聖夜 | ひより軒・恋愛茶漬け
僕を傷つけないように
あなたが選んだ場所は
恋人たちの集まるツリーの下の
目立つ一角。
赤いコートで
約束の時間通りに
顎を上げ
あなたは僕の姿をさがす。
ぴったりとした革の手袋の中
マニュキュアのない細い指先
本当はそこにあるはずの結婚指輪は
あの日、僕がそっと盗んで
人質のようにしまっている。
きよしこのよる
ほしはひかり
そっと近づき目が合った時の
あなたの笑顔を信じたい。
拒まれるのが怖くて
こどもっぽく
北風にさらして冷えた
僕の両手を包み
あやすように
何度も息を吹きかける
あなたの温かさを信じよう。
今夜、だから。
メリークリスマス!