたのでしょう。
そういえば
「塩が浸(し)む」(世の中の苦労が身にしむこと)
と言うのは、貧困苦から用いられるようになったのかもしれません。
人間、生きていく上において苦労をしていくことは大切なことです。
生活面においても、貧しい生活を経験することは決して無駄になることもなく、むしろそこから必死に這い上がろうとするところに、貧困な生活を逃れていく因もあるのでしょうし、心の強さも養われていくのだとも思います。
ただ、貧しい生活をしている時ほど気を付けておきたいことは、
「貧(ひん)すれば貪(どん)する。貪すれば貧する。」
「貧しくなれば、むさぼりという何が何でも欲しがる心が強くなり、逆にむさぼりの心が強くなればなるほど、いよいよ身も心も貧しくなる。」
この教えを心得ておきたいものです。
そして、一番大事なことは良くなってからです。
誰しも生活が潤い豊かになっていくと、苦労した頃を忘れ、今の生活に感謝する心が薄くなり、当たり前のように思い、愚痴や不満が出てくるようになったりするものです。
今が満たされた生活であれば、苦労した日々のことを忘れないように、また今が苦しい生活であるなら、きっと夜明けが来ることを信じて、今を乗り切るよう踏ん張っていきたいものです。